「あれ、これ何だろう?」見慣れない教育ローンのダイレクトメールを見て、封を開けた知人の医師は、首をかしげたそうです。「まだ子供が小さいのに、どこかで個人情報を入手して送ってきたんだろうか?」。彼からそのパンフレットを、ちょっと見せてもらいました。

 パンフレットは、「少子化で大学全入時代といわれているものの、それでも医学部に通うのは経済的にも大変です。わが社は医学部に通うお子様のご両親に、低金利で融資させていただきます」といった内容でした。

 米国では、メディカルスクールに通う医学生の多くは、長期間の修学期間をしのぐために教育ローンを利用するのが定番と聞いていましたが、そろそろわが国も似たような状況になっていくのかな、といろいろと調べてみました。

 まず、必要な資金ですが、修学費用の中心となる授業料だけでも6年間で、国公立大学は300~400万円、私立大学で2000~5000万円くらいかかります。授業料のほかに、教科書代や実習費などの費用が必要ですし、親元から離れて学ぶ学生には家賃などの生活費がかかります。

 これに対して、教育ローンはさまざまなものがあります。政府系では、日本政策金融金庫の「教育一般貸付」や「郵貯貸付」がありますが、限度額が200~300万円ですから、私立大学向けとなれば民間ローンがメーンということになるでしょう。

 一口に民間の教育ローンといっても、銀行、共済、信用金庫、信販系、とさまざまな種類があります。民間の教育ローンといっても、要は金融機関のリテール(小売り)商品ですから、その他の商品と同じように、固定金利と、変動金利があります。無担保のローンもありますが、有担保の教育ローンの方が金利は安く、貸付限度額も上がるのも他の領域とパラレルです。そういう意味では、教育ローンといっても、その内実は金銭消費貸借に過ぎません。

 ところで、実際に教育ローンを借りて、どう返していくかは、個々の事情によりますので、あまり具体的なことはわかりません。先日もある国公立大学の医学生から、「ある私立医大で行われた東医体の試合に参加したら、キャンパスの学生用駐車場には高級外車がずらりと並んでいて目を丸くしました」と話していました。しかし、一昔前に講演にお邪魔したある私立医大の女性研修医は、「医家の子弟ではないので、住宅ローンをしのぐほどの教育ローン残高を抱えて必死でがんばっています」と現況を教えてくれました。同じ大学、同じ教室でも、さまざまな事情の下、学生は共に学んでいます。

 ただ、このところは医療機関の倒産が目立ち、診療報酬改定で再診料がどう設定されるのが死活問題だという声が上がるのも誇張ではないように感じられます。いずれにせよ、教育ローンのダイレクトメールが飛び交うような環境に変化しつつあるようです。

 インターネットのQ&Aサイトでは、医学生教育ローンの実際について尋ねる質問に対し、無理なローンを組んで自己破産に陥ったり、無理なアルバイトなどで身体を壊さないのが肝要だというアドバイスや、うちは医家ではないが、子どもが教育ローンや特待制度をうまく利用して何とか医師になれましたという体験談が掲載されていました。

 米国では、教育ローンの利息が高く、借りる側の負担が大きいとして問題になりつつあるようです。わが国もキャリア形成が容易ではなくなりつつあり、教育資金確保や返済のにも賢しさが要求される時代に突入しているといえそうです。