美醜の大地〜復讐のために顔を捨てた女〜

樺太の貧しい家に生まれたハナ。

ハナはその外見から、ひどいいじめに合っていた。

それでも、貧しい中から金を捻出し学校に通わせてくれる親のためにもハナは耐えていた。

しかしある日、窃盗の濡れ衣を着せられ、誤解されたままとうとう学校を退学となってしまう。

そんな時、終戦したのにも関わらずソ連が空襲をしかけてくる。

人々は「引き揚げ船」と呼ばれる船に乗り北海道へと逃げる。

ハナの家族もやっとの思いで引き揚げ船に乗る事が出来た。

しかしそこにいたのはハナをいじめた同級生たちだった。

またもや彼女達はハナを追い詰め、引き揚げ船から降ろしてしまうのだった。

かろうじて次の引き揚げ船に乗ることが出来たハナたち家族だったが、不運にもその船はソ連の襲撃を受けてしまう。

この不幸な事故により、ハナは優しい母と愛する弟を失ってしまう。

ハナの深い悲しみは強い怒りへと変わる。

ハナは人生をかけた復讐を心に誓うのだった。

感想

いじめについて考えさせられるお話です。

やられた方は本当に人生・人格を変えられてしまいます。

いじめは当然絶対にだめです。

分かりきっているのに無くならないのはなぜか？

この作品は、いじめが起きる根本の原因も教えてくれます。

ハナは整形手術により、美女に生まれ変わるわけですが、それは外見を良くするため、人生をやり直すためではありません。

あくまでもハナとは別人になり、同級生たちへの復讐をスムーズに行うためです。

美貌を手に入れ、これからいくらでも幸福な人生を手に入れられるはずのハナ。

しかし家族を死に追いやられ、心が壊れてしまったハナにはもはやその様な考えは浮かばないのでしょう。

優しい両親に愛情をそそがれて育ち、もともと明るく、心優しく、努力家でかしこく、素直で可愛らしい少女だったハナ。

心無いいじめは、何もかもを壊し、奪いました。

ハナをいじめる冷酷なリーダー、絢子。

彼女は大企業のお嬢様です。

いじめが起きる根本の原因は何か？

それはいじめる側の子供の家庭環境に問題があるのかも知れません。

そう思わずにはいられない作品です。

特異な環境で育てられた為に歪んでいる絢子。

虐待は非行を生み、歪んだ環境は歪んだ人間を作り上げるのかも知れません。

さらに言えば、その親のそのまた親の家庭も歪んでいたのかも知れません。負の連鎖です。

「なぜハナはそんなにきれいなの？」

絢子のこの謎の問いかけは、貧乏ながらも愛で満たされた家庭でまっすぐに育ったハナ＝きれい

裕福だが歪んだ人間の作る愛のない家庭で育った歪んだ自分＝醜い

という、彼女なりの心の叫びではないでしょうか。

愛がないと心が育たない、愛のない環境は人間の皮をかぶったモンスターを作り上げてしまうのかも知れません。

深見もまたその様な子供の1人と言えます。

復讐心が更なる復讐心を生み、ハナの復讐は一体どのような結末を迎えるのでしょう。

美醜の大地〜復讐のために顔を捨てた女〜

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