こんにちは。やわらぎクリニック(奈良県三郷町)の北和也と申します。今回から3回にわたって、外来で遭遇し得る成人市中肺炎とその関連の処方箋をいくつか挙げ、処方箋を発行した医師の処方意図について、一緒にひも解いていきたいと思います。

 ではまず、最初の処方箋を見てみましょう。

<処方箋1>

(1)【般】セフカペンピボキシル塩酸塩錠100mg 1回1錠(1日3錠)
   【般】デキストロメトルファン臭化水素酸塩錠15mg 1回2錠(1日6錠)
   【般】カルボシステイン錠500mg 1回1錠(1日3錠)
       1日3回   朝昼夕食後   5日分
(2)【般】フェキソフェナジン塩酸塩錠60mg 1回1錠(1日2錠)
       1日2回    朝夕食後   5日分
(3)【般】ツロブテロールテープ2mg 5枚
       1回1枚 胸部、背部または上腕部に貼付 1日1回 就寝前
(4) SPトローチ0.25mg「明治」  1回1錠
       1日3~4回  咽頭痛時  20回分

 処方内容からは、複数の気道症状があることが分かります。また、処方医は気道感染症に対して、抗菌薬を処方しています。ということは、細菌感染!?もしかして、肺炎!?でも、処方箋を持参した患者は軽症っぽく見える――。このような時、どう考えればよいでしょうか。 

 デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物(商品名メジコン他)、ツロブテロール(ホクナリン他)は咳、フェキソフェナジン塩酸塩(アレグラ他)は鼻汁、SPトローチ(一般名デカリニウム塩化物)は咽頭痛に、それぞれ処方されているのでしょう。

図1 急性気道感染症の病型分類のイメージ(文献1より引用)

 このように複数の気道症状がある場合は、細菌感染症よりもウイルス感染症の可能性が高まります。中でも、鼻症状(鼻汁、鼻閉)、下気道症状(咳、痰)、咽頭症状(咽頭痛)――の3系統の症状が同時に、かつ同程度生じていれば、発熱の有無を問わず、典型的なかぜ(ウイルス性の急性気道感染症、感冒)と判断できます1)(図1)。

 このケースも肺炎の可能性は低く、かぜである可能性が高いでしょう。処方数が多いところも“突っ込みどころ”かもしれませんが、何より抗菌薬の必要性が非常に乏しいことを、医師と共有したいところです。

他人事では済まない薬剤耐性(AMR)問題

 「そう言われても、医師には伝えづらい」。そう考える薬剤師は少なくないのではないでしょうか。しかし、伝えにくいからといって抗菌薬の不適切処方を放置していては、AMR(薬剤耐性)対策が進みません。

 このまま何も対策を取らずに、これまで通り抗菌薬を使用すると、AMRによる世界中の死亡者数は2013年の年間 70万人から、2050年には年間 1000万人に達し、癌による死亡者数 820万人を上回るともいわれています2)。次世代にまで影響するわけで、決して他人事では済まされません。多職種、さらには国民一丸となって対策を考える必要があります。

経口第3世代セフェムの「DU処方」にご用心

 中でも、セフカペン(フロモックス他)、セフジトレンピボキシル(メイアクト他)、セフジニル(セフゾン他)などの経⼝第3世代セフェムは、広域であるもののバイオアベイラビリティが低く、考え得るほぼ全ての状況下で、より良い選択肢がほかにあります3)。よって「原則使ってはならない抗菌薬」だと考えます。飲んだ薬が大体、便となってしまうため、国立国際医療研究センターの感染症医である忽那賢志氏は、経口第3世代セフェムの処方を、「だいたいうんこ」=「DU」処方と呼んでいます(関連記事:「だいたいウンコになる」抗菌薬にご用心!)。

 では、これらの代わりに何を用いればいいのでしょうか。一般的な外来感染症におけるエンピリック治療(診断確定前に開始する治療)の最善の一手についてはほぼ決まっています。これらは、「感染症診療の手引き(新訂第3版)」(シーニュ、2017)などで確認しておく必要があります。

 あるいは、2年ほど前になりますが、市民啓発のために筆者が日経Goodayに書いた記事も、ちょっと古いですが参考にしてください。

 記事を一部引用すると、急性副鼻腔炎であれば、大抵はウイルス性であり抗菌薬は不要です。細菌性であったとしても軽症であれば多くの場合、抗菌薬なしで自然軽快します。細菌性の中には強い痛みや高熱などがあり抗菌薬が必要な場合もあります。しかしその場合も、アモキシシリン水和物(商品名サワシリン他)あるいはアモキシシリン・クラブラン酸カリウム(オーグメンチン他)といったペニシリン系抗菌薬が第一選択であり、第3世代セフェムの使用は推奨されていません4)

 また、喉の強い痛みや首のリンパ節の腫れ、発熱があるものの、鼻水や咳といった典型的な“かぜ症状”がない場合に疑う細菌性咽頭炎についても、第一選択はペニシリンやアモキシシリンです。ペニシリンアレルギーがあったとしても、代替案として第1世代セフェムのセファレキシン(ケフレックス他)やクリンダマイシン塩酸塩(ダラシン)などの選択が推奨されています5)

 厚生労働省の 「抗微生物薬適正使用の手引き第1版」には、かぜだけではなく、プライマリケアでよく遭遇するこれらの疾患への対応の基本的な考え方が述べられています。無料で閲覧・ダウンロードできます。同手引きに基づいたかぜ診療を啓発してほしいと思います。

 さて、ここまで「かぜへの抗菌薬は不要」そして「経⼝第三世代セフェムは原則使ってはならない」とお伝えしました。では、実際に、現場でこれらの処⽅を⽬にした時、薬剤師の皆さんはどのような思いを抱くでしょうか。処⽅医をヤブ医者だと思って愚痴が増えてしまうでしょうか。 

 確かに、「なんでこんな薬を出すんだろう……」と思ってしまうような処方を目にすることもあります。だからと⾔って愚痴をこぼしているだけでは、状況は好転しません。それよりもぜひ、皆さんの知識・経験をフル動員して、少しでも⽬の前の医療の質を上げるための⼯夫をしてください。薬剤師が医師とうまく連携すれば、⽬の前の患者さんをもっともっとハッピーにできると思います!ぜひともよろしくお願いいたします。