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地球をつなぐ

60歳を過ぎて、今もっともやりたいことは何だろうと自問自答した。その答えが「海外で暮らす+英語で学ぶ=留学」だった。私はデンマークの地に降り立った!

2010年6月25日(金)



24日の日記で「生活の質や豊かさ」について述べたが、それを証明するような田園スタイルの集合住宅を見学することになった。

それはデンマーク生まれの建築家でアンネ・ヤコブセンと並び称されるジョン・ウッゾン(Jorn Utzon)が設計した「キンゴー・テラスハウス」と呼ばれる63戸からなる平屋の住居群だ。ウッゾンはシドニーのオペラハウスなど数多くの建物を設計。1956年にヘルシンオアのこの地にまず自費で一戸の家を建て、それが成功したのでコミュニティとしての全体像を描き、設計して現在のような住居群が誕生した。ウッゾンは2008年に90歳で亡くなっている。
 テラスハウスは池のある起伏に富んだ土地に南向きに配置されていて、各戸100㎡で3つのベッドルームがある。住居部分はコの字型でプライベートの庭を囲むように設計されているが、庭先から共有のスペース(池や木々、丘)につながっていて、その風景を借景として取り込んだ魅力的な住まいだ。その後の集合住宅のあり方や設計に影響を与えたそう。 


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ベンチのある庭

ラベンダーのブログ ラベンダーのブログ 公共の庭園

ラベンダーのブログ 住民が食事をしたり、語り合うテーブル

この住居の特徴は屋根の傾斜によって夏は日差しを遮り、冬は陽光を十分に取り込める点だ。道路に面した玄関部分は小さな窓があるだけで騒音や光を遮断しているが、庭に面している開放的な南側からふんだんに採光できるし、自然の風を取り込むことができる。環境にやさしく、機能性に富んでいるが、建設費をできるだけ低く押さえてあるので、「ローンを組んで返済するのがそれほど大変ではなかった」と家に招き入れてくれた住人。

彼は結婚と同時に家を探したが、ここを見に来てすぐに気に入り、翌日の夕方には購入契約のサインをした。
「ここに44年住んでいるが、この家の設計やデザインに愛着があり、これらを守りたいとは思うが、変えようとは考えない」
 プライベートと開放は相反する言葉だが、この集合住宅はプライベートを守りながら開放的に近隣住人とつながり、交流することができる。住人は「皆で集まって戸外でランチやディナーを食べるが、こんな付き合いがとても大切」と言う。建築家ウッゾンの意図や狙いは見事に実現されているわけだ。
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照明や椅子はもちろんデンマークデザイン
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キッチン            書斎

室内はシンプルなインテリアで統一され、清潔に整えられ、庭も手入が行き届いている。家に労力やお金をかけるデンマーク人の見本のような家だ。住人は「強いて欠点を探せば、小さくて天井が低いところ」と微笑んだが、その欠点さえデザインの特徴のひとつで、建築費を安価にするための工夫といえる。


ラベンダーのブログ  ラベンダーのブログ 部屋から庭を望む

背の高いヒカルは屋根の軒先くらい。

確かに屋根は低めだ。北側の屋根は

南側より高めに設計されている


私たちが見学させてくれたお礼を言って辞去するとき、住人は「この家は私の誇りだからお見せしたのです」と胸をはった。
 ここに案内してくれた教師クリストフもこの集合住宅というかコミュニティを気に入っていて「こんな家で老後を過ごし、死を迎えられたらいいなあ」と言っていたが、ここにはささやかながら豊かな暮らしがあるからだろう。 

ラベンダーのブログ 道路に面した玄関側は窓も小さく閉じた感じ




2010年6月24日(木)

 

 留学が終わったらオランダ、ベルギーを旅して帰国するので、手荷物をできるだけ軽くしたい。本やノート、お土産などはダンボール箱に梱包して送ることにした。冬のコートやウールのパンツ、スーツはサダ子さん(元IPCの教師と結婚している日本女性)がバザーなどに出してくれるというので、いつでも渡せるように袋に入れる。

 あらかじめエコノミー航空(SAL)便で送れるサイズを郵便局で確かめ、そのサイズのダンボール箱を近くのスーパーでもらって荷造りをする。ガムテープは隣室のミサオが貸してくれた。

 問題は郵送にかかる費用。手持ちのデンマーク・クローネはほとんど残っていない。そこで、午前中に銀行へ行き、VISAで300DKKを引き出し、ついでに手持ちの200ノルウエー貨幣をデンマークのそれに換金してもらえるかを尋ねると、ここではできないけど、FOREX(換金所)ではやってもらえるとのこと。結果として118DKKにしかならなかったが、荷物の郵送料の足しにはなるだろう。
 荷物を郵便局に運ぶのにタクシーを頼むしかないかなと思っていると、ミサオがロシア人のボリスの車で運んでもらうので一緒にどうぞと声をかけてくれた。ありがたい! 車内はミサオなど3人+荷物でいっぱいだが、なんとか1人分の座席はあったので、私も荷物を膝にのせて座らせてもらう。ミサオのこうした気づかい、やさしさがうれしい。

 荷物は約7.8キロで郵送料537DKK。財布の中身をかき集めて支払う。お金が足りてほっとする。というのも、現金のみでVISAは受け付けてくれないと聞いていたからだ。 

大半の荷物を運び出した部屋にはスーツケースとリュックがぽつねんと置かれているだけ。海から飛んでくる鳥を眺めた窓、白い壁に貼った和紙の「一期一会」の文字。ここで過ごした日々が無性に懐かしい。さまざまな出来事が走馬灯のように甦る。
 私は若い留学生たちと「一生に一度の出会い」と思って心を開いて付き合っただろうか。「そうよ」と胸を張れない部分もあり、少し胸が痛む。年齢の差を理由にまともに向き合うことを避けたこともあったからだ。

 
ラベンダーのブログ 窓から眺めた吹雪の校庭。こんな日もあったのだ

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ローランドの部

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英語の先生サーシャと

IPCには先週から70歳以上のお年寄りのグループが宿泊して散歩や日光浴、読書と思い思いに過ごしている。なかには足が悪く杖をついてゆっくりと歩く人もいるが、みんなと同じように楽しんでいる。キッチンのスタッフも彼らには気を使っていて、ブランチ以外の朝食はチーズとパンだけの簡素なものだが、彼らには果物やハム、夕食にはワインが提供されている。

 老後を仲の良いグループでこんなふうに一箇所に滞在してのんびり過ごすのもすてきだ。宿泊費や食費などが有料だとしても、とても安いに違いない。

 ミサや私を家に招いてくれたり、海に停泊しているヨットの上でコーヒーをご馳走してくれたニルスやウラ(60歳代の夫婦)はまだ働いているが、年に数回は長期休暇をとって国内外の旅に出るそう。こんな暮らし方こそが、さつきさんが言っていた「質の高い生活」なのだろう。「質が高い」とは経済的に恵まれているということだけを指すのではない。社会福祉が整備されたこの国では、欲を出せばきりがないが、少なくともある一定の水準で老後の生活が保障されるから、豊かに生きる自分流のプランを構築できる。心が豊かで日々の生活を楽しんでいれば、他の人を思いやり、親切にするゆとりも生まれる。心のゆとりが「生活の質」を示す基準の1つといえないだろうか。さつきさんは「この国の社会福祉は年収でいえば平均かそれ以下の人たちが、もっとも恩恵を受けているのよ」とも言っていた。老後の不安がなく、心豊かに暮らせる人たちが多いことが、デンマークが世界一幸福な国といわれるゆえんなのかもしれない。




 

2010年6月22日(火) 


水車小屋(地上と地下)

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水車から空気を送る炉

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 デンマークには森や湖が多いが、カレッジの近くにも美しい湖と水車小屋がある。その水車小屋にはカフェが隣接していて週末は親子連れなどで賑わっている。薫り高いコーヒーやアイスクリームが人気だ。
 私の大好きな科目「デンマーク・ライン」の最後の授業では、その水車小屋を訪ねることになった。自転車に乗るのは久しぶり。私の背丈に合った自転車をゲットできてホットする。実は自転車が2台、鍵に至っては7個も紛失して(犯人は名乗り出ない)しばらく自転車の使用が禁止されていたのだ。

水車小屋に到着すると、担当教師のクリストフは水車小屋の管理人らしき老人としばらく談笑していたが、彼と一緒に小屋への階段を下りて行ったので、私たちもおっかなびっくり薄暗い小屋の中へ。目を凝らすと炉があり銃器らしきものがたて掛けてあり、ここが鍛冶の仕事場だったことを物語っていた。

17世紀、この水車小屋では銃が造られていた。炉で鉄を溶かし、叩いたり、折り曲げたりして銃身を造るが、水車の動力によって炉の中に大量の空気を送り込めば、炉内を高温に保てるのだ。そのため、製鉄にも水車が利用された。

カストレット要塞、証券取引所やローセンボー宮殿などを建築したクリスチャン4世(1577~1648)がこの水車小屋で銃を大量に造らせて、それらをアフリカのガーナへ運び、戻るときにはアフリカ人を奴隷として連れてきて、この辺りで働かせていた。だから、この辺りは歴史的にも重要な場所なのだとクリストフ。鳥がさえずる森や水鳥が泳ぐ湖、今も規則正しく回り続ける水車、こんな平和な場所にそんな歴史があったなんて、襟を正して周りを見渡した。


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水車小屋に隣接のカフェ(上)
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帰りは海沿いに自転車を走らせる。プライベート海岸には高級住宅が並ぶ。そのなかにはヤコブセン設計の家も。この国の海はいつ見ても美しい!
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