心不全患者は減塩食をとるよう指導されることが多い。しかし、これを支持する質の高いエビデンスはなかった。英国Oxford大学のKamal R. Mahtani氏らは、ランダム化対照試験(RCT)の系統的レビューとメタアナリシスを行って、減塩食の利益を検証しようと試みたが、メタアナリシスを行うにはデータは不足しており、個々のRCTは、一貫した利益を示せていなかった。結果は、JAMA Intern Med誌電子版に2018年11月5日に掲載された。

 心不全の診断と治療は進歩している。しかし、有病率は上昇を続けており、先頃の推定では、世界の心不全患者はすでに2600万人を超えているという。心不全患者に対するエビデンスベースの薬物療法は、症状を軽減し、死亡リスクを低下させて、医療費削減に貢献している。そうした治療に加えて、いくつかのガイドラインは、食事を介した塩分摂取を減らすよう患者にアドバイスしているが、減塩の利益は明らかではない。

 これまでに行われた観察研究の結果は減塩の利益と害を示しており、RCTの一部は有害であることを示唆する結果を報告していた。先に行われた1件の系統的レビューとメタアナリシスは、通常の塩分量の食事に比べ減塩食は、心不全患者の健康状態を悪化させ、死亡リスクを高めることを示していた。しかしこの研究は、イタリアの1グループによって行われたRCT6件を対象としていたため、研究の質が高いとは見なされなかった。また、その後にデータの完全性に問題があると指摘され、論文は撤回された。それでも、この研究をきっかけに、減塩食を推奨するのであれば、質の高いエビデンスが必要だと考えられるようになった。そこで著者らは、18歳以上の安定した慢性心不全患者を外来で登録、または、急性非代償性心不全で入院した人々を登録して行われたRCTを対象に、系統的レビューを実施した。

 コクランセントラル、MEDLINE、Embase、CINAHLなどに2018年3月2日までに登録されていた試験のうち、18歳以上の心不全患者に対する減塩食の効果を評価していたRCTを検索した。状態の安定した外来通院の慢性心不全患者と、急性の非代償性心不全で入院した患者に対する試験を含めることにした。

 主要評価項目は、心血管関連死亡、総死亡、有害事象(脳卒中、心筋梗塞、低ナトリウム血症、高ナトリウム血症など)とし、副次的評価項目は、入院(再入院)、入院日数、NYHA心機能分類のクラスの変化、減塩食遵守度、血圧の変化などに設定した。

 検索で見つかった2679件のうち、重複を除き、フルテキストが記載されたRCTデザインの研究は27件だった。このうち条件を満たした研究は9件で、参加者は合計しても479人しかいなかった。3件は欧州、2件は南米、4件は北米で行われていた。2件は入院患者、7件は外来患者を対象にしていた、参加者が100人を超える研究は1件もなかった。9件のバイアスリスクはそれぞれ異なるが、7種類のバイアスについていずれもリスクが低いと判定された研究はなかった。

 心血管関連死亡率に関する十分なデータを提供している研究はなく、総死亡について報告していた研究は4件あったが、メタアナリシスに必要な情報は得られなかった。入院患者を対象とする研究では、75人を登録した試験が死亡なしと報告しており、32人を登録した試験では、死亡は両群に1件ずつ発生していたが、死因はすべて介入とは無関係なものだった。外来患者を対象とする研究では、死亡は、30人を登録した試験で両群に1件ずつ、38人を対象とする試験では対照群に1件発生していた。いずれも死因を明らかにしていなかった。

 分析対象となった試験の中に、脳卒中や心筋梗塞、低ナトリウム血症または高ナトリウム血症について報告していたものはなかった。

 2次評価項目のうち、入院について検討していたのは、退院した患者75人を追跡した試験と66人を追跡した試験で、30日再入院率は、前者は有意差なしと報告、後者は減塩群のほうが少なかったと述べてはいるがデータの提示はなかった。入院期間について検討していたのは1件(75人を登録)で、両群間に差はなかった。

 NYHAのクラス分類などを指標として、心不全の症状に対する介入の影響を調べていた試験は7件で、2件が入院患者を対象とするもの、5件が外来患者を対象とするものだった。入院患者では、両群間に有意差は見られず、外来患者を対象とした研究では、2件が介入群の改善が有意に大きかったと報告していた。それらは1日のナトリウム摂取の目標値を2.0~2.4gまたは2~3gとしていた。

 減塩食遵守度について検討していた研究のうち、7件は尿中ナトリウム量を測定しており、2件は食物摂取記録の提出を要求していた。

 外来患者を対象とした3件が血圧の変化について報告していたが、データはメタアナリシスを行うには不十分だった。1件は減塩群における血圧低下傾向を示したが、2件は、両群ともに有意な変化はなかったと報告していた。

 これらの結果から著者らは、減塩食が心不全患者に利益をもたらすかどうかについては、質の高い確かなエビデンスは得られず、臨床症状がやや改善することを示唆するに留まった。減塩を推奨するガイドラインを支持するとも否定するとも言えず、減塩介入を評価するには、適切にデザインされた十分な検出力を持つ研究を実施する必要があるとしている。なお、この研究はNIHR School for Primary Care Researchなどの支援を受けている。