トレイルランナーズ大阪の安藤です。3月9日(土)は、『IZU TRAIL Journey 第1回伊豆松崎・修善寺間山岳競争大会』に参加してきました。レースは伊豆半島を南の松崎港から北は修善寺まで約70kmの山岳区間を、14時間以内に縦走するというもの。かねてより開催が噂され、期待されてきた本大会。以下、レースレポートをお届けします。

◆大会概要
大会名称IZU TRAIL Journey 第1回伊豆松崎・修善寺間山岳競争大会
大会愛称/IZU TRAIL Journey(ITZ。和文表記/伊豆トレイルジャーニー)
日程 2013年3月9日(土)受付・前夜祭/10日(日)6:00スタート
場所 静岡県松崎町、西伊豆町、河津町、沼津市、伊豆市にまたがる地域
コースプロデュース 鏑木毅(プロトレイルランナー)
距離 約70km(実測75km) 高低差1,035m 累積標高差約4,200m
参加選手 1,500名

◆バスは超満員
関西の方は新大阪から修善寺まで、乗換え1回で約3時間20分程度。三島や修善寺からは大会会場までの有料シャトルバスが30分おきに運行。車で参加する人を考慮しても、1,000名規模の選手送迎。事前予想通りバスは超満員。1便に乗れず、2便を待つことに。

◆装備品チェックはスムーズに
大会会場の松崎市総合体育館に到着。「約1,500人もの必携品チェックをスムーズに行うことができるのだろうか。」と長時間待ちも覚悟していたが、「まずは○○を出してください。次は..」1名のスタッフが選手3名を同時にチェック。ものの数分で終了。この段取りは非常によかった。

◆距離が伸びた?
「開催にあたっての調整は困難を極めました。実は許可が下りたのは今週に入ってからのことです。」主催者より、驚きの事実発表。次いで諸注意。

「トレイルランナーを山の暴走族だと思っている人もいます。登山者の方優先、ルール厳守でお願いします。」
「特に今回走る場所は国立公園の特別保護地区であり、トレイルを踏みはずさないでください。」

特に山頂付近での強風、防寒対策については何度も注意が呼びかけられた。(みんな覚悟はしていたが、のちに予想以上だと思い知ることに。)

鏑木さん「今回トレイルの大会としては珍しい、1kmごとに距離表示を設けました。」
会場「おぉ!」
鏑木さん「これは救護体制をスムーズにするためです。ただ距離を数えていただくとわかると思いますが..75kmあります。」
会場「(苦笑)」
鏑木さん「何度計測しても、誤差がでるんですよね~」
フルマラソンのロードレースで3kmや4kmもの誤差はありえないことだと思いますが、トレイルのレースでは起こりうること。5kmも想定の範囲内ではありますが、山の5kmは大きい!!
≪学び≫トレイルのレースで距離を信じてはいけない。すべては"距離"ではなく、"時間"である。
 
◆宿泊トラブル
部屋に入れない。同姓の方が僕の部屋にチェックイン、そのまま出かけてしまった。気持ちのよいレースを迎えたいので、平常心を保つ。
≪学び≫レースにトラブルはつきもの。トラブルを楽しむ心を。

◆スタート
第一回目ということもあって、山の中での渋滞が読めない。そのため、スタートは早くも日本山岳耐久レース(ハセツネCUP)並みのダッシュの予感。案の定号砲が鳴るなり、物凄いスピードでみんなロード坂を駆けていく。あきらかにペースが速すぎるので、マイペースを保つ。すると、後方から女子優勝候補の小川比登美さんが登場(女子2位でゴール)。周囲のペースが速すぎることを確信。「自分の知る選手を見つけ、ペース配分の参考にする(なるべくゴールタイムの近い人がよい)」のもトレイルでのテクニックの一つ。
≪学び≫トレイルでは速い人が強いのではなく、自分のペースを保つことができる人が一番強い。

◆CP1~CP2(12kmから20km)
「気持ちよく走れる林道です。まだ前半なので飛ばしすぎないように。」鏑木さんの説明通り、ジープが通るような砂利道が続く。ここでで飛ばしすぎ、後半失速したランナーも続出。今回のような70km、80kmとなるレースでは、40kmまではみんな元気。後半のために体力を残しておかなければならない。

トラブル発生。林道の高速下りに、今回新しく胸に取りつけたポケットが耐えきれず、外れる。ぶらぶらの状態に。気になって、ランニングフォームも滅茶苦茶になり、体力とタイムを消耗。道中、砂漠マラソンランナーの樺沢さんから声をかけていただき、走りながら握手を交わし、しばし談笑しながら走る。ロードレースで話しながら並走することはほとんどないが、トレイルではこうしたレース中の会話も楽しみのひとつ。
≪学び≫新しいサプリメントやウェアは、必ず事前にテストしておく。

◆AP1こがね橋(25km地点)
トップ選手は45分前に通過。トイレと水分補給で5分休憩。

◆CP3~AP3「コースに走らされました。」
滑沢峠~後藤山間は、追い越し禁止区間。全体的として、今回のレースは、走れるトレイル。シングルトラック区間も多く、「コースに走らされ、きつかった。」とは参加選手の声。

◆32km地点の二本杉峠から、42kmの仁科峠まで
強風でお腹を冷やしたのか、ひどい腹痛をもよおす。レース前に薬を飲んでいても、腹痛になる時はなるもの。10km以上先の仁科峠まで、歩きとジョグを強いられる。ここで大きくペースを落とす。42kmの距離表示を過ぎても、走れど走れどつかない。一番苦しい区間。登山者や犬をつれて散歩している方も多くいました。

◆仁科峠~土肥駐車場
「この景色を見るためにやってきた!」伊豆の稜線から見る絶景。風速20m/s(台風は17m/s~)の強風が吹き荒れ、事前に聞いてはいましたが予想以上。木はみしみし唸り、走ろうにも綿胞子の如く体ごと飛ばされるレベル。山では100m高度を増すごとに気温は0.6℃下がり、風速1m/sで体感温度は1度下がります。伊豆は麓は20℃ですが、山頂付近は0℃近い世界。多くの選手が、「風をなめてはいけない。」と実感したことでしょう。トレイルランはまさに自然を相手にしたスポーツであることを思い知らされます。

◆だるま山レストハウス~ゴール
ラスト10kmはほぼ下り。だるま山レストハウスまでは気持ちのよい丘の下りが続く。けれど、ここまできた足にはなかなか堪える下り。これまで歩んできた道のりを振り返って、旅の終わりを寂しくも感じる。

あと5kmというところで、サブ10達成がぎりぎりになってきた。

「間に合うか?!」

ラスト2kmのロードは..まさかここにきての全力疾走。(笑)70km近く走った足で、キロ4分近いスピードで飛ばす。全力を尽くして、間に合わなければ納得もできる。歩いたりサボったりしてしまって、これが10時間01秒ともなれば悔いが残る。

「痛みは一瞬、栄光は一生。」

悔いは残さない。結果は、9時間58分54秒。
ゴーール!どうにか間に合った!

◆感想
今回のレーステーマは、「体力80%を残した状態で、10時間以内で余裕をもってゴール。」そのはずが序盤からレースをしてしまい、思いのほか階段や強風にやられ、ゴール時には3割も残っていませんでした。事前説明では"75km"とのことでしたが、手元時計では約70km。多くの選手のGARMIN計測でも、約70kmだったよう。ただ走っているとそれ以上の距離には感じました。エイド地点の距離と表示距離が合っていないことによる心理錯覚と"75km"というイメージがもう頭の中にあったことが一番大きいと思います。

◆運動量は?
関西でいえば、朝6時から伏見稲荷から大文字、比叡山、鞍馬まで34km走った後に、ダイヤモンドトレール36kmを全縦走するようなものでしょうか。

◆改善
・胸ポケットの外れ ⇒次回からテーピング固定
・30km程度のトレイルランでは起きなかったが、70km近いトレイルを100マイルレースと同じレベルの荷物を背負って今回走ったことで、肩の凝りとリュックの擦れ。
・胃の痛み。長時間のウルトラランニングは腸への負担が大きいことは胸に止めていたが、胃にきた。

今回もいろいろと学びのあるレースでした。ツアーを主催するだけでなく、自らもレース出場しウェアやシューズ、テクニックをテスト・改善していきたく思っています。