『チルドレン』 伊坂幸太郎・著

ずいぶん前に読んだんですよ、で、また図書館で借りて…読んで、、
(あ、前に読んだことある)って内容思い出しました。

~~あらすじ~~
ある日、鴨居は陣内と窓口業務が終わる寸前、シャッターが下りている最中、滑り込みセーフをし、銀行内に入ると…銀行強盗がやってきて、事件に巻き込まれてしまう。
行員と何人かの客は全員人質となり…手足を縛られ、奇妙なお面をかけられる。
ひるむ鴨居とは反対に、陣内は銀行強盗に一括し、ハチャメチャな行動に出る。

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このお話は、5つの短編からなる物語で、基本的には、陣内という青年の独自の主観によるはちゃめちゃな言動を、陣内を取り巻く周辺の人たちの目線で書かれています。

…この陣内がね、、味があってイイ奴なんだけどちょっとバカで、一本義で、でも、ふいに確信ついたことを言ってのけたりして、なんだか憎めないんです。

でも、現実…陣内みたいな友人がいたら、ハタ迷惑という言葉がとっても似合うタイプなので、「陣内君と仲いいね」と言われたら、全力で否定したくなりそうです。

チルドレンは、伊坂作品の中でも、ファンが多い作品です。

読むと前向きになったり勇気がもらえたり、読後感も爽やかだし、
なにより、殺し屋とか物騒な人物が一切出てこないので、とても日常的なストーリーになってますね。


伊坂さんって、陣内みたいなはちゃめちゃで、絶対に現実にいたらハタ迷惑な人物像を描くの、すごく上手いです。
こんな人いるはずないよな~と思わせながら、いたらいいよな、いてほしいよな。
で、自分も少しだけそういう人間でありたいな、って思わせる人物像を描くのがうまいのです。

…それでいて、真逆にものすごく繊細で、相手との距離感をうまく合わせようと、必死に色んなことをごちゃごちゃ考えてる人物を描くのも、ものすごく上手いです。

対極にいる人間の心理がどうしてこんなにも、手に取るように分かるんだろう…伊坂さんって。


本書の中で、陣内という人物をよく知るエピソードで、私が好きなシーンは、
全盲の青年、永瀬が、通りすがりのおばあさんにお金をもらうんです。

永瀬は慣れていた。子供の頃から目の見えない彼は、それこそ何度となくこういうことに遭遇してきたのだろう。彼自身が苦笑しながら言うように、「こういうことのベテラン」だった。
「彼らは善意の人だからね、文句を言ったら悪いよ」

それに対して陣内は、
「おい、永瀬、その手に持っている五千円、どうしたんだよ」と口を尖らせた。
「どこかのおばさんがくれたんだよ」
「ふざけんなよ」陣内君が声を上げた。

「何で、おまえだけなんだよ!」
「え」はじめは冗談を言っているのかと思った。
「何でって」永瀬も口ごもった。
「何で、おまえがもらえて、俺がもらえないんだよ」
「たぶん、僕が盲導犬を連れているから、じゃないかな。目も見えないし」
「は?」陣内君が唖然とした顔になった。心底、訝しそうだった。「そんなの、関係ねえだろ」
「関係ないっつうの。ずるいじゃねえか」と喚いた。

「おい、何笑ってるんだよ。自分だけ金を手に入れたからって、いい気になるなよ」
「なってないって」
「俺は納得しないぞ。何で、おまえだけ五千円なんだよ。おかしいだろ?」
「おかしいかもしれない」
「どうして、おまえだけ特別扱いなんだよ」陣内君はそう言ってから、あたりをきょろきょろ見回し、「そのおばさんどこに行ったんだ?」と必死に探しはじめた。
わたしは、彼の真剣な姿がどうにも可笑しくて、唇を噛んで笑いを堪えていた。

このシーン好きです。

陣内のいう「関係ない」って言葉が強烈すぎて、そうだよなぁ、関係ないよなぁってすべてふっきれるくらい、心がまっすぐになって、ぎゅっとなにかに突き動かされそうになり、なんだか涙が溢れそうになる。

いいなぁ、陣内。


「うまく言えないけどさ、陣内君って凄いよね」
「陣内は世の中の面倒なことを跳び越しちゃってるのかもしれない」
「誰も許可してないのに、勝手に、跳び越しちゃったって感じだよね」

チルドレンは、そんなお話です。