こんにちは。
トレイルランナーズ大阪の安藤大です。
 
 

レース展開編。今回僕が参加したレースは、ボルネオ・ウルトラ・トレイルマラソン。スポンサーは、ALTRA。

 

毎年10月に同じコタキナバルで行われる「ありえないほど美しいもの/The Most Beautiful Thing(TMBT)」と同じ大会主催者。台湾にタイ、フィリピンなど急激に増加するアジアのトレイレースの中でも最もレース運営評判が良く人気のある主催者です。競技規則や必要装備品規定はUTMB基準に準じ、厳しく運営・管理されており、安心して参加ができます。

 

ALTRA Borneo Ultra Trail Marathon(BUTM) : マレーシアのコタキナバル北部で開催。日本からの直行便からはなく、クアラルンプールから乗り継ぎ、レースのスタート地点までは有料のシャトルバスサービスが提供。100km 4,730mD+、50km 2,230mD+, 30.7km 1,440D+ の3つのレースが開催。

 

しかし、トレイルランあるある!申し込み後にコース変更があり距離が伸びて、実際のGPSでは103km 5,330mD+、53km 2,800mD+。マレーシアのレース難易度は、OSJ ONTAKE100を完走経験のある人、ごろごろした石の転がる砂利道の下りが苦にならない人であれば完走できるだろう。ONTAKE100よりはコースバラエティに富んでいて、吊り橋やジャングルもありずっとテクニカル。

 
レース当日。スタート地点へと向かうバスは、午前4時発。マレーシアと日本との時差は1時間しかないので(日本の方が1時間進んでいる)何の苦にもならない。僕のホテルからは目の前の場所で、荷物は前日に準備してあり、ぎりぎりまで寝ていた。起きて1階にある冷蔵庫に入れた朝食のパンを取りに行き(安ホテルでは部屋に冷蔵庫がないこともしばしば)部屋に戻ると…
 
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ドアが開かない!(3度目)嫌な予感はしていた。さすがに頭にきて「どうなってるんだ!!バスに乗り遅れる!」と告げると、スタッフはよくあることのように慌てることがない。もしスタッフがいなかったりぎりぎりに起きたりしたらバスに乗れず、完全にアウトだった。日本に帰国して、「ホテルのドアが開かず、レースに参加できませんでした」なんてシャレにならない。
 
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レース会場に到着。車でおよそ1時間。海外トレイルランレースのバス移動時間としては比較的短く体の負担も少ない方だ。
 
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100km、50km、30km含めおよそ1,000人近いランナーが集結。日本のトレイルラン大会にはまだまだ女性が少ないが、マレーシアでは50kmの部だけで30%が女性である。今アジアの女性の間でトレイルランニングは大人気なのだ。
 
参加ランナーのほとんどがマレーシア(クアラルンプール)、タイ、シンガポール、インドネシア、ブルネイなど年中暑い気候の中で暮らす人たちで、冬の日本からやってきたのはおそらく僕ぐらいなものだった。日本国籍の人も稀にいるが、大抵はクアラルンプールの駐在する日本人だ。
 
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レースがスタート。朝4時は気温26℃でまだ涼しい。いくら僕が暑さに弱いといっても、この程度の気温ならトレーニングしているので走ることができる。日本のマラソン大会で気温20℃で「暑かった」「脚が攣った」なんて話を聞くと、涼しいのに何を言っているんだと思ってしまう。
 
この暑い中で僕がいい記録で走れるとは思っていない。事前計画では、制限時間の半分のタイムでゴールを考えていた。レース戦略は、なるべく早朝の涼しいうちに少しでも距離を稼いでおくこと。序盤の6.6kmまでは8位、24.4kmまで10位のポジションにいた。しかし、そこまで。
 
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20キロ地点で女子のトップランナーに追いつかれた。「強い!」ここ最近レース中に女子の姿を見かけることはほとんどなかったが、それもこんなに早い時間に。「この女子トップランナーが僕の最後尾スイーパーだ。抜かれたら終わりだ。」と考えて、逃げ切る。しかし、気温が高くなってからはあっという間に抜かれてしまった。
 
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雲海の中で、ご来光に照らされ光輝くキナバル山。マレーシアの最高峰で世界遺産、独特の山容が特徴で標高は4,095m。富士山より高い。やっぱる苦しいだけでじゃなく、トレイルランニングにはこの美しい景色のご褒美がないと。この景色を見ることができただけで十分マレーシアに来た甲斐、レースに参加した価値があった。
 
富士山は世界文化遺産だが、キナバル山は世界自然遺産に登録されている。1日の入山制限があり、入山届の提出に入山料の支払いおよびガイドの携行が義務付けられている。それを一社が独占しており、年々料金が上がり、現在は山頂へ登るためのツアー代金は6万円近くする。ガイドツアー登山の象徴とも言える。比較すると富士山の富士山保全協力金の名目での1人1,000円の入山料は、任意のうえ、支払ったとしても安い。
 
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あまりの美しさに第二集団を走っていた僕を含む5人のランナーが足を止めた。僕の目の前を走っていたヨーロッパ人ランナーが
「キナバル山をバックに、俺の背中を撮ってくれ!」と言う。写真を撮ると「う~ん、気に入らないな。撮り直してくれ!」レース中なのだが。。彼は足が速いのだがところどころで立ち止まり自撮りを撮っていてその間に追いつく。またスタッフに「俺の背中を撮ってくれ!」と頼んでいる。どれだけ美意識が高いんだ。インスタグラムの流行りから最近はただ写真を撮るだけでは満足せず、写真の質にもこだわる人が増えているように思う。
 
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スタートして2時間、朝8時の時点で気温はマックス、30℃を超えた。僕の前をグループでおしゃべりしながら走っている5人のランナーがいて、「(気を緩めているとミスコースするよ)」そう思っていたら案の定、数分後にコースマーキングを見落としてあらぬ方向へ、どこかへ行ってしまった。自分の頭で考えず、ただ誰かについていくというのは危険。順位が5位アップ。トレイルのレースでは体力以外にコースマーキングをよく見て正しく進むことも求められる。
 
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暑い。川で頭と下半身を冷やした。台湾、シンガポール、フィリピン、気温の高い国のレースではいつもこてんぱんにやられているので、ここでしっかりと完走し終わらせなければならない。暑さの影響かずっと手が痺れている。今回は骨折しようが、歩ける限りは這ってでも完走する心づもりでいた。給水所で夜になるまで待って、制限時間を一杯使ってでも完走しようと考えていた。
 
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25キロ地点からは暑さのあまり歩くことしかできなくなった。歩くことしかできないと普段とは違う筋肉を酷使するため、きつい。「残り28キロ、歩き切ろう」そう決めた。気温が高いと心拍数も上がる。歩いているだけで心拍数165なのだ。走り出せば脳が「これ以上運動を続けてはいけない」という生命維持の危険サインを出す。それは自然なことだ。これからインターバル走のペースで、28キロ歩き続けるようなものだった。
 
「本当に100キロにエントリーしなくてよかった。30キロでも十分だったかも。」
 
レース中何度もそう思った。暑い、苦しい。遠くまでいくと旅費がもったいない根性で、つい長い距離を走りたくなってしまうが、そんな変なウルトラ根性を持たなくてよかった。この高い気温の中100キロなんてとんでもない。自殺行為だ。ガイドの人によればサルなどの動物も日中は暑いので動かず木陰で身を潜めているらしい。それが当たり前だと思う。こんな暑い中100キロ走ろうなんていうもの好きは、人間ぐらいなものだ。
 

ゴールまであと8キロ。風が吹き始めた。空の雲を見て、僕は「(雨が降る)」雨がどっと降り始めた。「(ハハハやった!雨よ、もっと降ってくれ!)」ここに来て恵みの雨。走り出すことができるようになった。しかし、熱帯性気候での雨は一時的なこともわかっていた。雨がやめば蒸し風呂のような状態が訪れる。僕は今のうちに少しでも前へ進もと走り始め、完全に歩きモードにスイッチが入っているランナーを4人、5人と次々に抜いた。レース終盤で順位を上げられるのは大きい。

 
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マレーシアのトレイルレースの特徴は、幾多の吊り橋。ゴール間近にあるボロボロで上下左右に大きく揺れる吊り橋は、安全のため4人づつ渡ることになっているのだが、それを聞いた僕の後ろの50代とおぼしき中国人おじさんランナーが「そんなルール、知らねえ!」と怒り出した。
 
さらに橋の真ん中で「どけ!俺を先に行かせろ!」と僕に言う。走って橋が傾くほど揺らし、さすがに温厚な僕も「揺らすなと言っているだろ!!静かに歩け!!」と怒鳴ってしまった。こんなランナーがいることにひどく失望し、もう記録などどうでもよくなってしまった。その後も僕が歩いて橋を渡っている間に、走って橋を渡ってくるランナーにあっという間に差を詰められ失望。
 
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フィニッシュ!自分の壁を乗り越えた。これまでで1、2番に入るキツいレースだった。ハイキングペースだったがスマホで写真を撮る余裕も、景色を楽しむ余裕もあまりなかった。トレイルのレースで距離の誤差はよくあることだが、歩きでの3km+は辛かった。山の中での3kmは時間にして40分、50分増し。すでに30kmの部のランナーが多くゴールをし、「30kmで十分な暑さだった。50kmや100kmに参加をするランナーは考えられない。」と話していた。
 
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疲れてホテルに戻ると、部屋が清掃されていない。スタッフに告げると「お客様から特別に指示がなかったので清掃しませんでした」。指示されなかったからって。。大抵は「掃除してください」か「起こさないでのください」の札がありドアノブにかけておくのが一般的だが札もなく、指示されなければ清掃しないとは。このホテル、基本職務を果たしていない。
 
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ポルチーニ茸のリゾット フォアグラのせ。
 
僕はマラソンやトレイルのレース中に「レースが終わったら何を食べようかな?」「酒を飲みたいな」などと考えたことがない。レース中ずっと考えていることは、「早く終わらせてクーラーの効いた部屋で寝たい」。「眠るために走る」のだから、我ながら奇妙に思う。暑い日のレースでは特にそう思う。気温34℃の中走った胃へのダメージは大きく食欲が湧かず、肉も刺し身も食べる気にならず、結局シャングリラホテルのイタリアンレストランを再訪問。一人で晩酌。
 
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いろいろあって疲れた。レース翌日。ホテルのエアコンが壊れた。熱帯夜の中、エアコンなしはきつい。即刻ルームチェンジを希望。
 
五つ星のヒルトンに泊まることもあれば、一つ星の安ホテルに泊まることもある。「常にベストとワーストを体験しておく」というのが僕の考えだ。そうすれば自分の人生がどちらに振れたとしても、生きていくことができる。
 
夜は100キロのレースを完走して帰ってきた友人のアンドレさんとお酒を飲む予定だった。ところが、僕がルームチェンジしたことを友人は知らず、元いた部屋をノックし続けた。僕はノックを待ち、結局会うことができなかった。最悪だ。
 
今回は空港やシャトルバスに近いからという理由で、評判のよくないホテルを選んだがためにふんだりけったりだ。
 
皆さんもレースのホテル選びは慎重に。

 

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