米国Roswell Park Comprehensive Cancer CenterのNicolas F. Schlecht氏らは、性的に活発な思春期の米国人女性のHPV感染率を調べ、4価のHPVワクチンの影響を検討し、HPVの口腔感染は珍しくないが、ワクチン摂取者では4種類(HPV-6型;11型;16型;18型)の検出率が、非接種者に比べ有意に低かったと報告した。結果は、JAMA Network Open誌電子版に2019年10月25日に掲載された。

 HPVは、ほとんどの子宮頸癌と多くの肛門癌の発症に関係し、口腔感染は口腔咽頭癌に関係する。先に行われた研究は、HPVワクチン接種後には、性的に活発な思春期女性の子宮頸部と肛門のHPV感染が減少することを報告しており、同時に、ワクチンに含まれるジェノタイプのHPVの口腔感染も減少することが示唆された。そこで著者らは今回、4価のHPVワクチンの接種が、性的に活発な思春期の女性のHPV口腔感染率に与える影響を検討するために、長期的なコホート研究を行った。

 対象者は、2007年10月29日から2017年3月9日までに、無料で医療が受けられるNew Yorkの大規模な思春期医療クリニック1施設を受診した、性的に活発な13~21歳の女性患者。本人または保護者から、初回受診後は25歳になるまで6カ月に1回受診して、HPVの検査を受けてもらうことに同意が得られた場合にコホートに参加してもらった。

 参加者は、口腔うがい液によりHPVの口腔咽頭感染を、細胞診用ブラシで子宮頸部感染を、綿棒で肛門感染を調べることにした。ベースラインと6カ月ごとの受診時に、質問票を用いて性的活動を調査し、性行為歴、性行為感染症歴、妊娠歴、短期的および長期的な避妊薬の使用、喫煙・飲酒習慣と、違法薬物使用歴なども回答してもらった。

 主要評価項目はHPV口腔感染率とし、サンプルからPCR法でDNAを抽出し、粘膜組織に感染することが知られている40種類のHPVについて分析した。

 コホートに組み入れた1273人のうち、DNAを検出するのに十分な口腔うがい液が得られた1259人を分析の対象とした。1259人の組み入れ時点の年齢は、中央値で18歳(範囲は13~21歳)で、638人(50.7%)はアフリカ系米国人、569人(45.2%)はヒスパニック系、43人(3.4%)はその他の人種で、人種不明が9人(0.7%)いた。初めて性行為を行った年齢中央値は14.8歳で、1161人(92.2%)は口腔性交歴を持っていた。ベースラインで、それまでの性行為のパートナーが3人以上いた女性が878人(69.7%)いた。

 ベースラインの口腔うがい液標本からHPVのDNAが検出されたのは、1259人中78人(6.2%:95%信頼区間4.9-7.6%)だった。それらのうちの21人(1.7%:1.0-2.5%)からハイリスク型のHPVが検出され、8人(0.2%:0.3-1.3%)からは4価のワクチンがカバーしている6型、11型、16型、18型が見つかった。

 口腔性交経験の有無は、HPVの口腔感染検出率に有意な影響を与えていなかった。年齢を補正した、口腔性交経験のない女性と比較した経験ありの女性のオッズ比は0.74(0.3-1.6)だった。一方、初回の性行為から年数が経過するほど、HPVの検出率は減少していた。初回の性行為から4年以上経過している女性と1年以内の女性を比較すると、オッズ比は0.45(0.21-0.96)だった。

 年齢と性行為開始からの期間を補正すると、マリファナ使用歴(オッズ比0.77:0.5-1.3)や喫煙歴(オッズ比0.76:0.5-1.3)はいずれも、HPV口腔感染に有意な影響を及ぼしていなかった。HPV口腔感染の有意だった危険因子は、同時に採取された子宮頸部標本におけるHPV感染陽性だった。

 対象となった1259人中192人は、組み入れ時点でHPVワクチン未接種者だった。HPV-16型の検出率は、接種者が1067人中1人、未接種者が192人中2人だったが、フィッシャーの正確確率検定では差が有意ではなかった。しかし、多変量ロジスティック回帰分析で、ワクチンがカバーする4種類のウイルス型のどれかが検出される割合を、接種者と非接種者で比較したところ、補正後のオッズ比は0.17(0.04-0.68)になった。

 口腔うがい液を対象に存在を調べた計40種類のHPVの感染率は、100人・年当たり0.05(0.01-0.20)から0.46(0.29-0.73)の範囲だった。いったん陽性になったHPV型の88%が、12カ月以内に陰性になっていたことから、感染の多くは一過性であると考えられた。しかし2人の女性においては1年を超えてハイリスク型のHPVが検出されたことから、一部の女性では、持続感染リスクがあることが示唆された。ただし、これらの女性の口腔または子宮頸部に病変は見つからなかった。

 これらの結果から著者らは、性的に活発な思春期の女性では、HPVの口腔感染は珍しくないが、HPVワクチンがカバーしている4種類のウイルス型の感染率を減らすことができると結論している。この研究はNational Insti