ドナルド・トランプ米政権は、経済分野でチャイナ(中国)を締め上げているだけではない。軍事的にも、その影響力を封じ込めるために積極的に行動している。
米海軍のイージス駆逐艦「ディケーター」が9月30日、南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島周辺で「航行の自由作戦」を実行中、中国海軍の蘭州級駆逐艦が41メートルの距離まで異常接近する事件が発生した。米側の発表によると、警告にも関わらず、中国駆逐艦は攻撃的な動きを繰り返したという。
米空軍は9月下旬、核兵器搭載可能なB52戦略爆撃機を南シナ海に派遣し、中国への圧力を強めた。ジェームズ・マティス米国防長官は、10月中旬に予定していた中国訪問を取りやめている。
米海軍のイージス駆逐艦「カーティス・ウィルバー」と、イージス巡洋艦「アンティータム」は10月22日、台湾海峡を航行し、米国が台湾の独立を擁護する姿勢を明示した。米国防総省のロブ・マニング報道部長は「2隻の航行は、米国が掲げる『自由で開かれたインド太平洋』構想に基づく。今後も艦船や航空機の航行や飛行を続ける」と明言した。
米国は8月9日、宇宙軍の創設を発表した。これはロシアではなく、中国の宇宙戦力拡張に対抗するためである。米国がロシアを警戒しながらも、敵対していないことは、米露両国が10月9日、合同で金星探査ロケットの打ち上げを2026年に計画していると発表したことでも分かる。
トランプ氏が10月20日に発表した中距離核戦力(INF)全廃条約の破棄方針も、ターゲットは中国である。中国はINF条約に署名していないので、まったく制限を受けることなく中距離核ミサイルを拡充してきた。
中国共産党は国内で、ウイグル人、チベット人への残酷な抑圧体制をますます強化している。在日ウイグル人のトゥール・ムハメット氏によれば、強制収容所に収監されているウイグル人は300万人を超えているという。在日チベット人学者のペマ・ギャルポ拓殖大学教授の推測では、過去10年間に、共産党政権に対して焼身抗議したチベット人の数は1000人を超えている。
マイク・ペンス米副大統領による10月4日の演説は、こうした中国の人権抑圧体制との全面戦争を宣言したものだ。
「米中熱戦」の最中に、日本企業が中国経済への協力を進めるのは、いかにも日本の国益に反した行為である。こうした人権抑圧体制に協力して、利益を上げること自体が非倫理的である。
それを防ぐためにも、安倍晋三政権は消費増税を延期して、積極的な財政出動で国内市場の拡大を図るべきだ。そうすれば、日本企業が「一帯一路」などという、怪しげなビジネスに取り込まれなくても済む。
国際通貨基金(IMF)は10月10日、日本政府の資産と債務はバランスがとれており、債務過剰ではないと発表した。今や自信をもって、安倍政権は財政出動を行うべきである。 =おわり
■藤井厳喜(ふじい・げんき) 国際政治学者。1952年、東京都生まれ。早大政経学部卒業後、米ハーバード大学大学院で政治学博士課程を修了。ハーバード大学国際問題研究所・日米関係プログラム研究員などを経て帰国。テレビやラジオなどで活躍する。著書に『国境ある経済の復活』(徳間書店)、『太平洋戦争の大嘘』(ダイレクト出版)など多数。