・漢字・漢語の読みの話。法律などの「施行」はシコウ、建設・大工仕事の「施工」はセコウだと思っていた。最近の政治家はどちらもセコウと言うことにしたらしい。いやはや。

・念のため、手元にあった『明鏡国語辞典』初版でセコウを引けば「施行」「施工」ともシコウに送っているではないか。びっくり第一段である。

・さらに「施行」を見れば「「執行」と区別するために官庁などでは「せこう」ともいう」と! びっくり第二段だが、なるほど。この場合の「区別」とは、聞き誤りをさせないための配慮・便法ということ。意味・内容はもともと異なるのだから、その次元にまでは立ち入らない。こういう、現場での運用によってコトバの方に細工することはよくある。

・アニメなんぞを見ていると、たとえば戦争がらみのものだと「敵機、接近!」などとは言わず、「近づく」だったりする。同音語・類音語の多い漢語(読み)を避けるわけだ。でも、和語が出てくると緊迫感が霧散する気もするけれど、そこは拘泥しなくていいらしい。別に、現行の自衛隊用語にこだわる必要もないと思うが。未来・架空・SFとして作ってるんだし。軍事趣味の人からの、余計なクレームに対する意味もあるんだろうけれど、もっと作品作りの矜持をもって毅然としてていいんじゃないかと思う。

・絶賛リメイク中の『宇宙戦艦ヤマト』シリーズ、「艦長」のアクセントが「浣腸」と一緒なのには唖然とした。類音になる「班長」とかと強制的に離そうとしたものか。が、しかし。避けた方がよいもの(浣腸)と同音になるのは、同音衝突の回避原則からすると無理筋なんだが、それだけに必要性を知りたくなる。

・一部の鉄道会社や鉄鋼会社などでは「鉄」(=金+失)を嫌って、旧字やら「鉃」を使うことがあるのも同様。縁起をかつぐという理由があるらしい。

・話をもどそう。「施行」のセコウ読みは省庁などの現場の術語読みだった。で、政治家はその読みに染まったわけだ。それはそれで現代の政治のありようを象徴的に示しているのかもしれない。