コンゴ民主共和国で過去最悪の流行となっているエボラウイルス病エボラ出血熱)について、国立感染症研究所は7月24日、現時点でのリスクアセスメントを発表。国内で患者が発生するリスクは、「特段高まっている状況ではない」との見解を示した。

 その理由について感染研は、エボラ感染者の発生がコンゴ民主共和国の北キブ州とイトゥリ州に限られていること、これらの地域が紛争地であり日本人旅行者が訪問・滞在する機会が極めて少ないこと、コンゴ民主共和国から日本への入国者が年間約500人(月平均40人ほど)であること――を挙げている。

 ただし、WHOが7月17日に公衆衛生上の緊急事態を宣言したことを受け、地方自治体や第1種感染症指定医療機関においては、エボラウイルス病患者(疑い例を含む)の発生時の対応や検査診断体制を確認することが重要とも指摘している。厚生労働省も動き出しており、7月18日付けで全国の自治体に対して、渡航者への注意喚起の実施やエボラ疑い患者が発生した場合の対応や手続きの再確認を求める通知を発している。

 コンゴ民主共和国でのエボラ流行は、発生から1年余りがたつ現在に至るまで、同国の北キブ州とイトゥリ州で流行が続いており、同国での流行としては最大規模になっている(図1)。2018年4月以降、これらの地域では2501例(死亡1668例、致死率67%)のエボラ患者が報告されている。女性が1419例(57%)、18歳未満が718例(29%)で、医療従事者の患者も135例(5%)に上っている。

 背景にあるのは、流行地域が国連の平和維持活動(PKO)が介入する紛争地帯であり、武力衝突や暴力事件が頻繁に発生していることがある。日本の外務省の海外安全ホームページでは、退避勧告に相当するレベル4の危険地帯に指定されている。加えて、一部住民の保健当局や政府への不信感が根強いため、エボラ確定患者や疑い患者の収容や検査、接触者調査、接触者らへのワクチン接種など、公衆衛生上の対応が十分に行われていないことも感染拡大を招く要因となっている。

図1 コンゴ民主共和国の地域別、週別のエボラウイルス病報告数(確定例と疑い例)(出典:WHO Disease Outbreak News 18 July 2019)

■参考情報
コンゴ民主共和国におけるエボラ出血熱の流行に関するリスクアセスメント(2019年7月24日現在、国立感染症研究所)
「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を受けたエボラ出血熱に係る協力依頼について(健感発0718第3号、令和元年7月18日、厚生労働省)

夏といえば食中毒。「感染性胃腸炎の診断や治療なんて簡単!」と思っていませんか?
 いきなりですが、2つのケースを紹介します。

【ケース1】20歳代女性が嘔吐発熱で救急受診しました。感染性胃腸炎と診断されて帰宅しましたが、その後ショックとなり再搬送。最終的な診断は、糖尿病性ケトアシドーシスと敗血症性ショックでした。糖尿病性ケトアシドーシスの悪心嘔吐が初診時に感染性胃腸炎と診断されているのは、ありがちなケースです。

【ケース2】アルコール依存症の既往がある50歳代男性が嘔吐と下痢、発熱で意識朦朧の状態で救急搬送されました。胸部X線写真で右肺に浸潤陰影が確認されたことから、感染性胃腸炎による嘔吐が原因で誤嚥性肺炎を生じたと診断し、アンピシリン・スルバクタム(商品名ユナシン他)の投与を開始。ですが、呼吸状態はどんどん悪化し、感染症専門医に相談したところレジオネラ肺炎と診断されました。レジオネラは重症市中肺炎を起こす代表的な微生物ですが、肺炎を起こしながらも、意識障害やこのように消化器症状のような肺外症状が前面に出ることで有名です。ゆえに、感染症専門医であればスナップ診断が可能なのです。

 これらは私が実際に経験してきた、感染性胃腸炎と初期診断された症例の転機と簡単な解説です。みぞおちの痛みと嘔吐を認めた急性心筋梗塞症例もありました。嘔吐が主訴となると感染性胃腸炎と診断したくもなりますが、心筋梗塞しかり、小脳梗塞のような脳卒中も頭痛なしで、嘔吐などの消化器症状が生じ得るわけです。感染性胃腸炎と診断する前に、消化器疾患以外の緊急性のある疾患が隠れていないか注意すべきでしょう。

 ここまで重篤なケースでなくても、当初、感染性胃腸炎と言われた症例が、後に急性虫垂炎胆嚢炎と診断されたり、あるいは妊娠だった!という誤診はよく見られます。

 現在、初期研修医に、「感染性胃腸炎という診断は極力つけるな」と教育している有名臨床研修病院が多いはずです。というのも、感染性胃腸炎は基本的に自然治癒する予後良好な疾患です。一方、消化器症状を来す疾患は他に多くあり、それらの中には見逃すと予後が悪い疾患があるのはもちろん、特異的な治療方法が存在するものもあるからです。

 ゆえに感染性胃腸炎と安易に診断せず、重篤な疾患の除外診断を行うことが大切です。急性腹症に関する名著である『ブラッシュアップ 急性腹症』(窪田忠夫、中外医学社)でも、「感染性腸炎の症状としての腹痛は必須ではない。下痢・嘔吐・発熱が主であり、除外診断以外あり得ない」と記述されており、やはり安易に感染性胃腸炎と診断することに警鐘を鳴らしています。

 とはいえ、実際のプライマリ・ケアの現場で、嘔吐、腹痛や下痢を訴える患者さんは多く、その多くは感染性胃腸炎です。特に流行期であれば、1例、1例に時間をかけて診療することは現実的ではないでしょう。そのため私は、外来における現実的な対応法として、まずは典型的な感染性胃腸炎と診断して矛盾はないかを考えるようにしています。

頻回の下痢を認めない場合は注意

 典型的な感染性胃腸炎では、同程度の吐き気、嘔吐、腹痛といった症状の後に頻回の下痢が出現するという経過を取ります。このような経過であれば感染性胃腸炎との診断でよいと考えます。

 一方、このような経過を取らない場合、特に頻回の下痢が存在しない場合には、感染性胃腸炎との安易な診断は避けるべきです。私は下痢が乏しい嘔吐や腹痛に対しては、その段階では口が裂けても感染性胃腸炎とは言わないようにしています。例えば、診断がつかないまま右下腹部に疼痛が限局してきた場合、私は「虫垂炎の可能性もある」と説明して慎重に経過をみるようにしています。

 次回以降は、感染性胃腸炎と診断した場合に抗菌薬が必要かどうか、わが国で頻度が高い3つの微生物について解説します。

 日経メディカル Onlineの医師会員を対象に、「鎮痛の目的で使用する非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)およびアセトアミノフェンの経口薬」のうち最も処方頻度の高いものを聞いたところ、56.6%の医師がアセトアミノフェン(商品名アセトアミノフェン、カロナール、ピレチノール他)と回答した。

 第2位のロキソプロフェンナトリウム水和物(ロキソニン他)は31.1%、第3位のアスピリン製剤(アスピリン、バファリン配合錠A330他)は4.8%の医師が、最も処方頻度の多い薬剤として選んだ。

図1 日経メディカル Onlineの医師会員が最もよく処方する「鎮痛の目的で使用する非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)およびアセトアミノフェンの経口薬」(処方経験のない102人を除いて作成)

 図には示していないが、第4位以下は次の通り。セレコキシブ(セレコックス、2.84%)、スリンダク(クリノリル、1.14%)、イブプロフェン(ブルフェン他、0.77%)、ジクロフェナクナトリウム(ナボールSR、ボルタレン他、0.60%)、アセメタシン(ランツジール、0.32%)、エトドラク(オステラック、ハイペン他、0.32%)、インドメタシン(インテバンSP、0.30%)、メフェナム酸(ポンタール、0.22%)、ザルトプロフェン(ソレトン、ペオン他、0.20%)、ナプロキセン(ナイキサン、0.17%)、インドメタシン ファルネシル(インフリー、0.15%)、ロルノキシカム(ロルカム他、0.12%)、アンピロキシカム(フルカム他、0.10%)、チアラミド塩酸塩(ソランタール、0.05%)、ピロキシカム(バキソ他、0.05%)、フルルビプロフェン(フロベン、0.05%)、メロキシカム(モービック他、0.05%)、プラノプロフェン(ニフラン他、0.02%)、モフェゾラク(ジソペイン、0.02%)。

 なお、アセトアミノフェンは、第1回調査(2016年2月)及び第2回調査(2017年8月)では第2位だったが、回を追うごとに38.9% → 42.4% → 56.6%とシェアを伸ばし、調査3回目にして首位に登り詰めた。