クロ現+に乗っかってみた。あとで補足するかも。
 
東京地裁平成28年7月7日判決(平成27年(ワ)第33606号)D1-Law判例体系収録
 
<事案>
 芸能マネジメント会社である原告X1社は、平成25年9月1日、被告Y1(当時、小学校5年生の11歳)との間で、Y1がX1社の専属タレントとなる所属契約(期間3年。以下「本件契約」という)を締結した。
 Y1は、本件契約に基づいて、X1社がプロモートするアイドルグループAのメンバーとなり、X1社の企画するAのイベントへの出演(ライブ活動等)や、Aのファンとの交流活動を行っていたが、平成27年5月24日、X1社に対し、メールにより活動を辞めたい旨申し出た(以下「本件申出」という)。
 本件申出の後も、Y1は、Aのイベントに複数回出演し、8月に開催されるイベント(以下「本件イベント」という)にも出演する予定であったが、被告Y2(Y1の親権者)は、X1社に対し、Y1が本件イベントに出演しない旨を通告し、Y1は同イベントを欠演した。
 Y1は、その後のイベントにも欠演したため、X1社とY1・Y2は、以後の活動等について話し合いをもったが、同意に至らず、Y1のイベントへの欠演は続いた。
 X1社は、Y1・Y2に対し、本件契約を解除する旨の通知をした。
 X1社は、Y1の出演義務違反(一部につきY2の監督義務違反)により、合計203万4758円の損害を受けたとして、債務不履行ないし不法行為に基づく損害賠償請求の訴えを提起した。
 
<判旨>【請求棄却】
「被告Y1は、原告の指揮監督の下、時間的場所的拘束を受けつつ、業務内容について諾否の自由のないまま、定められた労務を提供しており、また、その労務に対する対償として給与の支払を受けているものと認めるのが相当である。したがって、本件契約に基づく被告Y1の原告に対する地位は、労働基準法及び労働契約法上の労働者であるというべきである。」
「被告Y1の本件契約に基づく原告に対する地位は労働者ということになるから、本件契約が締結された平成25年9月1日から既に1年以上が経過してからされた本件申出は、被告Y1が原告を退職する旨の意思表示ということができるのであって、これにより本件契約は解除されたというべきである(労働基準法137条)。そうすると、被告Y1は、同日以降、原告に対し、本件契約に基づく出演義務を負っていない。」
 
<参照条文>
労働契約法2条1項
この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。
 
労働基準法9条
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
 
労働基準法137条
期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が1年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第14条第1項各号に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律(平成15年法律第104号)附則第3条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第628条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
 
民法628条
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
 
「労働者」に該当するとき、
契約期間が1年を超える→労働基準法137条適用
契約期間が1年以下(1年契約で更新を繰り返す場合もこちら)→民法628条適用