青い竜の谷 | デュシャンの子供たち

青い竜の谷

ウチュウジンというのは別に超能力が使えるとか宇宙船に乗って地球にやってきたとかという意味ではなく(まぁそういう人もいるかもしれませんが)どちらかというと異星人というか、チキュウには馴染めなかったり浮いたりしつつも地球を愛してる心優しき人々のことだったりします。

というわけでまだまだ一般にはわかりにくいウチュウジン。なので、ここのコーナーではウチュウジンだったりウチュウジン的なオシゴトをしてるな、と思う人を紹介します。決して話の通じないイタイ上司の告発とかのコーナーではないですよ~(笑)

では記念すべき1回目。続くかどうかわかんないけど(笑)
佐々木淳子という漫画家をご存知でしょうか。絵柄はちょっと懐かしいタイプのいかにも少女漫画といった感じであまりエミリオの好みではなかったのですが、中身が衝撃的なのです。かなり本格的SFです。今時のRPGみたいなファンタジーというよりも1級のSFの匂いがするタイプの作品が多いのです。つじつまはともかく昔の漫画家特有の、緻密さよりも表現したい!というエネルギーがほとばしるタイプの漫画家。略歴に美内すずえのアシスタントをしていたとあったので納得。

数年前のある日古本屋さんでゲットした「青い竜の谷」というマンガがあります。立ち読みをしてハマってしまい全巻ゲットしました。今より20年ぐらい昔に描かれた近未来お話なのですが、恐竜のDNAを解読し現代に復活させる、という設定はジュラシックパークと殆ど同じなのですがそこから壮大な展開を見せます。タイムパラドックスもので、恐竜がこの時代に生まれるのではなく、現代の同じ質量の物質と白亜紀の物質が等価交換されていただけだった、という所からドラマは始まります。スケールのでかさはジュラシックパークなど足元にも及びませんし、初出の時期から察するに、ジュラシックパークより早いと思われます。

途中過去に飛ばされた主人公の彦がようやく現代に戻ってみたら8年が過ぎていて発表当時の近未来なので8年後とは1999年。今より数年前ですね。そこで描かれる未来の予見の正確さに目を見張ります。近未来とはいえ、とてもイタイところを多方面にわたってついているのです。そして楽しそうな方はあまり当たらず、イヤな所ばかり当たっているのです。以下は1999年のテレビニュースのシーン。

「今年になって3基目の発電所事故に反対グループは・・・」
「・・・の会場ではトキ・アフリカゾウ・ジュゴン・ザトウクジラ等絶滅した動物の剥製およそ350点が・・・」
「・・・東京で今年の夏は44度が予想されております。皆様くれぐれも日光を直接浴びぬようUVケアを・・・」
「なお政府では第16次中東戦争においての自衛隊の活躍をたたえ・・・」

1992年に予想された未来。その当時これを読んだ少女達はどう思ったでしょう?「まさか・・・(笑)」とか「こんななったらイヤだな」と思ったのではないでしょうか。予想より少しづつ遅いものの、殆どが現実になっていますよね。そして現代の我々は殆ど何も感じていない。あー現実だから仕方ないやってね。でもまだ間に合うものもあるんですよね。ジュゴンの絶滅はまだ間に合います。この予言よりは環境保護団体が頑張っているので絶滅していません。沖縄の基地問題もそうですね、沖縄基地反対を頑張っている人のおかげで沖縄のジュゴンはかろうじて絶滅を免れています。このまま1992年の予言を外し続けられるかどうかはやはり現代の人間にかかってるんですよね。

地球の壊滅的な大気汚染を白亜紀の空気と入れ替えるプロジェクトを進める企業のトップ、金雀枝が某国のMr.ホワイトと会談をします。自国を「正義はわが国にあり!」というのを、金雀枝が憎憎しげに
「何が正義はわが国にあり」だ!偽善者め!
あんたの国は怪獣退治のため街をぶっ壊すスーパーヒーローだよ!」

と吐き捨てたりします。
目的のためには手段を選ばない男、金雀枝なりの理想。滅び行く地球を救うために現代のゴミを過去に捨てようとしているのです。発想としてはやはり資本主義の申し子なのですね。金雀枝率いるNVAは白亜紀に基地を建設します。その時代に恐竜の赤ん坊と等価交換され恐竜に育てられて生き延びた人類が何人かいて、彼らに現代人の価値を押し付けていく描写はまさしく今の先進国のやり方そのもの。

現代の普通の少女が自然界の「現実」食べるためには殺さなくてはいけない、という当たり前の事実を前にショックを受け感傷的になるシーンにもエミリオは胸打たれます。

あまり語りすぎると読む楽しみがなくなるのでこのぐらいにしておきますが、たった数冊の単行本の中にありとあらゆるニンゲンへの警告と同時に、現代人への愛情が詰め込まれているといっても過言ではありません。そこで訴えていることはあまりにホントすぎて時に残酷な現実を見せすぎていて、今時のソフトなぬるい少女漫画雑誌では発表が難しいのかもしれません。佐々木淳子は本当の事をストレートに言いすぎたのでしょうかね。少女漫画にしてはあまりにテーマがハードなのでしょうか。

この人の他の作品も偶然にいくつか読む機会がありましたが、短編であっても長編が描けるようなスケールの話が多く、テーマの深さ、展開の凄さにショックを受けます。絵柄がかわいいだけにはじめは違和感があるのだけど逆にかわいいからこそショックも大きくなるような気がします。かわいいものにも弱いものにも美しくないものにも、この作家のまなざしは平等でストレートなのです。

少女誌より、むしろちょっと青年向きの雑誌のほうが合うんではないかと思うのですが、絵柄がなんともかわいいのが仇になっているのでしょうか、今も現役のようですが最近はあまり大きな作品を残念ながら見かけません。これが昔あった「プチフラワー」や現在も頑張っている「ネムキ」のような少女誌ならば彼女はもっと良い作品を出し続けられるかもしれません。

ウチュウジン系の作家は一部の読者には熱狂的に受けるのですが、発表する側、雑誌社に敬遠されるという目にあいやすいので(笑)佐々木淳子もウチュウジン的な漫画家なのだと思います。訴えてくるものが大きすぎて凡庸な編集者には理解できないか、或いは危険すぎると感じるのかもしれません。

エミリオは思います、パっと楽しいだけのマンガもいいけれど、良いマンガを描く作家には、なんとか頑張って欲しい。ミステリーやホラーもいいですが、どっちも好きですが、SFも頑張って欲しいなぁ。



著者: 佐々木 淳子
タイトル: 青い竜の谷 (1)

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