まずは、東京→リオデジャネイロの37時間の道程から、レポートします。
こんな長旅、なかなかない!
初めてのブラジル行きは、まるで子供の「初めてのおつかい」状態だった。
夫は先に現地に行っているため一人でのフライト、しかも飛行機を乗り継ぎ丸1日以上という長丁場、言葉の通じない国での入国審査、・・・考えると、何日も前から落ち着かなかった。
成田発は、日本時間7月25日午後7時20分。
海外に慣れた夫の「出発の3時間以上前には空港に着いていること」という決まりに習い、午後3時半には成田に到着。
カウンターで荷物を預けた。洋服よりも、お世話になる方へのお土産や、現地では調達できない優秀な日本の日用品でパンパンになった特大&大のスーツケース2個の重さは、合計なんと57kg!
ブラジル行きの預け荷物は、個数制限はあるものの(航空会社により2個~4個)、重さ制限はないのだ。
ただ、この57kg分を抱えて自宅から空港まで電車を乗り継ぎ移動する大変さと言ったら…!歯を食いしばりながら手伝ってくれた母と叔母には、向こう5年は頭が上がらないと思う。

↑黒が今回のために購入した最大サイズ。
まず、JAL航空で成田からNYのJFK空港まで12時間45分のフライト。
座席は、幸運にも一番前の席。前の壁まで1.5mほどもある。
床に直接寝たいぐらいだ。
後ろの座席では、私の2倍はあろうという大柄な外国人ビジネスマンの方々が狭そうに座っていたのに、申し訳ないくらいだった。
CAさんの日本語での対応がやけに心強くて、長時間のフライトもあっという間だった。
そして、最初の到着地NYのJFK空港に着陸。
実は今回の旅程で一番の心配は、ここでのトランジットだった。
たった2時間のうちに、
①アメリカの入国審査を終え、
②スーツケースを引き取り、
③ターミナルを移動して今度はアメリカン航空のカウンターでチェックインしスーツケースを預けて、
④サンパウロ行きの便の搭乗ゲートまで行かなくてはいけないのだ。
案内標識も分かりにくく迷路のような空港の中で迷う可能性も高い。
乗っていた飛行機が遅れるなど、予定通りにいかないことが当たり前の海外の空港では、2時間はギリギリだ。
(夫からも、「絶対に失敗のないように」とさんざん釘をさされていた。)
万が一間に合わなければ、何のあてもないNYに取り残されることになる。
そうなったら、私は映画『ターミナル』のトムハンクスのように空港で暮らすことになるのか…?などと本気で考えてしまうほど、頭と心臓の高鳴りが抑えられなかった。
案の定、乗っていた飛行機の到着は30分ほど遅れた。
焦った。
出口のドアが開くとすぐに、これまた重い手荷物2つ(1つは空港で買い込んだ日本語の雑誌が7冊も入った紙袋、もう1つはパソコンなどを詰め込みすぎて先ほど持ち手がちぎれたボストンバッグ)を両手で抱えて、全力で走った。
入国審査もジリジリしながら並んだ。ようやく自分の番になって手続きを待っていると、担当官はのんびり作業しながら声に出して大あくびを1つした。…まあ、いい。
次は、預けた荷物を引き取りに、ベルトコンベアーの前に走った。
「この手荷物に、あのスーツケースが2つ加わるのか。…どうやって運ぼう?」と弱気になった時だった。
後ろから、空港の係員らしい年配の男性が大きなカートを転がしながら「Ms!」と声を掛けてきた。
振り返ると、そのカートに手荷物を乗せろという。親切すぎると一旦は疑ったが、ネームタグをつけているし、ちゃんとした空港のポーターのようだからと安心して、手荷物をカートに乗せた。
私のスーツケースはすぐに出てきた。すると彼は2つともカートに軽々と乗せ、「サンパウロ行きのアメリカン航空に乗り継ぐ」と言った私を誘導し始めた。
途中で「もうここでいい」と言ったが、彼はそれを無視してカートから手を離さなかった。この時点で「やられた…」と思い、覚悟した。
「これは親切なんかじゃない」
そしてそのままアメリカン航空のチェックインカウンターに着いたところで、5ドルを請求されたのだ。
ただでさえドキドキしていた心臓がさらに早くなり、パニック状態の頭を必死に落ち着かせながら、「これだけで5ドル!?ものの5分で?時給にしたら1ドルでも充分のはず。しかもチップは1ドルが相場では?よし、迷ったらつけ込まれるから、断固、渡すのは1ドルだけだ。」と勝手に見積もった。
そして1ドル札を1枚だけ渡して「これしかない」と突っぱね、横で大声で悪態をつく彼を無視してチェックインを済ませて、その場から急いで立ち去った。
ものすごく後味が悪かった。一瞬の気の緩みだったが、海外ではサービスがタダではないということを忘れていた。
ただ、後で冷静になると、彼のおかげであっという間に乗り継ぎのチェックインまで完了して結果的に大助かりだった訳だし、1ドルに決めつけなくても、今回は3ドルくらい払った方がこちらの気持ちももっと良かったかもしれない…、とも思ったりしたが。
結局、アメリカン航空のチェックインカウンターの方が、チップの金額で大騒ぎするポーターにも動ずることなく、それはそれは分かりやすい英語で経路を教えてくれたため、全く迷うことなく搭乗ゲートに着いた。
出発時刻の夜9時30分より30分以上前に!
「間に合った。あとはここで待つだけ。」とほっとしたのもつかの間、今度は搭乗ゲートのカウンターがにわかに騒がしくなった。
係の人たちが慌ただしく動き回り、乗客の何人かがカウンターに詰め寄っていた。
「どうしたんだろう。まさか、飛行機が飛ばない…?悪天候?スト?ここまで来て足止めなんて…」
<次回 東京→リオの37時間 Vol.2へつづく>