みなさま、クリスマスはどのように過ごされましたか。
クリスマスと聞いて、私が一番に思い出すポーランドの本といえば、ムシェロヴィチ(Musierowicz)のイェジッツェ物語シリーズ7作目、「ノエルカ(Noelka)」です。原書は1992年に発行され、邦訳も2002年に未知谷より発行されています。
(原初の出版社Akapit pressより画像をお借りしました)
Noelka (Małgorzata Musierowicz)
イェジッツェ物語シリーズは、大抵ある数日間の出来事で構成されていますが、本書は、1991年のクリスマスイブ1日だけの物語です。
主人公はエルカ(Elka)。この名前は、エルジュビェータ(Elżbieta)の愛称です。その名前に、フランス語でクリスマスを意味する「ノエル」を掛け合わせたものが、本書の題名になっています。
17歳のエルカは、生まれてすぐに母親を亡くし、父親のグジェゴシュ、祖父のメトディ、祖父の兄のツィリルと一緒に暮らしています。ポーランド人にとっては家族で過ごす大切な日であるクリスマスイブの日に、ちょっとしたことからエルカは家族とけんかして、家を飛び出してしまいます。
そんな中、エルカはトメクという青年と知り合います。サンタクロースに扮して、依頼を受けた家の子どもたちにプレゼントを配ることになっていたトメクに誘われて、エルカも天使に扮してその手伝いをすることになります。エルカは様々な家庭のクリスマスの様子を目にして……。
ボレイコ家ももちろん登場します。エルカにトメクを紹介したのは、ボレイコ家の四女(末っ子)パトリツィヤですし、エルカのお父さん・グジェゴシュと長女ガブリシャとの関係も気になります(邦訳のある9作目『金曜日うまれの子』(1993年・邦訳は1996年)で明らかにされています)。
本書で魅力的なのは、共著書『ポーランド・ポズナンの少女たち』にも書きましたが、おいしそうなクリスマス料理の数々です。
メインの鯉料理はもちろん、キャベツとキノコが入ったポーランド風餃子ピェロギ(中身は他にもひき肉、カッテージチーズ、ジャガイモ、果物など様々な種類があります)、ビゴス(キャベツとキノコの煮込み。イブでなければ肉料理が食べられるので、牛肉、豚肉、ソーセージも入れられます)、ニシンのサワークリーム和え、赤バルシチというスープ、ピェルニク(ジンジャークッキー・ケーキ)、いろいろなケーキなど、日本ではあまり見られない料理に、興味をそそられます。
↓ こちらが、我が家のメイン、鯉のムニエルです。マカロニと酸っぱいキャベツの煮込みを添えて。
↓ 赤いバルシチ。ビーツという野菜で作ります。中に入っているのは、ウシュコ(uszko)という、キャベツとキノコを餃子の皮のようなもので包んだラビオリです。
↓ こちらはケーキ。左上はけしの実ケーキ(makowiec)、右上はチーズケーキ(sernik)、手前はリンゴケーキ(jabłecznik)です。
↓ ピエルニク(piernik)というお菓子です。
他にも、ドミニコ教会のショプカ(キリスト誕生の様子を表現した模型)や、クリスマス聖歌が流れる様子も描写されており、ポーランドのクリスマスの雰囲気がたっぷり感じられます。
今年のクリスマスはもう終わってしまいましたが、この本を手に取って、ポーランドのクリスマスの雰囲気を味わってみてはいかがでしょうか。