トレイルランナーズ大阪の安藤大です。

今日は、今年9月のヨルダンへの旅のとっておきのサイドストーリーをお話したい。

ヨルダンからの帰国便の隣り席で、ある日本人男性と乗り合わせた。
名前を“近藤さん”と言い、偶然にも僕と同じ大阪出身。仕事は個人で美容院を経営しているという。

家族でパリ旅行を楽しんでいて、エールフランス便で帰国するところ、ストライキで足止めをくい、急きょドバイ経由で帰国することになったという。(パリへ旅行していた観光客の多くは、大混乱で帰宅難民も出た様子。)

「僕は学生時代、ラグビーをしていたんですね。それが大きなケガでできなくなったんです。ラグビーってカラダとカラダがぶつかるコンタクトスポーツ。ケガが多いんです。そのラグビーでの経験が美容師に生きてるんです。」

「(ラグビーと美容師にどういう関係が?)」僕は、「どういうことですか?」聞いた。

「僕は女性客だけを対象にしています。僕には得意なカットの髪型があって、その髪の女性しか切らないんです。ラグビーで言えば、自分の得意ポジションです。」

「得意な髪型があるのはわかりますが、その女性客しか髪を切らないというのはすごいこだわりですね。」

「そのカットのためには、ハーフスクワットのような姿勢を長時間維持しなければならないんですね。僕はそのために足を鍛えています。他の美容師には絶対に真似ができないんです。そんな姿勢で一日もたないと。」

「髪型一つとってもカットを入れる回数で髪の持ちが違うんです。」

こんな髪を切る思いをお客さんにもされているらしい。

「おかげさまで20代で独立してから広告を一切打たず、口コミだけで30年やってきました。携帯電話もあえてガラケーです。」

「独立して一切営業ゼロですか?すごいですね。」

「有り難いことに、お客さんが離してくれないんです。お客さんにお願いして、ようやく今回の家族パリ旅行が実現したんです。」

「僕はもうすぐ60歳になるんですけどその時も髪を切っていられるのかは、わかりません。もし美容師ができなければ、今はケガをしないために控えている大好きなラグビーが思い切りできる。ラグビーも60代の社会人チームがあるんですよ。どちらにしても僕のこれからの人生が楽しみで楽しみで仕方がないんです。」

この方の仕事とラグビーへの大好きな姿勢が伝わってきた。自分の大好きなことをして、それで生計を立てている。これからの人生にワクワクしている。成功の定義は人それぞれだけれどもこの方は成功者の一人だと思った。

「こんなこだわりだから、誰かに引き継ぐのは難しいです。職人気質ですよね。だから僕はこの美容院は一代限りだと腹に決めているんです。」

近藤さんの話から学んだことは、

1.得意分野を磨く。
2.見えない細部にまでこだわる。
3.こだわりをわかってくれる人とだけ仕事をする。

僕はヨガやピラティス、空手やボクシングなどこれまで26のスポーツに取り組んできた。それをマラソンやトレイルランニングのトレーニングにも取り入れている。

練習会ではまずなわとびを飛ぶのだけれども、「何でなわとびなんて飛ばせるんですか。」理由を説明しても、自分の頭で納得のいかない人は去っていく。

「安藤さんをちょっと信じてみよう。」という人だけが残っていく。

それで構わない。

僕もそうだけれども、人は自分が聞きたい人の話しか聞かないもの。たとえそれがどれだけ正しく、素晴らしいアドバイスであっても。「この人大嫌いだけれども、言っていることは正しいからやろう。」というのは、なかなか難しいもの。

誰を信じるかは、その人の自由。

僕は寝ようとしていたのだけれども、結局この話は5時間近く、関空に到着するまで続いた。