「最近、少し疲れている」
「頑張っているはずなのに、前に進んでいる感じがしない」
こうした感覚を持つと、多くの人はこう考えます。
自分の努力が足りないのではないか
もっと気合を入れなければならないのではないか
しかし、この自己診断はほとんどの場合、的外れです。
消耗は“性格”や“根性”の問題ではない
まず、はっきりさせておきたいことがあります。
人は、頑張りすぎて消耗するのではありません。
構造的に無理な位置に置かれ続けることで、消耗します。
ここで言う「構造」とは、
・役割
・評価のされ方
・時間の使われ方
・成果の返り方
といった、自分を取り巻く配置全体のことです。
同じ人でも、
構造が変われば、驚くほど楽になります。
逆に、どれだけ優秀でも、
構造が悪ければ、必ず疲弊します。
なぜ「真面目な人」ほど消耗するのか
消耗しやすい人には、共通点があります。
-
責任感が強い
-
手を抜くことに罪悪感がある
-
周囲の期待に応えようとする
これは美徳です。
しかし、構造が悪い環境では、この美徳がそのまま消耗装置になります。
たとえば、
-
成果より「常に忙しいこと」が評価される
-
その場にいないと価値が生まれない
-
問題が起きるたびに個人が対処する
こうした構造では、
真面目な人ほど前に出て、背負い、疲れます。
一方で、
そうでない人は「ほどほど」にやり過ごします。
結果として、
消耗している人ほど、評価されにくい
という逆転現象が起きます。
消耗の正体は「位置のミス」
ここで視点を変えてみます。
もしあなたが、
-
常に急かされている
-
休んでも回復しない
-
何をやっても足りない気がする
のであれば、それは努力不足ではありません。
単に、無理な位置に立たされているだけです。
・その場に居続けないと価値が出ない位置
・他人の判断ミスを引き受ける位置
・仕組みの欠陥を人力で補う位置
そこに長く立てば、
誰でも疲れます。
「もっと頑張る」は解決策にならない
消耗しているときに、
「もう少し頑張ろう」と考えるのは自然です。
しかし、それは
傾いた床の上で、姿勢を正そうとする行為に近い。
必要なのは、
姿勢ではなく、床の修正です。
つまり、
-
何をするか
ではなく -
どこに立っているか
を見直すことです。
消耗しない人は、何が違うのか
消耗しにくい人は、特別に強いわけではありません。
彼らは、
-
自分がいなくても回る仕組みを好み
-
感情で動かず
-
早い段階で「違う」と判断します
それは冷たいからではなく、
自分を消耗させる位置に長居しないだけです。
違和感は、能力ではなくセンサー
最後に一つ、大切なことを。
「なんとなくおかしい」
「これは長く続けると疲れそうだ」
こうした違和感は、
甘えでも弱さでもありません。
構造的な無理を察知する、非常に正確なセンサーです。
このセンサーを無視し続けると、
人は「自分が悪い」と思い込み、
余計に消耗します。
-
人は頑張りすぎて消耗するのではない
-
構造的に無理な位置に置かれて消耗する
-
解決策は努力の増量ではない
-
立ち位置と構造の見直しが先
もし今、疲れているなら、
自分を責める必要はありません。
ただ一度、静かに問い直してみてください。
「これは、私が無理なく立ち続けられる位置だろうか」
その問いだけで、
消耗はすでに半分、終わっています。
無理な位置から降りるとは、
「役割・期待・責任の引力」から一段外に立ち直すことです。
逃げることでも、戦うことでもありません。
1. そもそも「無理な位置」とは何か
無理な位置には、共通した特徴があります。
無理な位置のサイン
-
自分が止まると、全体が止まる
-
仕組みの欠陥を“人力”で補っている
-
説明・調整・感情処理が主業務になっている
-
成果より「対応している姿勢」が評価される
ここで重要なのは、
その位置は「誰かが悪意で置いた」のではなく、
空いている人・断らない人・できる人が
自然に吸い寄せられる構造になっている
という点です。
2. 降りるために「やってはいけないこと」
多くの人が、逆効果の行動を取ります。
やってはいけない降り方
-
もっと頑張って信頼を得る
-
正論で構造を変えようとする
-
一気に辞める・切る・壊す
-
我慢の限界まで耐える
これらはすべて
無理な位置に、より深く埋まる行為です。
3. 無理な位置から降りる「実際のプロセス」
降りるとは、ジャンプではありません。
荷重を一つずつ外す作業です。
ステップ①「責任の境界」を言語化する
まず、頭の中でこう整理します。
-
これは自分の責任か
-
それとも、構造の欠陥か
ポイントは
口に出さなくていいということ。
まずは自分の認知上で線を引く。
これだけで、消耗は少し下がります。
ステップ②「即応」をやめる
無理な位置の人は、反射的に動きます。
-
すぐ返信
-
すぐ対応
-
すぐ引き受ける
これをやめます。
代わりに、
-
一晩置く
-
ワンクッション挟む
-
「確認します」と言う
スピードを落とすこと=位置をずらすことです。
ステップ③「自分がいなくても回る形」を探す
ここで初めて、建設的な問いを使います。
「これを私以外がやるとしたら、どうなるか」
-
仕組み化
-
分担
-
そもそも不要
この問いを持つと、
自分が“詰まり役”になっている箇所が見えます。
ステップ④「全部はやらない」を許可する
無理な位置にいる人は、
-
中途半端を嫌い
-
全体最適を背負いがちです。
しかし、
7割で止める
引き受けない部分を残す
これが、降りるための技術です。
4. 降りたあとの「よいあり方」
では、降りた人はどう振る舞うのか。
良いあり方の特徴
-
常に前に出ない
-
判断はするが、実行は抱えない
-
感情の調整役にならない
-
「これは私の仕事ではない」を静かに分けている
キーワードはこれです。
軽く、遅く、少し遠くから見る
5. あり方を一文で言うなら
無理な位置から降りるとは、
役に立とうとする位置から、
構造を見る位置に移ることである。
降りるとき、多くの人は不安になります。
-
冷たいと思われないか
-
評価が下がらないか
-
必要とされなくならないか
しかし現実には、
降りない限り、
いずれ必ず壊れるか、辞めるか、鈍くなる
のが無理な位置です。
降りることは、自分を守る行為であり、
長く関われる位置を取り直す行為です。
