イタリアSanta Lucia Foundation IRCCSのGiacomo Koch氏らは、脳卒中による片麻痺のある患者を対象として、対側の小脳に磁気刺激(シータ波帯域の間欠的なバースト刺激を与えるCRB-iTBS法)を理学療法と併用する二重盲検のフェーズ2a試験を行い、シャム治療群と比較してCRB-iTBS群には歩行とバランスの回復促進が見られたと報告した。結果はJAMA Neurology誌電子版に2018年11月26日に掲載された。
脳卒中後のリハビリの主な目標の1つが歩行機能の改善だが、どんなリハビリテーションプロトコールがより優れているかについては、決め手に欠ける。脳卒中後の回復過程で、特に歩行とバランスにかかわる神経ネットワークの機能的再編成に、麻痺側と対側の小脳が大きくかかわることが報告されている。そこで著者らは、頭皮から経頭蓋的に磁気刺激を与えるCRB-iTBSをリハビリテーションに併用することで、機能回復を促進できるのではないかないかという仮説を立て、臨床試験を計画した。
試験の参加者は、2013年3月から2017年6月まで、神経リハビリテーション病院であるSanta Lucia Foundation IRCCSで募集した。対象は、脳梗塞を初めて発症してから少なくとも6カ月経過しており、中脳動脈の領域の皮質または皮質下に原因がある片麻痺で、歩行とバランスの機能障害が残っている患者。痙攣発作の病歴がある患者、重度の全身障害や合併症のある患者、80歳以上の患者、抗うつ薬・ベンゾジアゼピン・バクロフェンの治療を受けている患者は除外した。
52人の患者が評価を受け、条件を満たし同意が得られた36人がランダム割り付けに参加した。年齢をマッチさせ、各18人をCRB-iTBS群またはシャム治療群に割り付けた。各参加者は1日1回約90分の理学療法を受けることとし、セラピストの指導によるストレッチ、補助付きの可動域訓練、バランス運動、歩行訓練などを組み合わせた。割り付けられた治療は理学療法の開始前に行い、介入群は5分の休憩を挟んで2セッションの磁気刺激(合計1200パルス)を受けることとした。刺激強度は活動時運動閾値の80%に設定した。磁気刺激またはシャム治療は、3週間(月~金曜)行った。
主要評価項目は、バランス能力を評価するBerg Balance Scale(BBS)スコアのベースラインから3週後までの変化に設定した。BBSスコアは14項目について0~4点で評価し、56点満点のうち45点が、補助器具なしで安全に歩行可能な点数の目安とされる。2次評価項目は、運動機能の回復度を調べるFugi-Meyer Assessment(FMA)のスコア変化、基本生活動作を評価するBarthel Index(BI)のスコア変化、センサーを用いた歩行分析の変化、脳波計の変化とした。評価はベースラインと3週間後、さらに割り付け治療完了から3週間後にも行った。
2人が途中で治療を中止したが、34人(平均年齢は64歳で、13人が女性、17人が介入群で17人が対照群)が治療を完了した。CRB-iTBS群のBBSスコアの平均値は、ベースラインが34.5点で、治療後には43.4点、治療終了から3週後は47.5点だった。一方、シャム治療群はそれぞれ32.8点、36.1点、38.8点で、3週後、治療終了から3週後のいずれも、両群のスコアの差は有意だった。
FMAスコアやBIスコアには両群間の差は見られなかった。また、CRB-iTBS群の患者では、歩行時に非麻痺側の歩幅が減少していた。脳波検査では、3週間の治療後にCRB-iTBS群の後頭頂葉の神経活性が増加していた。
これらの結果から著者らは、小脳への間欠的シータ波バースト刺激は、脳卒中後に片麻痺となっていた患者の歩行とバランスの回復を促進することが示唆されたと結論している。なお、この研究はItalian Ministry of Healthの支援を受けている。
