ウルトラトレイル・マウントフジ2013。ようやく頭の中が整理されつつあるので、レポートをお届けします。

4月26日(金)~28日(日)の間、山梨県富士河口湖町の八木崎公園発着で、"日本一過酷で美しいトレイルラン大会"「ウルトラトレイル・マウントフジ(UTMF)」が開催された。昨年の第1回は総走行距離156km、累積標高8,503m、制限時間48時間。山梨県・静岡県にまたがって富士山を1周する100マイルトレイルレースとして初開催され、大きな話題を呼んだが、2回目となる今年は、昨年のコースの反時計回りとなり、距離も161km、累積標高9,164m、制限時間も46時間に短縮され、さらに難易度がアップ。

トレイルランニングレースの世界大会、「ウルトラトレイル・デュ・モンブラン(UTMB)」の世界初の姉妹大会ということで、日本最高峰のトレイルランニングイベントとして、トレイルランナーの間で認知されつつある。

レース一週間前。不要な雑誌や本をすべて処分。月額サービスも見直してすべて解約し、部屋も綺麗に片づけ、万が一のことに備えて、仕事関係も支障のでないよう手配をしておいた。「このレースで引退したとしても悔いはない。」という気持ちで望むのが、僕のレース出場の基本スタンスになっており、また「1レース1チャレンジ」をモットーにしているため、僕にはファンランはない。いつだって全力疾走。だからこそ、最大限楽しみながら走り、これまでのレースはすべて完走してきた。これは長年の武道経験や武士道精神が元となっているのかもしれない。

4月26日(木)15:00 河口湖八木崎公園 曇り時々雨 18℃
利用交通機関: 新幹線(新横浜~八王子~大月経由)
河口湖駅から八木崎公園民宿まで送迎バス利用

・受付~必携装備品チェック

河口湖に着いてすぐ、送迎バスで民宿へ。荷物を預けて、スタート会場へ。

前日受付の人は少ないのか、まだ時間が早いからか。人もまばら。レギュレーションチェック会場でジュリアン・ショリエ選手(今回第2位)をはじめとするサロモントップチームやinov-8チームを発見。中には顔と名前の一致しない選手もいたが、アニメ『ドラゴンボール』でフリーザと遭遇したような、みんな見ただけで速そうなオーラを放っている。

そんなトップ選手と一緒に装備確認する機会に恵まれた。しかも、確認担当者はあのオリエンテーリングの第一人者、村越真さん。もうこれだけで来た甲斐があったというもの。緊張が走る。トップ選手のリュックの中身は日本未入荷のものも多く、まだまだ必要な防寒着等は持った上で、軽量化できると参考になった。お店から薦められるものを生真面目に揃えてちゃダメなんだと実感。

肝心の必携品のチェックは?もっと厳しいものを想像していたが、チェック印もなくあっさり。昨年参加した人に聞くと、もっとゆるかったという。このあたりは、あえてそうしているのだろう。100マイルレースに臨むからには、寒さ対策はもちろん、あらゆる天候に対応しうる装備や体力を備えているであろう。そこには、選手一人一人の自己責任を尊重するとの意志が見える。本来はフラッシュライトを手渡すことて確認済みとなるはずだったそうで、トラブルで到着しなかったとのこと。ライトはA1エイドで受け取ることに。レース前から何か波乱の予感。

・リッツカールトン並みにホスピタリティ溢れる女将さん
この大会は当日受付も可能であるが、トレイルランニングレースでは前泊受付のみが多い。今回希望者には会場近くの宿がランダムに振り分けられる。これには当たり外れがあり、それも旅の楽しみの一つ。今年出場した、『第1回伊豆松崎・修善寺間山岳競争大会』では、猫屋敷にあたり、食品衛生上よくないであろう台所で食事をすることに。一方、宿泊費は同じでありながら知人は、清潔な宿で伊勢海老など海の幸盛り沢山で食べきれなかったという。果たして今回は..

「お電話いただければすぐお迎えにあがります。」
駅から宿まで送迎。
「夕食の中身は?」と聞けば、
「何が食べたいですか?栄養あるものたっぷりご用意します。」
(そんなこと聞かれたことないよ、これまでに。涙)
「レース中の荷物は?」
「完走までおいててください。」
「ゴールはいつになるかわからないのですが…」
「仮眠をとりつつ、46時間体制でサポートします!
 いつでもお風呂に入れるようにしておきますね!」

これらを女将さん1人で切り盛り。民宿はスタート会場からすぐ
歩いて行ける距離で、15時のスタート開始直前まで寝ることができた。

・夜、朝、昼と食事が振る舞われ、足を温存できた。
夕食の写真。和食に洋食フライに、牛鍋とボリューム満点!豪華で、みんな喜びの声をあげていた。僕はてっきりうどん定食のようなものを想像していたので、夕食の30分前にラーメンとチャーシュー丼セットを食べたばかり。お腹一杯だったが、100マイルも走るのですべて平らげた。(結果的にこれはよかった。)女将さんは終始ハイテンションで、それは朝も真夜中でも変わらず(おそらくほとんど寝ていないだろうに)、僕らは終始元気をもらった。女将さん自身は、「何か大きなレースがあるそうですね。」程度の情報しか聞かされておらず、またそれ以上は興味がない様子。もともと明るい性格の方なのだろう。

ゴールは女将さんのおかげでもあり、感謝で一杯!

-レースに出場したきっかけは?
僕の学び、研究しているトレイルランニングの技術が100マイルいう距離で、大舞台でどれほど通用するのかということに興味があったからです。トレイルランニングツアーで日ごろ教えていることが通用するということを、「自分が見本を見せなければダメだ。」という思いがありましたね。

-レースに向けた練習で重点的に注意したことは?
マラソンとは違い"距離"ではなく、"時間"で、なるべく 3時間、4時間と長時間走るように心掛けました。またレース当日と同じ重さのリュックを背負って、ロードを走ったりしました。とにかく補給やウェアもそうですが、レース中に行うことはあらかじめテストしておこうと思いました。

―レースに向けた対策は?
ここ一年、ジョグのペースを上げることに取り組んできました。つまり心拍数は変わらず楽だけれども速いペースを保つということ。また整体にも定期的に通い、体のケアにも気をつけました。

-禁酒やカフェイン抜きなどは行いましたか?
一切行っていません。普段どおりに生活しました。慣れないことをして、体調のリズムが変化することの方が怖いので。ただ前日やレース後のお酒やカフェインは安眠の妨げとなるので、控えました。

-実際走ってみて、どんなコースでしたか?
―兵庫の六甲全縦走と日本山岳耐久レース、北丹沢山岳耐久レースを一度に走ったような、日本一過酷と呼ぶにふさわしいコースでした。