ここは大きな川のある町外れの集落です。

家が数軒、農業や畜産で生計をなしてました。


その集落の中でも、ひときわ仲の良いお爺ちゃんとお婆ちゃんが住んでいました。

二人は子供に恵まれず、助けあって生活をしてました。

晴れた日には、いつものようにお爺ちゃんは畑仕事と鶏の世話をしています。

お婆ちゃんは川に洗濯に、一輪車を押して行くのが日課でした。そして野菜や卵、たまにおすそ分けの肉など料理が大好きでした。合間にはお爺ちゃんの仕事も。


ある日の事でございます。

お婆ちゃんはいつものように川へ洗濯に、大きな川の川岸で、もちろん環境保全の為洗剤は使っていません。


すると川上からドボンドボン ジヤジャジャ•••

10kgぐらいある、大きな桃が流れてきました。

元、体育系女子だったお婆ちゃんは、お爺ちゃんが桃が好きなこと、頭をよぎります。

なんのためらいもなく川に飛び込み桃を抱きしめました。激流に足を救われそうになりましたが、

お爺ちゃんへの愛がまさり、川岸まで運びました。そして、一輪車に洗濯物と桃を乗せ家に帰ります。


『こんな大きな桃を見つけたよ』

お爺ちゃんは、驚いてギックリ腰に、

『一度に食べきれないから、二つ割りにしないで

脇の方から少しずつ食べよう』

お婆ちゃんは包丁を入れました。

すると、どうでしょう‼︎  赤ちゃんの泣き声がするではありませんか‼︎

ふたたび、驚いたお爺ちゃんは腰を更に痛めました。


中から出てきたのは、chin  chin  のついたかわいい赤ちゃんでした。

二人は桃太郎と名付けたのはいうまでもありません。

お爺ちゃんは腰を痛め二週間も寝込んでしまいました。その間お婆ちゃんは畑や家事育児を一手に引き受けて頑張ります。


集落ではたちまち話題になり、お婆ちゃんが赤ちゃんを産んだと、そしてお爺ちゃんは腰を痛め寝込んだみたいだと。


『よう頑張ってくれたなぁ』

『お爺ちゃんのためならなんでもだよ』


お爺ちゃんも元気になり、集落の話題も気にせず

育児、畑仕事、鶏の世話と二人で頑張りました。


そして年月はたちます。

桃太郎は畑仕事を手伝いながら、町の学校を卒業し立派な好青年となりました。


そしてある日

桃太郎はお爺ちゃんとお婆ちゃんに打ち明けます。


僕はあの、お月様がまん丸になったら月から迎えに来るのです。

日本が開発した、JAXAのSLIM が。

僕には聞こえるのです。

お爺ちゃん、お婆ちゃん ごめんなさい。

桃太郎は泣きながら、もうすぐなんですと。


お爺ちゃん、お婆ちゃんは毎晩、来る日も

来る日も夜空を見上げて泣きました。


そして、その日が来たのです。

SLIM が位置コントロールに不備があり、鶏小屋に着陸しました。


お爺ちゃんとお婆ちゃんは夢を見てるようでした。月明かりの中から出てきたのは、それはそれは綺麗なお嬢さんでした。


私の名前はかぐや姫と申します。

毎日、お婆ちゃんが洗濯してた、川岸近くの竹やぶで生まれました。私は桃太郎さんをいつも月から見ていて、好きにりました。

そして、お爺ちゃん、お婆ちゃんも好きになりました。 月の神様が許してくれたんです。

私もここで生活して良いと。


二人は結婚し、家族四人幸せな生活をしています。

どうか、みなさん この集落を探さないで、

そっとしてあげて下さい。


END