① 原文

故美其食、任其服、楽其俗、高下不相慕、其民故曰朴。

② 書き下し文

故にその食を美とし、その服に任せ、その俗を楽しみ、高下相慕わず、その民故に朴と曰う。

③ 現代語訳

そのため、自分の食事を楽しみ、自分に合った衣服を身につけ、自分たちの生活習慣を楽しみ、身分や立場の高低を互いに羨むことがない。

そのような人々は、素朴で自然な人々であるといえる。

④ 語句解説

美其食

豪華な食事をするという意味ではなく、与えられた食事を美味しく味わうこと。

任其服

自分に合った衣服を身につけること。

高下不相慕

他人の地位や生活をむやみに羨まないこと。



飾らず、素朴で自然な状態。

⑤ 東洋医学的考察

ここまで読んでくると、「上古の人」の健康の秘密は、特別な薬や秘伝の技術ではないことが分かります。

中心にあるのは、

過剰を避けること。

食事も、睡眠も、労働も、欲望も、競争心も。

「もっと」「もっと」という生活から距離を置き、自分の身体に必要なものを知る。

これは「養生」の非常に重要な考え方です。

⑥ 鍼灸臨床への応用

患者さんの生活指導では、

「健康のために新しいことを10個始めましょう」

ではなく、

まず、やり過ぎていることを一つ減らす。

という方法が有効な場合があります。

例えば、

就寝前のスマートフォンを30分減らす
仕事を少し早く切り上げる
無理な運動をやめる
食べ過ぎを減らす

などです。

特に「疲れやすい」「体力がない」タイプでは、補う前に消耗を減らすという上古天真論の考え方を応用できます。

⑦ 今日のポイント

養生の第一歩は、「もっと健康になろう」と頑張ることではなく、生命を消耗させる過剰を減らすこと。

⑧ 復習問題
第4日〜第10日を通して繰り返されている養生の共通テーマは何でしょうか?
自分の臨床で「何かを加える」より「何かを減らす」ことが有効そうなケースを一つ考えてみましょう。