先日、連載「勤務医労働相談所」で改正育児・介護休業法の概要が紹介されました(2009.12.10「ダンナと一緒に育児休業を取ろう!」 。現行の制度で育児休業を取得している立場で、この改正について思うところを書かせていただきます。

 核家族が主流の現代において、充実した子育てをするには、父親の育児参加と、職場のサポートが不可欠だと思います。今回の改正育児・介護休業法は、「夫の子育て参加を推奨する」という目的もあり、男性が育児休業を取りやすい条件が盛り込まれており、ありがたいことだと思います。

 しかし、この「父親の育児参加」をどうとらえるか、各家庭で異論のあるところではないでしょうか。私は、母親の育児負担を均等に分けるのではなく、父親には父親にしかできない役割を担うことで、育児に関わる方向になればいいなと思います。「母親は2人も要らない」からです。

 父親に望まれる役割の中で、最たるものが、生後まもない赤ちゃんと母親が安心して生活できるような、環境作りだと思います。赤ちゃん単独を世話の対象としてとらえるのではなく、母子を一体とみなし、母子を温かく包み込むような視点から育児参加していただきたいなと思うのです。

 例えば、炊事や掃除を父親に手伝ってもらうことができれば、母親の家事の負担が減り、母親はその分余裕を持って赤ちゃんの世話をすることができるでしょう。日常的に父親の帰りが遅い家庭であっても、いつもより30分でも早く帰宅してくれるだけでも、母親の精神的安定が得られるかもしれません。

 また、子供が生まれると、どうしても子供の世話をするだけで手一杯となり、「夫のためにできること」が少なくなることを、ストレスに感じる母親もいると思いますが、そういうときこそ、「俺に気を使うな、赤ちゃん第一だ」などの温かい声かけも、必要ではないかと思います。

 わが家の場合は、夫の育児休業をことさらに望むことはありませんでした。動物園の猿山でよく目にする、母親の胸にひしとつかまる猿の赤ちゃんと同じように、人間の赤ちゃんも、生後間もないうちは、本能的に母親を求めているはずだと思ったので、私が1年間の育児休業を取得させてもらうのが最善だと思ったからです。



さて、上記の連載記事でも触れられていたように、育児休業法が改正されても、職場の理解がなければ、現実的にその恩恵を受けることはできません。「育児休業=戦力が減る」という認識が根強い職場では、育児休業の取得が歓迎されない状況は変わらないと思います。

 女性、男性関係なく、医師として貴重な戦力となっている状況で、育児休業を希望通り取得することができるよう、職場の理解を得るには、一体どうしたらいいのでしょうか。

 私の提案ですが、育児休業を、“育児大学”への“短期留学”と考えるのは、いかがでしょうか。

 育児を通して、父親も、母親も、人間的に大きく成長します。普段、職場で「先生、先生」と呼ばれ、敬意を示される立場であっても、わが子の前では、ただの「父ちゃん、母ちゃん」です。毎日、毎日、好きな時間に起きては泣き、抱っこをせがむ小さな存在が相手では、自分の思い通りにことが運ばないことを嫌というほど味わいます。幼く弱い人に寄り添うことで、我慢と優しさを覚えます。わが子が、全身全霊を使って、一日毎に成長していく過程を目の当たりにして、人間の生命の素晴らしさを学びます。夜中に「子供が熱を出した」と救急に駆け込んでくる親たちの気持ちが、痛いほど分かるようになります。

 もちろん、育児休業を取得しなくても、こうした経験を得ることは可能だと思いますが、丸一日中、わが子の世話をする期間を持つということは、何物にも替えがたい貴重な経験だと思います。きっと、育児休業から復職した際には、より豊かな精神力を持った医療者として、診療に向かうことができるのではないか、せめて自分はそうありたいと思います。

 職場の皆様には、よい医師を育てるための投資だと思って、医師の育児休業の取得に対し、全面的なサポートをいただきたく、心からお願い申し上げます。