
・福岡市博物館で本を見せてもらった。相変わらず節用集という、江戸時代の辞書である。一五冊ほど調査させていただいたが、一見して唯ならぬ版面のものがあった。一七世紀前半、しかもさらにその前半くらいのもののよう。寛永15年以降の、ちょっとせせこましい雰囲気とは違う。帰宅後、撮ってきた画像を突き合わせると寛永6年本(縦本)だった。これはいい。
・国会図書館にも同じ版木から刷りだしたものがある。が、それは3巻本。本来は、寛永6年に上下2巻で刊行されたもので、東京女子大学に一揃いある。昭和のはじめごろからの所蔵だが、なぜか知られず、『近世芸文集』付載の目録が出てからも注意されなかった。たまたま見とめて(というのも我ながら不甲斐ないが)調査に行ったら、国会図書館の3巻本(寛永12年刊)の、同じ版木による原態版だったのである。
・上下2巻だったものを3巻に仕立て直す…… 下巻の最初には新たに書名が書かれたいたのを、なかったかのように細工する。新たに中巻・下巻の最初の部分を作り、合わせて上巻末・中巻末の細工するのである。そんな手間をかけずとも、そのまま再版すればよいのにと思う。が、そうはしないのだから、寛永年間の後半には「この種の辞書は3巻本じゃないと売れないジンクス」があったと考えることになる。そのカラクリは別に書いたので省略。
・で、博多市博本も原態版2巻本なのである。ただ、下巻だけなのが残念。でも、2巻本は、他に東京女子大学と神奈川県立文書館にしかないので貴重な存在だと思う(なお、3巻本は京都府立総合資料館にもあり)。
・ああ、来てよかったなぁ。「これもどうでしょう」と勧められて計18本も見せていただいた。なかには三階版『百人一首』があった。まだまじめに探しないけれど、このレイアトウ(紙面の三段がそれぞれに記事を展開していく)が物議をかもしたことがあった。敵方への権利主張の根拠になったヤツじゃないかな…… など、種々便宜をはかってくださった。求めるものには提供する姿勢に感銘を受けました。心より、御礼申し上げます。お世話になりました。
・調査を終えて、隣の総合図書館にいくまでに外のデッキで缶コーヒー。タリーズはなかったけれど、ガツンとくるブラックがあった。なんだか、疲れもないし(こういう思いをさせていただいて疲れては申し訳ない)、新幹線まで時間があるので総合図書館のパソコンルームで、資料整理と原稿書き2時間弱。さてあと1時間半。そろそろ博多駅に向かわねば。