救急部門を受診したCOVID-19患者に簡単な血液検査を行い、CRP、Dダイマー、IL-6、フェリチン、LD(乳酸脱水素酵素)を測定すると、ICU入院、挿管、死亡のリスク予測に役立つことが示唆された。米国George Washington大学病院に入院した患者を対象とする分析の結果は、同大学のShant Ayanian氏らによって、Future Medicine誌電子版に2020年7月17日に報告された。

 COVID-19の悪化や死亡のリスクを予測するバイオマーカーについて、中国の症例研究からいくつかの候補が報告されている。しかし、それらが米国のCOVID-19患者のリスク判定にも有用かどうかは明らかではなかった。そこで著者らは、米国のCOVID-19患者に有用なバイオマーカーを同定しようと考えた。

 対象は、ワシントンD.C.にあるGeorge Washington大学病院に、2020年3月12日から5月9日までの期間に入院し治療を受けた18歳以上のCOVID-19確定例299人。病院の電子医療記録から、患者の年齢、性別、BMI、併存疾患、使用薬剤、入院時のルーチン検査に加え、CRP、Dダイマー、IL-6、フェリチン、LDのデータを調べ、これらのデータと臨床アウトカム(ICU入院、挿管、院内死亡)の関係を検討する後ろ向き研究を実施した。ICU入院前の最大酸素必要量、ICU入院、機械的換気の適用、退院時サマリーなどの情報も収集した。

 IL-6、フェリチン、CRP、LDは、原則として中央値を閾値とした。IL-6の閾値は60pg/mL(基準範囲は0.0~15.5pg/mL)、フェリチンの閾値は450ng/mL(基準範囲は20~450ng/mL)、CRPの閾値は90mg/L(基準範囲は0.0~9.0mg/L)、LDの閾値は1200ユニット/L(基準範囲は400~800ユニット/L)とした。Dダイマーについては、他の研究が、COVID-19患者の血栓症リスクの予測において特異度が高いとしていた3μg/mLを閾値とした(基準範囲は0.20~0.28μg/mL)。

 299人のうち、全てのバイオマーカー検査値がそろっていたのは200人だった。追跡期間の中央値は8日だった。69人(23%)はICUに入院しており、39人(13%)が挿管を必要とし、71人(23.7%)が死亡していた。

 単変量ロジスティック回帰モデルでは、5種類のバイオマーカーはどれも閾値を超えた場合、ICU入院、挿管、死亡の増加と有意な関連を示した。ICU入院のリスクが特に高かったのは、CRP高値(オッズ比8.6:95%信頼区間4.1-18.1)、Dダイマー高値(7.3:3.8-14.0)、フェリチン高値(6.8:3.4-13.7)だった。挿管リスクが高かったのはDダイマー高値(8.2:3.4-19.8)、CRP高値(6.5:2.6-16.3)などだった。死亡リスクが高かったのはLD高値(8.0:4.1-15.3)、Dダイマー高値(7.5:3.8-14.6)、CRP高値(6.0:3.0-12.0)などだった。

 ICU入院、挿管、死亡の3種類のアウトカムと関連が見られた併存疾患は、高血圧、心臓病、神経疾患だった。慢性腎臓病は死亡と関連が見られた。その他の疾患は有意な関連が見られなかった。また、女性に比べ男性の方が、ICU入院と挿管のリスクが高かった。

 これらの結果から著者らは、炎症と凝固のマーカーは、米国のCOVID-19患者でもハイリスク患者を同定するために役立つことが示唆された。今後の課題はこれらのマーカーの変動や、抗凝固療法の影響などを明らかにすることだと結論している。