WHOは4月1日、中国で鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルス(以下、H7N9)に感染した患者が3人発生したことを発表した。H7N9はこれまで家禽や野鳥からの検出報告はあったが、ヒトへの感染の確認は世界初。4月25日までに中国では108人の患者(うち23人死亡)が確認され、濃厚接触者は1000人以上に上る。また24日には台湾でも患者が1 人確認された。この患者は、発症前に中国の江蘇省蘇州市に滞在していた。発症者の中には家禽との接触が確認できない例も多いが、25日時点でヒトからヒトへの感染の確認には至っていない。
H7N9の感染源や感染経路は特定されていないが、患者から分離されたウイルスと野生のハトなどから分離されたウイルスでは明らかに異なる塩基配列が認められている。国立感染症研究所は、「H7亜型のウイルスは一般にブタにおいて不顕性感染であることが知られている。ブタの間で症状を呈さずにウイルスが伝播して、ブタがヒトへの感染源になっている可能性がある」と指摘する。
中国での感染拡大を受け、日本政府は13日、病原性や感染性の高い新型インフルエンザなどの感染症への対策を定めた「新型インフルエンザ等対策特別措置法」を施行した。また、厚生労働省の感染症部会は24日、鳥インフルエンザA(H7N9)を指定感染症に指定することを決定。現在、鳥インフルエンザは4類感染症に指定されている(H5N1のみ2類感染症)が、指定感染症に位置付けられることで、患者や、疑わしい症状がある患者に対し、都道府県知事が就業制限や感染症指定医療機関への入院勧告、入院措置を行えるようになる。
下気道での増殖から重症化?
4月12日には、最初に報告された3人の患者の臨床経過がNew England Journal of Medicineに報告された。3人に共通して見られたのは、咳や高熱など一般的なインフルエンザ様症状(表1)。検査所見としてAST、CK、LDH値の上昇、胸部X線写真では両肺野にすりガラス状陰影と浸潤影が認められた。全員が急性呼吸促迫症候群(ARDS)を来し、2人は発症から2週間以内、1人は約1カ月後に死亡した。
ベトナムで鳥インフルエンザA(H5N1)の治療経験を持つ国立国際医療研究センター呼吸器内科/国際感染症センターの高崎仁氏は、「H5N1に感染した患者は、ウイルス性の重症肺炎からARDSを来して死亡するケースが多い。H7N9による死亡例でも同じような経過をたどった可能性が高い」と話す。
インフルエンザウイルスは宿主の細胞に取り込まれる際、細胞表面のシアル酸を含む糖鎖構造を受容体として認識する。受容体は糖鎖とシアル酸の結合部位により、ヒトインフルエンザウイルスと親和性の高い受容体と、鳥インフルエンザウイルスと親和性の高い受容体に分かれる。口腔から区域気管支までの上気道には「ヒト型」受容体が、終末細気管支や呼吸細気管支、肺胞などの下気道には「鳥型」受容体が分布している。このため鳥インフルエンザでは、ウイルス性肺炎やARDSを引き起こしやすいと考えられている(図1)。
