「1カ月ほど前、お風呂に入った時に手がふやけ、指を曲げにくくなったのを自覚した。その日から、両手を水につけると1~2分で手がふやけて痛みが生じるようになり、身体も洗えない」。熊本市立熊本市民病院皮膚科部長の木藤正人氏の元に、こうした主訴の患者が近医から紹介されてきた。


症状は、冷水より温水に浸したときの方が強く出現。20分ほどで消失するが、繰り返しているうちに手の皮がむけてきたという。発症部位は手掌や指腹で、受診時は同部位が乾燥し、軽度の鱗屑角化を認めた。木藤氏は、aquagenic wrinkling of the palmsAWP)を疑った。

手を水に浸し症状を再現
 AWPとは、短時間水に触れることによって、指腹や手掌の皮膚に白色浸軟化を生じ、それを繰り返す間に角化や落屑が生じるようになる疾患だ。同部位に、半透明から白色の小丘疹を生じるものもあるが、その程度は様々。痛みや痒みを訴えるケースが多く、中には、「水に短時間しか触れない」と日常生活に支障を来す患者もいる。

 この疾患は、1996年にEnglish氏らが「Transient reactive papulotranslucent acrokeratoderma」として論文発表しており[1]、その後、「Aquagenic Palmoplantar Keratoderma」「aquagenic syringeal acrokeratoderma」といった複数の疾患名で発表されてきた[2][3]。最近は、「aquagenic wrinkling of the palms(AWP)」の名称が主流になっている。若い女性や多汗症の人に多く、足に症状が起こることは稀だといわれている。

 木藤氏は、「『お風呂ですぐ手がふやける』と訴える患者は以前からいたが、AWPの存在を知るまでは「『長湯でもしすぎているんじゃないですか』などと言って済ませてしまっていた」と振り返る。「症状の軽いものも含めると年々報告数は増えており、われわれの論文[4]を読んでAWPを2人も紹介してくれた開業医の方もいる。診療所でも年に1人くらいは遭遇している可能性あるので、ぜひ念頭に置いてほしい」と同氏は話す。