政府・与党の社会保障・税一体改革成案に示された受診時定額負担の導入に対し、医療界だけでなく民主党議員からも批判が相次いでいる。今後の制度改正に向けた議論が紛糾するのは間違いない。


 政府・与党社会保障改革検討本部が6月30日に決定した社会保障・税一体改革成案。2010年代半ばまでに消費税率を10%まで上げることが示された。一方で、医療分野の給付重点化策の一つとして掲げられたのが、「高額療養費の見直しによる負担軽減と、その規模に応じた受診時定額負担等の併せた検討」だ。

 高額な医療費がかかる癌患者などの負担軽減のため、高額療養費制度で定めた月額負担の上限を下げる一方で、外来患者の窓口負担を増やす考えが示された。成案では、高額療養費見直しで公費負担が最高1300億円増えると試算。そこで、これと同額程度を、受診時定額負担や外来受診の適正化で補おうというわけだ。

 現時点では外来受診時の負担は、初再診の患者の一部自己負担(一般3割、70歳以上1割)に100円を上乗せする案が想定されている。ただし、低所得者対策を盛り込む方針。厚生労働省は今後、社会保障審議会医療保険部会で方向性を決定して中央社会保険医療協議会などでの検討を経て、12年の通常国会に法案を提出し、なるべく早い時期に施行を目指す考えだ。

与党議員からも異論噴出
 そもそも、03年に小泉内閣が被用者保険と国民健康保険の自己負担を3割に統一した際、「医療保険の給付率は将来にわたり7割を維持するもの」という一文が改正健康保険法の附則に盛り込まれた。そのため、負担率のさらなる引き上げはできない。そこで政府・与党は、受診時定額負担の上乗せを打ち出したわけだ。

 ところが、医療界や患者団体などからこの定額負担に反対が続出。日本医師会は「受診回数の多い高齢者の重荷になるほか、当初は定額100円だとしても、将来、額が引き上げられるのは明らかで受診抑制が起こる」(副会長の中川俊男氏)と批判した。

 7月21日の社保審医療保険部会でも反対が相次いだ。患者団体である全国骨髄バンク推進連絡協議会前会長の大谷貴子氏は財政難の状況に理解を示しつつも、「100円とはいえ受診するたびに負担を強いられれば、患者の反発は強まるはず。国民全体で(高額療養費見直しの費用を)負担する制度にすべきではないか」と指摘した。

 さらに、与党である民主党の議員からも異論が噴出するありさま。8月4日に開かれた「適切な医療費を考える議員連盟」の総会では、受診抑制が生じる懸念だけでなく、高額療養費の見直しとセットにした点を問題視する声が多くの同党議員から上がった。医療費増を患者間のみに付け回す今回の案は、国民全体で医療費を負担する国民皆保険制度の理念に反するというわけだ。

 同議連顧問で財務副大臣(当時)の桜井充氏は総会で、「国民皆保険の根幹を揺るがす制度。絶対に阻止すべき」と強く訴えた。財務副大臣の立場にあるだけに同氏の発言は今後の議論に影響を及ぼす可能性は高い。

 同議連事務局長で参議院議員の梅村聡氏も、「公費、保険料、患者の自己負担の3つを調整して医療費増をどう補うかを議論した上で、ベストな方法として定額負担を提案するのであればまだいいが、今回はその議論が全くされていない」と話す。


 現在、同議連は厚労省に対し、受診時定額負担だけでなく保険料の引き上げといった他の手段で高額療養費見直しの財源を賄った場合のシミュレーションなどを提示するよう求めている。それを踏まえて、同省などに意見書を提出する方針だ。

 今回の成案は閣議で報告されただけで閣議決定ではないため、実現可能性は不透明。今後の議論が紛糾するのは間違いないが、頓挫する可能性もありそうだ。