私の人生で一番忘れられない恋は中学校一年生のときのことだ。
彼とは小学校から一緒だがクラスが一緒になったことは無かった。
中一のクラス決めで初めて一緒になった。
初めて目が合った時から特別な気がしていた。
アイツとやたら目が合うなということは、最初の二日目には気付いていた。
出席番号、アイツは男子の一番始め、私は女子の一番終わり。
当然席はクラス内の対角で、一番離れていた。
彼は他の不良とは一線を画していて、グループでつるむような事はめったに無く、いつも自分の世界観を持っていた気がする。
下げパンとか眉毛をちょっと剃ってみるとか授業中に消しゴムのカスを投げ合う程度の事ならまだ可愛いもの、先生に対し口答えはするわ椅子は蹴飛ばすわで、大人が手に負えない類の奴だった。またどんな大人の汚い脅しにも屈しなかった。
勉強をしないので成績は悪かった。
そんな訳でクラスの女子も怖がって、彼と話そうとはしなかった。
そしてヤツはイケメンだった笑。
色素が薄く、肌は白く、髪の毛はほんのり茶色で、口角の大きな口から歯を覗かしていつもニヤニヤしていた。
数学の時間、横着な態度をとった彼の胸ぐらをつかんだ先生が、ニヤニヤする彼の顔をじっくり見て、『お前、カッコいいな』と言ったことがあったほどだ。
そんな彼は私にいつもちょっかいを出しに来た。
私はもちろんそんな彼の事が好きでたまらない
女子の中では自分だけアイツと仲が良いことがこの上ない至福だったが、いつも素っ気ない態度をとるか、汚い言葉で罵ったりして照れくさい気持ちを悟られないようにしていた。
これは他人には理解し難いだろうが、家庭環境により思春期の健全な成長を妨げられていた私は、人前で誰々が好き、まして誰々と付き合う何てことが堂々とできない体質であった。
クラス内で噂になることなどを異常なまでに避けたがっていた。
ましてまだ中学生だ。学校内の噂がおもしろおかしく保護者等の間で爆発的に広まることは避けられない。男子と付き合っていることが、思春期の健全な成長を妨げた本人である自分の親や兄弟の耳にはいって自分が“そーゆう目”で見られて面白珍しがられることが一番不名誉で、あってはならないことだった。
それでも当時の私は彼の顔を見るためだけに学校に行っているようなもんだった。アイツが休んだ日なんか、一日が長く無意味な物でしかなかった。
昨日 カラめなかった不満を湛えながら次の日こそはと学校にいくと、また休んでる、なんてことが学年の後半になるにつれて珍しくなかった。
表では素っ気ないフリ、そして汚い言葉で誤摩化してばかりだが、
今日はこの場面でアイツとeyeコンタクトした、あんなことして触れ合った、そして夢に出てこようもんなら、その夢を覚えているあいだ何時間でも幸せに浸っていたかった。
アイツが私にしてくれる事は、明らかに他の女子にはしないことで、お互いが意識し合っていることはだいたい暗黙のうちに分かっていた。
だけど一線を越えないこの関係が、もどかしくも今は最大の幸福で、逆にそれ以上になった場合のことが自分には分からなかったし、なぜか避けたいことだった。いつまでもこの最大幸福が続くことは疑わなかった。
私を見つけるとほぼ例外無くちょっかいを出して来た。
私は私で、彼を見つけると一番敏感に反応しながらも周りには気付かないフリをし、彼が近づいて来たところでやっと関わるような感じだった。あくまで私からじゃなく、彼が私を好きなんですよ、と周りにアピールする意図があったのだろう。
アイツの無邪気な笑顔とふざけた行動
特に授業中とかの、すこし制約があるシチュエーションでお互いが絡む時が一番、気持ちが浮き立つ時だった。放課後や人気のない教室などで、1対1で話しかけられた時など素直に会話が出来ず、彼の前から不自然に逃げていたような私にとっては、授業中やイベントの場などは、そこに留まっていても不自然でない、一番不利益を被らない心地のいい場面だったのだろう。
私の目の前でバク転をして見せてくれたりした。
体育祭のダンス、わざわざ場所を交代してまで私と手を繋ぎにきた。
自分からいかなくても、待っていればいつも来てくれた。
あっちから来てくれることが分かっている。何度も繰り返すが本当に幸せだった。
この『幸せだった』は、今思えばそう感じるということであって、当時の自分はそれを素直に感じることができなかったかもしれない。
まだ中一なのに、アイツはやけにいい体をしていた。
入学してすぐの最初の実力テストは50番以内で本当は俺は頭がいいんだぞ、いつの日かそんなことも話してくれた。
秋頃に一度席替えで隣になったが、例の如く私はとにかく周りから『あの二人が…』とか噂されるのを避けたくて、横で楽しそうにしているヤツを見ようともせず、その日は喋ることなくいそいそと帰ったりした。けど本当は、これから少なくとも一ヶ月はアイツをそばにおいておけるのだと思うとタンポポ畑が目の前にブワーな気分だったのだ。
脇毛やすね毛を剃ったり、アイツはバカなことばっかりやっていた。毛を伸ばしたかったそうだ。
剃り込みを入れて来た事もあった。
そんな感じで先生に目を付けられない訳が無く、事ある毎に彼はしつこく学校から呼び出され、次第に学校を休む回数が増えていった。ただ学校がダルかったのだろう。
12月か1月頃の、道徳の授業中だった。
他の生徒たちが教卓の方で先生と何やかんや結構騒がしくやっていて
そんな時アイツがいつものように、私の横の席に座ってきた。
すごく照れくさいけど、私は汚い言葉で紛らわしながら、会話していた。
こんな自分がホントは嫌だ。肌も汚いからそんなに近くで見ないで欲しい。
素っ気なく振るまいつつも私は目を合わす事も一瞬しかできない。
あぁ、幸せだった。この時は、二人話しながらすごく心地が良かった。午後の日差しだったか、オレンジ色の日だまりに包み込まれているようだった…(´▽`)
『俺たち付き合うか?』 アイツがふいに言った。
本当に時が止まったようだった。
夢以上に、そして漫画の主人公になったかのような錯覚に一瞬なった。
これってつまり好きな人から『好き』って言われてるのだ。
中学生にとってこれ以上の至福は他に想像出来ない。
だけどこれは今まで何となく避けていた事態だった
『ハァ、死ねぇ~』
そう咄嗟に言ってしまったあの時の自分なんかもう思い出したくも無い。
彼の素直な告白に対して、あの一瞬に発した自らの言葉が、その後の人生を十数年にもわたって私を苦しめ続けることになっている。
それからというもの私は彼と話す事ができなくなってしまった。
同時に彼を避けるようになった。
『好き』という気持ちを伝えてしまった人間同士がその後どう接していいのか分からなかった。
私は本当に卑怯だった。
その出来事から2、3日後、アイツは私と同じバレー部で人気目の女友達Mと付き合い始めた。
その女友達は前々からよくクラスに来ては、アイツとよくからんでいた私に『◯◯君かっこいいねー』とか『◯◯君と仲良くていいなー』とか話していた子で、アイツと付き合うことになった時も、とても嬉しそうにいち早く私に教えてくれたのだ。
私は今思えばバカだけど、付き合いたてのその女友達Mに、数日前 私と彼の間にあった出来事を軽いノリで話した。
その時は自分の気持ちさえも整理できてなくてただ何となく話してしまったのだろう。バカだ。
悔しかったからとかじゃない、むしろ学校や保護者の噂にされるくらいならこうなって良かった、と思っていたくらいだ。
だけど私とアイツとの特別だった距離が離れてしまったことが今でも信じられず
この全く種類の異なる感情が自分でも飲み込めずに、そしてだれを攻める事もできずただ時間だけが過ぎていったように思う。
その付き合い始めた二人はコソコソするようなことはせず、学校内で堂々と付き合っていた。
隠れて付き合うようなことはしたくない、とアイツが言ったそうだ。
何だか住んでる世界が一気に変わってしまったように思えた。
アニメ映画『時をかける少女』を数年前にたまたまロードショウで見たときは愕然とした。まるで私の実体験をそのまま映画にしたかのような台詞と主人公の行動だった。笑
それまでアホばっかやっていた友達同士だったはずのチアキに『付き合おう』と言われた主人公が、あまりの気まずさからその場を避け、その後学内でも避け続け、さらにそれまで元々チアキに対し好意を抱いていた主人公の仲の良い女友達がチアキと付き合い始めるという流れだ。そして主人公は、自分の気持ちを素直に見つめなかったこと、ひねくれた行動をとってしまったことを死ぬほど後悔するのだ。
登場人物チアキのチャラい雰囲気や話し振りもまさにアイツそのものに見えた。
私はテレビの画面を震えながら見つめていた。笑
アイツが女友達Mと付き合い始め、私は、表では興味ないように振る舞いながらもお願いだからキスなんてせんでいて欲しい、アイツはまだ、心の中では自分の事を好きでいてくれているハズだ、とか図々しくも思うことで日々を乗り切っていった。
この出来事以降、クラス内でのアイツの私への様子は大して変わることはなかったが、当の私は余計に避けるようになっていた。なんでこうなるのか、自分で自分が大嫌いだ。アイツのちょっかいを完全に無視するようになっていた。その無視のしようは、クラスメイトや担任の先生までもが不審の念を抱くほどだった。
だけど納得いかないのだ、何が納得いかないかも分からないが、すべてが腑に落ちない。じゃぁどうなればいいんだ!!
私はアイツがなお私にしつこく言い寄ってくれるようなことを期待していたのか。私という人間は本当に卑怯だ。
無視されつづけて段々彼も、私に関わらないようになっていった。
そのうち2月にもなる。
バレンタイン、当時習ったばかりの英語で作れる精一杯の英文だった『I still love you』
と箱の隅に見えるか見えないか位にちいさく書いて、キャンディ形のチョコレートを6個入れた。
そしてあろうことかその女友達Mに託した。
『ごめんねー、ホントこれ渡してもらえるだけでいいからさー。あっ、(私からって事、絶対、聞かれても絶対言わんでいいからねーーマジで絶対言わんでよ!!うん、絶対ね!』ってひどく気を遣って、自分なにしてんやろーと思いながらも、これでよかった。
あの時の自分の心持ちを思うと、可哀想だけど、切ないけれど自分の気を済ませる目一杯の方法だったのかもしれない。あの頃の自分はどうしようもなかった
そして心の底にはやはり...
『私からってこと』を言わないようにと念には念を押したが、あわよくば、本当はやっぱり言って欲しかったのだ。そして彼の気持ちを繋いでおきたかったのだ。
私のやり方は本当にひきょうだった。
だけど悲しいことにその後は何も起こらず、彼とも最後まで話すことなく2年、3年ともクラスは別になった。
『そういえば1年のころさぁ、階段下で男子が話しているのが聞こえたんだけどさ…』と
それは中学3年の頃、靴箱の掃除中に友達Fが話を切り出した。
アイツを含む不良グループの男子が何人か集まって話しているところで、友達Fはたまたま話を聞いていたそうだ。
中学1年の秋頃だったそうだ。
勉強が出来た私よりよっぽど彼は大人だった。
『誰も貰わんなら◯◯(私の名前)は俺が貰うぜ』なんて歯の浮くようなセリフ、彼は恥ずかしげもなく堂々と言って退けるのだ。
ダイレクトなアイツの言葉を知って、その時、いまさら泣きたくなった。
私ももう二十歳を過ぎて早4年目、論文に実験に就活にとやる事がたくさんあるはずなのに、こんなのを書いている。
私は最近、superflyの『春のまぼろし』という曲を聴いて、真っ昼間の研究室で涙が吹き出した。
歌詞を引用させてもらうが、散り行く恋の運命(さだめ)と知っていたらホント願わくば死ぬほど愛し合いたかった。
二人のこれからを二人で一緒に、真剣に探りたかった
消えない明日がいつまでも繰り返す事を信じて疑わなかった私は、
今思えばあの幸福の日々は幻にさえ思える
本当に身も心も捧げたような恋だった
あの時の自分が、周りを気にせずもっと素直だったらと、この十数年、何度後悔しただろう。
後悔すればするほどもどかしく、そのうち年と共に鮮明だったはずの記憶も段々と薄れ、虚しさだけが募ったままだ。
靴箱前の渡り廊下や、砂埃舞う道、部活帰りの薄暗い道
明るい教室とアイツの白い肌、踏み倒したシューズ
五感に入るアイツの全てが特別な瞬間を作っていた
唯一残る疑問、なんで あんな私の事を好きでいてくれたんだろう
彼とは小学校から一緒だがクラスが一緒になったことは無かった。
中一のクラス決めで初めて一緒になった。
初めて目が合った時から特別な気がしていた。
アイツとやたら目が合うなということは、最初の二日目には気付いていた。
出席番号、アイツは男子の一番始め、私は女子の一番終わり。
当然席はクラス内の対角で、一番離れていた。
彼は他の不良とは一線を画していて、グループでつるむような事はめったに無く、いつも自分の世界観を持っていた気がする。
下げパンとか眉毛をちょっと剃ってみるとか授業中に消しゴムのカスを投げ合う程度の事ならまだ可愛いもの、先生に対し口答えはするわ椅子は蹴飛ばすわで、大人が手に負えない類の奴だった。またどんな大人の汚い脅しにも屈しなかった。
勉強をしないので成績は悪かった。
そんな訳でクラスの女子も怖がって、彼と話そうとはしなかった。
そしてヤツはイケメンだった笑。
色素が薄く、肌は白く、髪の毛はほんのり茶色で、口角の大きな口から歯を覗かしていつもニヤニヤしていた。
数学の時間、横着な態度をとった彼の胸ぐらをつかんだ先生が、ニヤニヤする彼の顔をじっくり見て、『お前、カッコいいな』と言ったことがあったほどだ。
そんな彼は私にいつもちょっかいを出しに来た。
私はもちろんそんな彼の事が好きでたまらない
女子の中では自分だけアイツと仲が良いことがこの上ない至福だったが、いつも素っ気ない態度をとるか、汚い言葉で罵ったりして照れくさい気持ちを悟られないようにしていた。
これは他人には理解し難いだろうが、家庭環境により思春期の健全な成長を妨げられていた私は、人前で誰々が好き、まして誰々と付き合う何てことが堂々とできない体質であった。
クラス内で噂になることなどを異常なまでに避けたがっていた。
ましてまだ中学生だ。学校内の噂がおもしろおかしく保護者等の間で爆発的に広まることは避けられない。男子と付き合っていることが、思春期の健全な成長を妨げた本人である自分の親や兄弟の耳にはいって自分が“そーゆう目”で見られて面白珍しがられることが一番不名誉で、あってはならないことだった。
それでも当時の私は彼の顔を見るためだけに学校に行っているようなもんだった。アイツが休んだ日なんか、一日が長く無意味な物でしかなかった。
昨日 カラめなかった不満を湛えながら次の日こそはと学校にいくと、また休んでる、なんてことが学年の後半になるにつれて珍しくなかった。
表では素っ気ないフリ、そして汚い言葉で誤摩化してばかりだが、
今日はこの場面でアイツとeyeコンタクトした、あんなことして触れ合った、そして夢に出てこようもんなら、その夢を覚えているあいだ何時間でも幸せに浸っていたかった。
アイツが私にしてくれる事は、明らかに他の女子にはしないことで、お互いが意識し合っていることはだいたい暗黙のうちに分かっていた。
だけど一線を越えないこの関係が、もどかしくも今は最大の幸福で、逆にそれ以上になった場合のことが自分には分からなかったし、なぜか避けたいことだった。いつまでもこの最大幸福が続くことは疑わなかった。
私を見つけるとほぼ例外無くちょっかいを出して来た。
私は私で、彼を見つけると一番敏感に反応しながらも周りには気付かないフリをし、彼が近づいて来たところでやっと関わるような感じだった。あくまで私からじゃなく、彼が私を好きなんですよ、と周りにアピールする意図があったのだろう。
アイツの無邪気な笑顔とふざけた行動
特に授業中とかの、すこし制約があるシチュエーションでお互いが絡む時が一番、気持ちが浮き立つ時だった。放課後や人気のない教室などで、1対1で話しかけられた時など素直に会話が出来ず、彼の前から不自然に逃げていたような私にとっては、授業中やイベントの場などは、そこに留まっていても不自然でない、一番不利益を被らない心地のいい場面だったのだろう。
私の目の前でバク転をして見せてくれたりした。
体育祭のダンス、わざわざ場所を交代してまで私と手を繋ぎにきた。
自分からいかなくても、待っていればいつも来てくれた。
あっちから来てくれることが分かっている。何度も繰り返すが本当に幸せだった。
この『幸せだった』は、今思えばそう感じるということであって、当時の自分はそれを素直に感じることができなかったかもしれない。
まだ中一なのに、アイツはやけにいい体をしていた。
入学してすぐの最初の実力テストは50番以内で本当は俺は頭がいいんだぞ、いつの日かそんなことも話してくれた。
秋頃に一度席替えで隣になったが、例の如く私はとにかく周りから『あの二人が…』とか噂されるのを避けたくて、横で楽しそうにしているヤツを見ようともせず、その日は喋ることなくいそいそと帰ったりした。けど本当は、これから少なくとも一ヶ月はアイツをそばにおいておけるのだと思うとタンポポ畑が目の前にブワーな気分だったのだ。
脇毛やすね毛を剃ったり、アイツはバカなことばっかりやっていた。毛を伸ばしたかったそうだ。
剃り込みを入れて来た事もあった。
そんな感じで先生に目を付けられない訳が無く、事ある毎に彼はしつこく学校から呼び出され、次第に学校を休む回数が増えていった。ただ学校がダルかったのだろう。
12月か1月頃の、道徳の授業中だった。
他の生徒たちが教卓の方で先生と何やかんや結構騒がしくやっていて
そんな時アイツがいつものように、私の横の席に座ってきた。
すごく照れくさいけど、私は汚い言葉で紛らわしながら、会話していた。
こんな自分がホントは嫌だ。肌も汚いからそんなに近くで見ないで欲しい。
素っ気なく振るまいつつも私は目を合わす事も一瞬しかできない。
あぁ、幸せだった。この時は、二人話しながらすごく心地が良かった。午後の日差しだったか、オレンジ色の日だまりに包み込まれているようだった…(´▽`)
『俺たち付き合うか?』 アイツがふいに言った。
本当に時が止まったようだった。
夢以上に、そして漫画の主人公になったかのような錯覚に一瞬なった。
これってつまり好きな人から『好き』って言われてるのだ。
中学生にとってこれ以上の至福は他に想像出来ない。
だけどこれは今まで何となく避けていた事態だった
『ハァ、死ねぇ~』
そう咄嗟に言ってしまったあの時の自分なんかもう思い出したくも無い。
彼の素直な告白に対して、あの一瞬に発した自らの言葉が、その後の人生を十数年にもわたって私を苦しめ続けることになっている。
それからというもの私は彼と話す事ができなくなってしまった。
同時に彼を避けるようになった。
『好き』という気持ちを伝えてしまった人間同士がその後どう接していいのか分からなかった。
私は本当に卑怯だった。
その出来事から2、3日後、アイツは私と同じバレー部で人気目の女友達Mと付き合い始めた。
その女友達は前々からよくクラスに来ては、アイツとよくからんでいた私に『◯◯君かっこいいねー』とか『◯◯君と仲良くていいなー』とか話していた子で、アイツと付き合うことになった時も、とても嬉しそうにいち早く私に教えてくれたのだ。
私は今思えばバカだけど、付き合いたてのその女友達Mに、数日前 私と彼の間にあった出来事を軽いノリで話した。
その時は自分の気持ちさえも整理できてなくてただ何となく話してしまったのだろう。バカだ。
悔しかったからとかじゃない、むしろ学校や保護者の噂にされるくらいならこうなって良かった、と思っていたくらいだ。
だけど私とアイツとの特別だった距離が離れてしまったことが今でも信じられず
この全く種類の異なる感情が自分でも飲み込めずに、そしてだれを攻める事もできずただ時間だけが過ぎていったように思う。
その付き合い始めた二人はコソコソするようなことはせず、学校内で堂々と付き合っていた。
隠れて付き合うようなことはしたくない、とアイツが言ったそうだ。
何だか住んでる世界が一気に変わってしまったように思えた。
アニメ映画『時をかける少女』を数年前にたまたまロードショウで見たときは愕然とした。まるで私の実体験をそのまま映画にしたかのような台詞と主人公の行動だった。笑
それまでアホばっかやっていた友達同士だったはずのチアキに『付き合おう』と言われた主人公が、あまりの気まずさからその場を避け、その後学内でも避け続け、さらにそれまで元々チアキに対し好意を抱いていた主人公の仲の良い女友達がチアキと付き合い始めるという流れだ。そして主人公は、自分の気持ちを素直に見つめなかったこと、ひねくれた行動をとってしまったことを死ぬほど後悔するのだ。
登場人物チアキのチャラい雰囲気や話し振りもまさにアイツそのものに見えた。
私はテレビの画面を震えながら見つめていた。笑
アイツが女友達Mと付き合い始め、私は、表では興味ないように振る舞いながらもお願いだからキスなんてせんでいて欲しい、アイツはまだ、心の中では自分の事を好きでいてくれているハズだ、とか図々しくも思うことで日々を乗り切っていった。
この出来事以降、クラス内でのアイツの私への様子は大して変わることはなかったが、当の私は余計に避けるようになっていた。なんでこうなるのか、自分で自分が大嫌いだ。アイツのちょっかいを完全に無視するようになっていた。その無視のしようは、クラスメイトや担任の先生までもが不審の念を抱くほどだった。
だけど納得いかないのだ、何が納得いかないかも分からないが、すべてが腑に落ちない。じゃぁどうなればいいんだ!!
私はアイツがなお私にしつこく言い寄ってくれるようなことを期待していたのか。私という人間は本当に卑怯だ。
無視されつづけて段々彼も、私に関わらないようになっていった。
そのうち2月にもなる。
バレンタイン、当時習ったばかりの英語で作れる精一杯の英文だった『I still love you』
と箱の隅に見えるか見えないか位にちいさく書いて、キャンディ形のチョコレートを6個入れた。
そしてあろうことかその女友達Mに託した。
『ごめんねー、ホントこれ渡してもらえるだけでいいからさー。あっ、(私からって事、絶対、聞かれても絶対言わんでいいからねーーマジで絶対言わんでよ!!うん、絶対ね!』ってひどく気を遣って、自分なにしてんやろーと思いながらも、これでよかった。
あの時の自分の心持ちを思うと、可哀想だけど、切ないけれど自分の気を済ませる目一杯の方法だったのかもしれない。あの頃の自分はどうしようもなかった
そして心の底にはやはり...
『私からってこと』を言わないようにと念には念を押したが、あわよくば、本当はやっぱり言って欲しかったのだ。そして彼の気持ちを繋いでおきたかったのだ。
私のやり方は本当にひきょうだった。
だけど悲しいことにその後は何も起こらず、彼とも最後まで話すことなく2年、3年ともクラスは別になった。
『そういえば1年のころさぁ、階段下で男子が話しているのが聞こえたんだけどさ…』と
それは中学3年の頃、靴箱の掃除中に友達Fが話を切り出した。
アイツを含む不良グループの男子が何人か集まって話しているところで、友達Fはたまたま話を聞いていたそうだ。
中学1年の秋頃だったそうだ。
勉強が出来た私よりよっぽど彼は大人だった。
『誰も貰わんなら◯◯(私の名前)は俺が貰うぜ』なんて歯の浮くようなセリフ、彼は恥ずかしげもなく堂々と言って退けるのだ。
ダイレクトなアイツの言葉を知って、その時、いまさら泣きたくなった。
私ももう二十歳を過ぎて早4年目、論文に実験に就活にとやる事がたくさんあるはずなのに、こんなのを書いている。
私は最近、superflyの『春のまぼろし』という曲を聴いて、真っ昼間の研究室で涙が吹き出した。
歌詞を引用させてもらうが、散り行く恋の運命(さだめ)と知っていたらホント願わくば死ぬほど愛し合いたかった。
二人のこれからを二人で一緒に、真剣に探りたかった
消えない明日がいつまでも繰り返す事を信じて疑わなかった私は、
今思えばあの幸福の日々は幻にさえ思える
本当に身も心も捧げたような恋だった
あの時の自分が、周りを気にせずもっと素直だったらと、この十数年、何度後悔しただろう。
後悔すればするほどもどかしく、そのうち年と共に鮮明だったはずの記憶も段々と薄れ、虚しさだけが募ったままだ。
靴箱前の渡り廊下や、砂埃舞う道、部活帰りの薄暗い道
明るい教室とアイツの白い肌、踏み倒したシューズ
五感に入るアイツの全てが特別な瞬間を作っていた
唯一残る疑問、なんで あんな私の事を好きでいてくれたんだろう