大通りにある行きつけのイタリア料理店に入って、じゅんいちダビッドソンはパスタランチ、本田圭佑は日替わりランチを注文した。今日の日替わりはミラノ風カツレツだった。
「すごい面白かった。今回もありがとう」
と言い添えてDVDを返すと、本田は毎度のことながら「よかったあ」と嬉しそうな顔になる。
「それにしても、一回百円でレンタルしたって、手間ばかりかかって実入りはあんまりないんじゃないの」
出会ってすぐの頃、突然彼から「潤一さん、アダルトビデオなんて好きですか?もし好きだったら僕のDVDコレクションの中からどれでも一枚百円、返却無期限でレンタルしますけど」と持ちかけられたときも、似たような質問をした覚えがある。
そもそも本田圭佑がアダルトビデオ好きで、アダルトビデオのDVDのコレクターだったなんて、その時初めて知ったのだ。
「前にも言いましたけど、別に儲けが目的でやってるわけじゃないんで……。ただ、お金を貰って貸し出しすれば、ビジネスの勉強にもなるじゃないですか」
本田によれば、毎月発売される新作アダルトビデオの大半を購入しているらしい。そうなると馬鹿にならない金額に違いない。彼にとっては大した問題ではないだろうが、ビジネスとして考えるならば数百人の顧客は必要だろう。潤一のみるところ、このあたりでは自分以外に本田のDVDを借りている人間はいないようだし、そんなにもの顧客をどうやって彼が確保しているのかは疑問である。
「だけどこのへんじゃ僕くらいでしょ、圭佑くんのDVD借りてるの。残りの客はどうやって見つけてるわけ」
試しに訊いてみた。
「あとは、高校とかJリーグ時代の友だちとか、行きつけの店で知り合った飲み友だちとかですかね。まあ、数百人くらいならなんとかなるもんですよ」
本田は石川県星稜高校の出身で、Jリーグ時代には名古屋グランパスエイトに所属していた。
「一体どのくらいの枚数集めてるの?」
潤一はアダルトビデオには詳しくないから、いつも本田が持って来てくれたものの中から気に入った作品を選んでいたが、他の客たちはきっとリクエストもしてくるはずだ。
「そうですね。数えたことはありませんがDVDだけでとっくに一万本はある思います」
本田はちょっと自慢げな表情になる。
一万タイトルということは、少なくとも数千万円の出費か、と潤一は妙に感心してしまう。だがそれだけのストックがあれば、もぐりのレンタル屋もなるほどやれないことはないだろう。
出会ってすぐの頃といえば、潤一がこのままお笑い芸人を続けていくか悩んでいた時期だった。本田と出会った勉強会に参加したのも将来を考えてのことだった。そのころはネタがうけずに落ち込むことも多かったから、本田の貸してくれるDVDが救いになっていた部分は大きかった。
彼が最初に貸してくれたアダルトビデオはなんだったろうか?少し考えて潤一は思い出した。たしか海外の無修正のものだった。
「また、来週にでも一枚お勧めのを持ってきますよ。楽しみにしててください」
本田は商売っ気たっぷりのスマイルでそう言った。
