こんにちは。
トレイルランナーズ大阪の安藤大です。

レース中にどんな出来事があったのか?

ベトナムマウンテンマラソンを振り返り、お届けします。長文です。
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当日~スタート前
レースのスタートは、土曜の午前4時。日本時間で言えば6時スタートなので、時差ボケはなく、むしろ国内大会より調整しやすいです。

今回もレースの1週間前、現地に到着してからコーヒーやコーラなどのカフェインは抜いています。 

理由は、「レース中のカフェインの効きを良くするため」ではありません。カフェインは長距離レースでは胃にもたらす負担が大きいことが理由です。

100kmを超えるロングレースでは眠け覚ましに摂取することもありますが、今回は当日スタートの当日ゴールなので、その必要もありません。レース中にもカフェインの摂取を控えてからは、調子を崩したり、トイレに行くことも少なくなりました。

アメリカの最新の研究結果の多くでは、「カフェインには利尿作用はない」が有力ですので、ここのトイレの話は「お腹を壊すことがなくなった」ということです。一部のジェルや薬の痛み止めにもカフェインは含まれていますので、これも摂取はしません。

何を摂取するかよりも、何を摂取しないかの方が重要であることもあります。

優勝候補

タイの“ウルトラの帝王”、サニャン選手が大本命優勝とされていました(実際に圧勝)。ほかはどんな有力選手が出ていたのかは知りません。

スタート
まずは自動車の整備士のように一つ一つカラダの動きやフォームを確かめます。カラダが温まらないうちに絶対に飛ばしすぎてはいけません。

そして、今回の出場選手のレベルを図ります。日ごろのジョグペースで走っていますが、誰も追ってきません。これがウルトラトレイルの世界戦なら、中盤に位置しています。

僕の前に一人。顔を知りませんが、タイのサニャン選手でしょう。じわりじわりと差が開き始めるものの、まだ視界に入る状況でした。日ごろタイヤを腰にくくりつけて走っているような選手ですから、やはりスピードが違いすぎました。

野犬との格闘
路上を鎖に繋がれていない野犬が目を光らせ、唸り(それも何十匹と!)。その度に立ち止まり、後ろから他の選手が来るのを待ち、歩いてやり過ごす。そして、走り出す。

リズムに乗れない展開が続きました。

5kmまでは2番手で走り、野犬にたじろいだりしているうちにドイツ、フランス、香港人らしき選手がやって来ました。マラソンや50kmではなく、先は長いので、無理せずに第2集団、5番手に下がります。

一方、前半でなるべくリードを広げておきたいという思惑もありました。

ロードを6kmほど走ると、ようやくトレイルへ。すでにトレイルは泥だらけのスリッピー、渡渉の連続で、膝下まで増水している川もありました。

大抵のコースにはもう驚きませんが、コース上にはニワトリに無数のヒヨコ、アヒル、豚に羊、水牛まで何でもいました。民家の軒下を走るような大会は国内で聞いたことがありません。
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僕は年の半分は山へ行き、転ぶことは2、3回しかありませんが、この日だけで10回、20回は転びました。大げさでなく、10年分は転んだんじゃないかと思うぐらい。どの選手も一度は転んだり、お尻から滑ったりしたと思います。
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本当に美しい水墨画のような景色が続きます。

ここ一年はプランクを始めとする、バランスを鍛えていたおかげで泥だまりでもあまり転ばずに済み、トレーニングは本当に活きました。
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霧で山頂からの展望は残念ながら望めませんでしたが、棚田はずっと見えていました。

泥試合に突入
お尻で滑らなければ下りることができない急斜面、シューズが泥沼から引き抜けない、そんなレベルです。もし習慣でシューズ紐を足首でしっかりと締めていなかったら、何度となくシューズは脱げ、タイムロスしていたことでしょう。

~30kmまで
ここまでほぼ一人旅。途中でフルマラソンの選手と合流する、テクニカルで滑りやすい下りが続くとは聞いていましたが、思いもかけない大渋滞に巻き込まれました。

右にも左にも避けて通れない下りのシングルトラックで、足元は泥のぬかるみとあって、追い抜くに抜けません。下手にどいてもらえば周辺の植生にダメージを与えることにもなります。順位やタイムはこの際は忘れることにしました。

背中にカゴを負い、山菜採りをしている小学生ぐらいの女の子が僕よりも山登りが速かった。

ちょっと衝撃でした。あちらはそれが日常。

~42km
ここまで一人の女子選手にも会っていません。女子トップ選手より前にいるということは、いいペースだといつも判断材料にしています。

タイムは手書き記帳のアナログ式
このレースには計測チップはなく、各エイドで自分で到着時刻と名前を記入します。レース開催ではタイム計測がコストの高い上位項目ですので、理に適っているかもしれません。

おかげで、およそ何人の選手が自分の前に通過したのかがわかりました。僕はまだ8、9番手にいました。

ところが、です。

42kmエイドを出ようとした矢先に女子のトップ選手が2人到着!ほか70kmの男子選手も何人か入ってきました。ぞっとしました。渋滞で思いのほか、差を詰められたようです。

結果的には、トップの4人は渋滞を回避でき、中盤より後ろの人にはあまり渋滞の影響がなかったようです。

序盤の渋滞ならわかるのですが、42kmの中盤に来てまでにはかなりがっかりし、ここで順位やタイムはもういいかとも思いましたが、気持ちを奮い立たせます。

前を追う身が、一転して追われる身です。僕は後半スパート型ではないため、この状況は明らかに分が悪いです。

55km~後半
雨が本格的に降り出しました。外国人選手は、雨でも運動中は大丈夫だからと、そのまま走り続ける人が多いように思います。おそらく雨風が今以上に強くなったときに低体温で失速、最悪DNFに繋がるだろうと、僕は早めに早めにレインジャケットを羽織りました。

レース中は、何度となく鏑木さんの言葉が頭の中にこだましました。

3mでも5mでも走れるところがあれば、走る。やがてはそれが大きな差になるんですね。

フィニッシュ
「もし自分に子どもがいたら、今の走りを誇りを持って伝えることができるだろうか?いや、まだだ。最後まであきらめないことを伝えたい。」ずっとそんなことを考えながら、ゴールへ。

泥だらけの姿でゴールした瞬間は心の中で、

「トレイルランナーは、カッコいいんです!」

そう叫んでいました。


レースの振り返り
30kmまではほぼ予定通りに進められていましたが、想定外の渋滞に巻き込まれて、その後も走らせてもらえないコースが続き、ペースを上げられないまま、ゴールとなりました。50kmを過ぎてからはやはり先週末の4日間連続ツアーの疲労が足に重くのしかかってきて、やっぱり無茶だったなと反省すると同時に、これが100kmトレイルレースでなくて良かったと安堵しました。
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海外レースの多くはリタイアも容易ではなく、日本のように甘くありません。今回のベトナム・サパのコースはバスやタクシーも通らない、人里離れた本当の山奥です。大会ドクターはいますが、ゴールで一人いるだけです。

今回は骨折などのケガで入院6名、雨風による低体温でリタイア続出。今回の旅で一番仲良くなったアンドレさんも胃腸不良でDNF。雨の中1時間以上バス待ち、ほかにも低体温症でDNF者が数人いたので、それぞれを麓のホテルまで送り届けた後で、山の上のロッジに戻るのには3時間かかったそうです。

滑り台のように滑って岩や木に激突した人や、滑りやすい岩場も見てきましたから、レース中にケガ人が出てもおかしくないなとは思いました。
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Tシャツにフィニッシャーズメダル。また新しいメダルがコレクションに加わりました。

完結!

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