前回ご紹介したものと、同工なのが手に入りました。『〔新式〕日用いろは辞典』(昭和3年刊)です。ど~ん。



・どうしてこう、すぐばれることをするのか、とても興味深いですね。五十音順で辞書を作っちゃったけれど、何だか売れない。じゃ、ともかく、イロハ索引をつけましょうや、お、そうだ、書名も替えましょう、うんそれがいいい・・・ とかでやっちゃったんでしょう。

・しかし、なんだね。古いタイプの本には(いや、現代のものにもあるかな)、「尾題」と申しまして、本文の終わりにも書名が記されることもあるんでござんす。「〔音引〕現代日用語辞典」。すばらしい書名です。「現在使われている身近な単語を発音から引ける辞典です」と言ってるんです。

・右端の「ワ-ツナニヒホメラリルレン」は、因数分解みたいなもの。「ワツ~・ワナ~・ワニ~・・・・」と解釈するものですね。「ー」以下は2字めの仮名をまとめて記したもの。クレーバーかも(語数が少ないので、そこまで丁寧に示さなくてもと思います)。



・不評このうえない歴史的仮名遣では引かせずに、発音重視の並びになっている。しかも、歴史的仮名遣は、漢字の振り仮名として活かしてるので、歴史的仮名遣も引けるわけですね。考え方としては至極真っ当だ。お天道様もご照覧あれ。つまりは、内容と書名とが不即不離、人馬一体、一蓮托生なわけです。すばらしい!

・ああ、なのになのにそれなのに、何が不満で『〔新式〕日用いろは辞典』なんぞという名前に。「日用」しか合ってませんね。「新式」が「音引」に相当するのでしょうが、それなら「音引」の方が親切です。「新式」では、何が新しいか分からないじゃないですか。「見れば分かる」とも言われそうですが、本文見る前に分かってもらえた方がよいはずです。第一、「いろは」と言ってるそばから五十音順なんですから、「見ればバレる」と言い返してやりたい。



・で、最後にこれまた不可解なのが、和綴じであること。用紙は洋紙なのに洋装本ではないんですね。和綴じの方が、まだ安く仕上げることもできたのかもしれませんが、でも、そういう本は、当時でも圧倒的に少数派だったように思うのですが、都合のよい条件が揃っていたのかもしれません。それにしても、時間軸がここだけねじれている気がします。