中原の虹 第三巻/浅田 次郎
¥1,680
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第2巻で西太后が亡くなり、この第3巻では馬賊の張作霖が勢力を拡大していく様子と袁世凱の復権が描かれていますが、ちょっと盛り上がりに欠ける感があります。
袁世凱を総理大臣とする場面や清朝皇帝退位の場面で幼い宣統帝を西太后の霊が助けるという構成もムリがあるような気がしました。
第4巻で完結となれば、この巻も読まざるを得ませんが、中だるみという感じがします。
もう少し張作霖に焦点を絞った構成にしたほうがよかったのではないかと思いました。

もしもし、運命の人ですか。/穂村 弘
¥1,365
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書評雑誌ダビンチの連載がまとめられた恋愛に関するエッセイ集です。
著者は歌人で1962年生まれということですが、短歌の世界での評価は全く知りません。
人生になにかプラスになるとか考えさせられるとかいう本ではありませんが、ほぼ同年代なのに恋愛に関する本気度が高く、相手との距離感の計り方など、真面目に考察しているところが面白く、文章が軽妙なので楽しくは読めます。

環境問題はなぜウソがまかり通るのか (Yosensha Paperbacks (024))/武田 邦彦
¥1,000
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環境問題には、反論できない「善」の押し付け的なところがありますが、そうした胡散臭さに対して、反論する材料を提供している本です。
ペットボトルのリサイクルは、実際には「リサイクル」として回収されるだけで廃棄されており、結果として、ペットボトルの使用量は7倍、ごみも7倍となっていること、猛毒として報じられたダイオキシンは自然界に普通に存在している物質でありることなど、あまり知られていなかったことを科学的、実証的に説明しています。
リサイクル、ダイオキシンともに、自治体は税金を投入するだけで、それにより儲ける業者がいるため、仕組みが温存されてしまうという理屈も説得力があります。
また、温暖化問題については、北極海の氷が溶けても海面は上がらないこと、温暖化すると南極の氷は増えることなど、温暖化問題で間違えやすい点を指摘し、京都議定書については、遵守してもほとんど温暖化対策には効果のないことを説明しています。
筆者は、環境問題を軽視しているわけではなく、こうした間違った言説によって、真に解決すべき問題から目が逸らされ、利益を得るものたちがいることについて、憂いています。
確かに温暖化云々よりも化石燃料がなくなることのほうが子孫の生活に与える影響は大きいでしょうが、それを解決しようという試みは大きな流れとはなっていません。
本書がすべて正しいかどうかはわかりませんが、環境問題を考える上で参考になる本だと思います。
「不都合な真実」を読んだ後のような違和感はありませんでした。

この国が忘れていた正義 (文春新書 (582))/中嶋 博行
¥746
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凶悪犯の人権、いじめっ子の教育権が優遇される「犯罪者福祉型社会」を廃し、正義を取り戻すために「処罰社会モデル」を提唱している書です。
安易な厳罰化・応報刑論ではなく、功利的な視点、被害者救済の視点からの主張となっており、非常に共感できる内容となっています。
米国の「治療モデル」から「正義モデル」への転換、性犯罪者にはプライバシーがないも同然のミーガン法などを紹介し、日本でも同様の考え方の変化が必要と主張しています。
刑務所、少年院への入所者の再犯率は高く、日本の司法が掲げる「更正モデル」は破綻していることや、被害者は加害者から賠償を受けるには民事裁判による以外にはなく、「被害者に一生かけて償う」などという加害者の言葉は裁判のときのみである現状から、犯罪者を厳しく働かせて被害者の補償に充てる刑務所民営化、出所後も補償を継続させる公設取立人制度の新設、民刑併合の附帯私訴復活など具体的な案を出しています。
いじめ問題については、「人間教育論」が最大の元凶であり、「社会で許されない行為は学校でも許されない」というあたりまえのルールを当てはめるべきであると主張しています。
「更正モデル」か「賠償モデル」かを考えるにあたっては、そもそも更正が可能なのかということが検討されなければなりませんが、再犯率の多さを考えると、「更正モデル」は破綻していると言わざるを得ず、被害者の権利に配慮した「賠償モデル」のほうが社会全体のために優れていると感じます。
司法の問題、いじめ問題について、非常にわかりやすく納得できる内容の主張を述べた本です。

「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書 61)/岡田 斗司夫
¥798
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マンガやアニメの悪役が目指す「世界征服」について検証した本です。
「第1章 世界征服の目的」では、世界征服の目的を、「人類の絶滅」「お金が欲しい」「支配されそうだから逆に支配する」「悪を広める」などに分類しています。
「第2章 あなたはどんな支配者か?」では、支配者のタイプを「魔王」「独裁者」「王様」「黒幕」に分類しています。
「第3章 世界征服の手順」では、「目的設定」「人材確保」「資金の調達と設備投資」「作戦と武装」「部下の管理と粛清」「世界征服・その後」と段階を分けて分析しています。
最後の「第4章 世界征服は可能か?」では、タイトル通り、現代において世界征服は可能かどうかを論じています。
結論としては、豊かさを達成してしまった現代では、「世界征服」は不可能であるという結論です。
それぞれの分類、分析において、「ドラゴンボール」や「北斗の拳」、「仮面ライダー」などの例が出てくるのはそれはそれで面白いのですが、最後の結論のところの議論が浅薄で、やや期待はずれでした。


著者は元JTマーケティング部長。
当然偏りはありますが、著者もその点は認識して書いており、あとがきでは、発表するかどうか迷ったことも書かれています。
喫煙による喉頭がんや肺気腫、肺がんなどへの影響は認めつつも、数値化できない効用があることについて述べています。
原因と結果、臓器への影響などの二元論、機械論的な医学のみでなく、人間をトータルのシステムとしてみた場合、タバコのプラスの効果もあるだろうという主張です。
また、「子供の受動喫煙が成績を下げる」というような研究に対しては、受動喫煙との相関ではなく、親の教育レベル(教育レベルの高い人のほうがタバコを吸わない)こそ因果関係があるはずで、統計の誤用ではないか、というような反論も述べています。
全体として、目新しいことが書かれているわけではないですが、喫煙者にはちょっと気持ちが楽になる本です。

邪悪な人を痛快に打ちのめす!―振りまわされない、疲れない、「自分中心」の心理学/石原 加受子
¥1,365
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著者は、心理カウンセラーで、「自分中心心理学」を提唱する心理相談研究所オールイズワン代表。
「自分中心心理学」とは、そんまんまですが、自分を中心に生きてみよう、というものです。
本書では、いろいろなタイプの「邪悪な人」を例に挙げて解説をしていますが、著者の言いたいことは、プロローグにある「相手を傷つけること」と「自分を傷つけること」は等価で、「「相手を傷つけること」はノーだけど「自分を傷つけること」もノーですよ、ということに尽きると思います。
悪くはないですが、この部分だけ読めば十分かなと思います。

上海クライシス/春江 一也
¥1,995
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上海領事館の領事が自殺した事件をヒントに書かれた小説で、上海領事館のノンキャリア電信担当官が、中国の公安に絡め取られる話を軸として、ウィグル人の悲劇や中国共産党の腐敗、環境問題、CIAの動きを絡めたリアリティのある政治ミステリーとなっています。
575ページの大部ですが、テーマが壮大すぎたのか、後半はちょっと駆け足になってしまったのが残念です。
2008年の北京オリンピックが焦点となるはずなのに、話は基本的には2006年で終わってしまっています。
その間の話でもう一冊小説が書ける素材がありそうです。
中国の西域の実態や公安の実態など、かなり綿密に調査されていると思われ、知識としては面白く吸収できたのですが、小説としての出来はやや完成度が低い気がしました。

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891)/福岡 伸一
¥777
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著者は分子生物学者で、膵臓から消化酵素が放出されるメカニズムを研究していたようです。
タイトルとは違って、著者の研究生活やDNAの研究史などが述べられており、最後に著者の研究について書かれています。
「生命とは何か」について、著者なりの見解が書かれているのかと期待して読んだのですが、「自己複製を行うシステムである」という見解を否定しながら、著者の見解ははっきりとは書かれていませんでした。
ベストセラーで、茂木健一郎氏や内田樹氏が帯で推薦していたので、興味を持って読んだのですが、期待とはちょっと違う内容でした。

反転―闇社会の守護神と呼ばれて
¥1,785
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エース検事から「裏社会」の弁護士に転じた著者の自伝です。
著者は、平戸の貧しい村で育ち、検事となって数々の事件を手掛けたあと、弁護士となり、バブル紳士たちと付き合い、現在は詐欺容疑で起訴され、上告中の身となっています。
検事時代に手掛けたのが、佐賀県知事汚職事件、阪大ワープロ汚職事件、文部省ノンキャリ収賄事件、撚糸工連事件、平和相互銀行、不正融資事件、三菱重工CB事件、福岡県苅田町長公金横領事件など。
捜査や立件の様子、上からの圧力などが実名で描かれています。
「裏社会」の人脈としては、山口組五代目組長渡辺芳則、山口組若頭宅見勝、「アイチ」の森下安道、「イトマン」元常務伊藤寿永光、許永中、「五えんやグループ」中岡信栄、「イ・アイ・イー」高橋治則など続々と登場します。
また政治家の山口敏夫、安倍晋太郎なども出てきます。
ヤメ検の辣腕弁護士ということもあり、「裏社会」の人たちに頼られていたということもあったと思いますが、弁護士になってからの儲け方も半端ではありません。
最後は古巣の特捜部から目を付けられ、石橋産業事件を巡って詐欺罪で訴えられて一審では懲役4年、二審では懲役3年の実刑判決となり、最高裁に上告中です。
検事時代の話では、汚職の捜査で政治家や官僚の実態とともに検察の内部が描かれ、弁護士になってからは、暴力団やバブル紳士の様子が描かれていて、裏面史として興味深く読めます。