急性咽頭炎の診断について解説しました。診断の要点はA群β溶血性レンサ球菌(GAS)による急性咽頭炎かどうかを判断することであり、その理由はGASによる急性咽頭炎が抗菌薬治療の適応となるからでした。「抗微生物薬適正使用の手引き第一版」(以下、手引き)でも「迅速抗原検査または培養検査でA群β溶血性レンサ球菌(GAS)が検出されていない急性咽頭炎に対しては、抗菌薬投与を行わないことを推奨する」とあり、抗菌薬治療の適応はGASのみと記載されています。

 そこで今回は、学童期以降の小児や成人のGAS急性咽頭炎に対する抗菌薬治療を中心に急性咽頭炎の治療について解説していきます(薬剤の投与量は成人を基準に記載します)。乳幼児の急性咽頭炎については次回以降に解説します。

GASによる急性咽頭炎に抗菌薬治療を行う理由
 GASによる急性咽頭炎はしばしば自然軽快します。そのような疾患に抗菌薬治療が必要な理由は以下になります。

(1)症状のある期間を短縮する
(2)リウマチ熱の予防
(3)扁桃周囲膿瘍、咽後膿瘍などの合併症の予防
(4)周囲に対する感染性を低下させる

 リウマチ熱はGAS感染の2~3週間後に続発する全身炎症性疾患です。急性期に関節炎や心炎など、遠隔期には心臓弁膜症の原因となります。GAS感染症に対する抗菌薬治療によって発症予防が可能とされており、先進国ではリウマチ熱が激減しています。この予防目的のため、症状が改善傾向であってもGAS急性咽頭炎に対して抗菌薬治療を行うことは妥当で、かつ10日間治療することが重要とされています。なお、GAS感染後の急性糸球体腎炎は抗菌薬を投与しても予防できません。
 
GAS急性咽頭炎に対する抗菌薬治療
 GASにはペニシリン耐性の報告がないこと、狭域スペクトラムであること、安価であることから、経口ペニシリンによる治療が長年第一選択とされてきました。現在でも経口ペニシリンでの治療が十分可能です。

(処方例)ベンジルペニシリンベンザチン(商品名:バイシリンG顆粒) 1回40万単位、(1日3~4回、10日間)

 しかし、ベンジルペニシリンベンザチンの使用機会が少なくなっていることや、原薬の調達困難による出荷調整が2018年まで行われていたこと1)などがあり、使用できない医療機関もあることと思われます。そのため、手引きではアモキシシリン(サワシリン他)を推奨しています。

(処方例)アモキシシリン 1回250mg(1日3~4回、10日間)

 海外学会のガイドラインではGAS急性咽頭炎に対して1回500mgを1日2回または1回1000mgを1日1回の投与法が記載されています2、3)。いずれも投与期間は10日間です。

 合成ペニシリンであるアモキシシリンによる治療の難点としては、ベンジルペニシリンベンザチンよりも広域スペクトラムであること、伝染性単核球症の患者に処方すると高頻度に皮疹が生じることがあります。前回解説したように、臨床像から絞り込んだ上で迅速診断検査または培養検査でGASが検出された場合に限って抗菌薬治療を行う方針を基本としていれば、伝染性単核球症患者にアモキシシリンを処方してしまう可能性はかなり低くなるはずです。

 重症のペニシリンアレルギー患者(アナフィラキシーや重症薬疹の既往あり)の場合はクリンダマイシン(ダラシン)、軽症(重症ではない)のペニシリンアレルギーの場合は第一世代セファロスポリン系抗菌薬のセファレキシン(ケフレックス他)が選択肢となります。クリンダマイシンの代わりにキノロン系のレボフロキサシン(クラビット他)を用いることも考えられますが、抗菌薬適正使用の観点から、より狭域スペクトラムな抗菌薬であるクリンダマイシンを優先したいところです。なお、クラリスロマイシン(クラリシッド、クラリス他)などのマクロライド系抗菌薬はGASのマクロライド耐性が増えているため勧められません。

 手引きでは、ペニシリンアレルギーの場合にセファレキシンが選択肢とされていることを除いて、GAS急性咽頭炎の治療にセファロスポリン系抗菌薬を用いることは勧められていません。セファロスポリン系抗菌薬は除菌率がペニシリンに劣るとの報告4) があります。また、リウマチ熱の予防効果についての知見は乏しいです。薬剤耐性対策の観点からより狭域スペクトラムの抗菌薬の使用が望まれることを合わせ、定評のあるペニシリン系抗菌薬を差し置いて、あえてセファロスポリン系抗菌薬を使用する意義は低いと考えられます。

急性咽頭炎の対症療法
 急性咽頭炎の症状が強い場合は対症療法を要することがあります。発熱や咽頭痛に対してはアセトアミノフェン(カロナール他)やイブプロフェン(ブルフェン他)がよい選択となります。

(処方例)アセトアミノフェン 1回400~500mg(1日4回まで頓用)
(処方例)イブプロフェン 1回200mg(1日3回まで頓用)


 日本で開発された薬剤であるトラネキサム酸(トランサミン他)は、止血薬として世界的に使用されていますが、日本では抗炎症薬として急性咽頭炎による咽頭痛にしばしば使用されています。米国の薬剤師が日本でかぜをひいた際に購入した市販薬の内容を調べ、トラネキサム酸など米国では適応のない成分が複数含まれると知って驚いたエピソード5) は興味深いです。対症療法にもお国柄があるのです。ちなみに、この米国薬剤師は市販薬を服用して症状が改善したそうです。

 急性咽頭炎に対してトラネキサム酸が用いられている根拠をたどると、1960年代の研究6) に突き当たります。ここでは二重盲検法による比較試験が行われ、急性咽頭炎と口内炎ではプラセボと比較して有意に症状改善を認めたとのことです。かなり以前の研究でもあり、この結果をどう判断するかは様々な意見があるかもしれません。

 また、咽頭痛に対して漢方薬が使用されることも増えてきたように思います。なかでも桔梗湯がしばしば用いられているようです。私自身は漢方について十分な知識や経験を持ち合わせていませんが、対症療法の選択肢に入れることは可能でしょう。

急性咽頭炎患者への説明ポイント
 原因がGASかどうかで治療方針が大きく変わるとはいえ、重要なポイントは共通です。すなわち、診断に即した治療方針を説明し、自然経過や思わしくないときの指示をできるだけ具体的に伝えることです。手引きにはウイルス性咽頭炎疑いの場合として以下のような説明例が記載されています。

【医師から患者への説明例:ウイルス性咽頭炎疑いの場合】
 あなたの「かぜ」は喉の症状が強い「急性咽頭炎」のようですが、症状からは恐らくウイルスによるものだと思いますので、抗生物質(抗菌薬)が効かないと思われます。抗生物質には吐き気や下痢、アレルギーなどの副作用が起こることもあり、抗生物質の使用の利点が少なく、抗生物質の使用の利点よりも副作用のリスクが上回ることから、今の状態だと使わない方がよいと思います。痛みを和らげる薬をお出ししておきます。

 一般的には、最初の2~3日が症状のピークで、あとは1週間から10日間かけてだんだん良くなっていくと思います。3日ほど様子を見て良くならないようなら、またいらしてください。

 まず大丈夫だと思いますが、万が一、喉の痛みが強くなって水も飲めないような状態になったら診断を考え直す必要がありますので、すぐに受診してください。