植物状態と診断された患者に機能MRI(fMRI)検査を行うと、最小意識状態またはそれ以上の意識を持っているかどうかを同定することができる。カナダWestern Ontario大学のDamian Cruse氏らは、MRIより簡単な脳波測定でも、そうした意識の存在を検出できることを、Lancet誌電子版に2011年11月10日に報告した。
経験を積んだ専門家が植物状態と診断されている患者を再評価すると、最大で43%が少なくとも最小意識状態にあると再診断される、との報告がある。さらにfMRIを用いれば、より多くの患者に意識があることを示せる上に、MRI画像の変化を利用して、患者が質問にイエスと答えているのかノーと答えているのかを判断できる。しかし、fMRIが利用できる施設は限られており、検査費用は高額で、MRI検査室への移動が患者にストレスを与えるといった理由から、MRIを用いた評価は積極的に行われてはいない。また、頭部外傷により金属のプレートやピンを埋め込まれた患者にはMRIは適用できない。
そこで著者らは、ベッドサイドで植物状態と診断された患者の意識の存在の有無を脳波検査により検出しようと考えた。正常な意識を持つ人が手やつま先を動かしているイメージを浮かべると、脳波の特定周波数帯出力が変化する現象(出力低下をERD、出力上昇をERSという)がμ波とβ波の領域で見られることが知られている。この領域の脳波を検出するために、多チャンネルの脳波測定用ヘッドキャップの129電極のうち、運動野をカバーする25電極からの情報を得て、変化のパターンを患者と健常人の間で比較することにした。
10年7月から11年6月まで、英国とベルギーの2施設で、外傷性脳損傷の患者と非外傷性の脳損傷の患者を登録。植物状態と最小意識状態を区別するために開発された意識状態評価指標のComa Recovery Scale-Revised(CRS-R)のスコアが植物状態の基準を満たした16人を分析対象に選んだ。患者のうち、外傷性脳損傷は5人で年齢の中央値は29歳(レンジは14~45歳)、非外傷性脳損傷は11人(無酸素症に起因する患者が9人、脳卒中が原因の患者が2人)で、年齢の中央値は44歳(30~63歳)だった。さらに、健常コントロールとして12人の大学関係者に参加を依頼した(25歳、21~31歳)。
患者は、脳波測定中に、指示に基づいて右手と足指を動かすイメージを浮かべる課題をそれぞれ4回以上完了した。コントロールにはそれぞれ6回以上実施した。具体的には、「ブザーが鳴ったら右手を握って開く動作をイメージしてください」、「ブザーが鳴ったら両方の足指を動かし、その後リラックスする動作をイメージしてください」と指示した。どちらの課題においても筋肉の動きを意識するよう求めた。
著者らは患者と健常人の脳波を比較し、指示されたイメージに特異的な脳波の変化を抽出して、健常コントロールで見られたパターンと同様の、運動イメージの存在を一貫して示す、統計学的に信頼できるマーカーを探した。
患者のうち3人(19%)、すなわち、外傷性脳損傷患者5人のうちの2人(20%)と、非外傷性脳損傷患者11人のうちの1人(9%)について、2通りの指示の両方で、健常人の反応と同様の脳波の変化が繰り返し検出できた。その間、身体に運動反応は全く見られなかった。
ロジスティック回帰分析では、脳損傷発生時の年齢、発生からの時間、脳損傷の原因、CRS-Rスコアといった要因と、意識の存在を示す脳波の変化の間に有意な関係は確認されなかった。
厳格な臨床評価が行われていたにもかかわらず、植物状態と診断されていた患者の一部は、健常人と同様に指示通りに運動をイメージすることが可能だった。脳波を指標とする方法は安価で、測定機器は持ち運びできる上に、データはfMRIで得られると同様に客観的だ。無動状態だが認知機能や意識の存在がうかがえる人々に対して、ベッドサイドで広く適用できると考えられる。
さらに脳波は、コミュニケーションツールとしても有用と期待される。例えば、右手を握る動作を想像すればイエス、足の指を動かす動作を想像すればノーといったルールを設けて患者と対話することが可能になるかもしれない、と著者らは述べている。
原題は「Bedside detection of awareness in the vegetative state: a cohort study」、概要は、Lancet誌のWebサイト で閲覧できる。
経験を積んだ専門家が植物状態と診断されている患者を再評価すると、最大で43%が少なくとも最小意識状態にあると再診断される、との報告がある。さらにfMRIを用いれば、より多くの患者に意識があることを示せる上に、MRI画像の変化を利用して、患者が質問にイエスと答えているのかノーと答えているのかを判断できる。しかし、fMRIが利用できる施設は限られており、検査費用は高額で、MRI検査室への移動が患者にストレスを与えるといった理由から、MRIを用いた評価は積極的に行われてはいない。また、頭部外傷により金属のプレートやピンを埋め込まれた患者にはMRIは適用できない。
そこで著者らは、ベッドサイドで植物状態と診断された患者の意識の存在の有無を脳波検査により検出しようと考えた。正常な意識を持つ人が手やつま先を動かしているイメージを浮かべると、脳波の特定周波数帯出力が変化する現象(出力低下をERD、出力上昇をERSという)がμ波とβ波の領域で見られることが知られている。この領域の脳波を検出するために、多チャンネルの脳波測定用ヘッドキャップの129電極のうち、運動野をカバーする25電極からの情報を得て、変化のパターンを患者と健常人の間で比較することにした。
10年7月から11年6月まで、英国とベルギーの2施設で、外傷性脳損傷の患者と非外傷性の脳損傷の患者を登録。植物状態と最小意識状態を区別するために開発された意識状態評価指標のComa Recovery Scale-Revised(CRS-R)のスコアが植物状態の基準を満たした16人を分析対象に選んだ。患者のうち、外傷性脳損傷は5人で年齢の中央値は29歳(レンジは14~45歳)、非外傷性脳損傷は11人(無酸素症に起因する患者が9人、脳卒中が原因の患者が2人)で、年齢の中央値は44歳(30~63歳)だった。さらに、健常コントロールとして12人の大学関係者に参加を依頼した(25歳、21~31歳)。
患者は、脳波測定中に、指示に基づいて右手と足指を動かすイメージを浮かべる課題をそれぞれ4回以上完了した。コントロールにはそれぞれ6回以上実施した。具体的には、「ブザーが鳴ったら右手を握って開く動作をイメージしてください」、「ブザーが鳴ったら両方の足指を動かし、その後リラックスする動作をイメージしてください」と指示した。どちらの課題においても筋肉の動きを意識するよう求めた。
著者らは患者と健常人の脳波を比較し、指示されたイメージに特異的な脳波の変化を抽出して、健常コントロールで見られたパターンと同様の、運動イメージの存在を一貫して示す、統計学的に信頼できるマーカーを探した。
患者のうち3人(19%)、すなわち、外傷性脳損傷患者5人のうちの2人(20%)と、非外傷性脳損傷患者11人のうちの1人(9%)について、2通りの指示の両方で、健常人の反応と同様の脳波の変化が繰り返し検出できた。その間、身体に運動反応は全く見られなかった。
ロジスティック回帰分析では、脳損傷発生時の年齢、発生からの時間、脳損傷の原因、CRS-Rスコアといった要因と、意識の存在を示す脳波の変化の間に有意な関係は確認されなかった。
厳格な臨床評価が行われていたにもかかわらず、植物状態と診断されていた患者の一部は、健常人と同様に指示通りに運動をイメージすることが可能だった。脳波を指標とする方法は安価で、測定機器は持ち運びできる上に、データはfMRIで得られると同様に客観的だ。無動状態だが認知機能や意識の存在がうかがえる人々に対して、ベッドサイドで広く適用できると考えられる。
さらに脳波は、コミュニケーションツールとしても有用と期待される。例えば、右手を握る動作を想像すればイエス、足の指を動かす動作を想像すればノーといったルールを設けて患者と対話することが可能になるかもしれない、と著者らは述べている。
原題は「Bedside detection of awareness in the vegetative state: a cohort study」、概要は、Lancet誌のWebサイト で閲覧できる。