頂きへ、そしてその先へ
頂きへ、そしてその先へ

今日の一冊、「頂きへ、そしてその先へ」2012年5月、日本人初のヒマラヤ8000m峰全14座の完全登頂を成し遂げた、プロ登山家 竹内洋岳氏の最新刊。

「恐怖は打ち消すものではなく、利用するもの」
「安全だと思い込んでいる場所こそ気をつけるべき場所」など

前著に続き、今回も竹内さんの言葉には思わず唸り、考えさせられます。ながら人生にチャレンジしているすべての人への「考えるヒント」が得られる一冊です。

≪感想≫
本著の中で思わず「カッコいいな。」と思ったのは、「私が14座を登ってきたことに意味があるとすれば、他の多くの人に山の存在を知ってもらえたこと。私はただのきっかけになればいい。私の名前など憶えてもらう必要はない。楽しませてもらっただけなんですから。」という言葉。

「たとえ一人で登っていても、私だけの登山じゃない。」私もトレイルランニングレース中に大いに感じるところです。たとえ一人で走っていても、私だけのレースではない。そこには大会スタッフの方やボランティアの方多くの方の支えがあり、それだけでなく、すでにある登山道の階段や吊り橋一つとっても、これまでの多くの人々に支えられて我々は歩き、走ることができているのだと実感します。

本著では登山の面白さについて述べられていますが、トレイルランニングレースの真の面白さを言えば、水分や食料の補給計画を自分で立てて、どうやれば自分のイメージしたタイムどおりに各エイドを通過できるのかを考えるのが面白いと思うんです。いわゆる、「戦略」です。そのためにはトレイルランニングの競技普及だけでなく、競技レベルの向上にも力を入れる必要性を感じています。

登山の競技性と重ね合わせて、トレイルランニングについても色々と考えさせられました。

≪本著より≫
登山ほどすべての者にフェアなスポーツはない

山に登ったことを「制覇」だなんてとても言えない

恐怖は打ち消すものではなく、利用するもの

登山とは、山を登って、頂上を通過して、無事に降りてくる。そこまでやり切って、初めて成功したと言えるスポーツです。仮に不幸にも下山中に事故にあって遭難などしてしまった場合、そのような登山を成功と呼び祝福する者は、まずいないのはおわかりでしょう。

頂上を目指すのは、その道を進むきっかけにすぎない。途中で自分にとって最高の景色を発見し、最高の感動を得たならば、そこがあなたにとってまたひとつの頂上です。

私は2007年にガッシャブルムⅡ峰で雪崩に遭い、背骨を折るという重傷を負いました。でも人の体は、体の主の意志とは関係なく、必死に治ろうとしている。焦るばかりの心だけでなく、体もまたあきらめず、再び山へ行こうとしている。

「体力作り」から「体力維持」へ切り替え。人の基礎体力の最大値は20代までにいかに引き上げられるかで決まります。30代以降は年齢とともに下降をただおっていく一方。その下降曲線のカーブをなるべく緩やかにしようとすること。レストやコンディショニング、ケガをしないように注意することでなんとか保つ。

頂きへ、そしてその先へ
頂きへ、そしてその先へ