・院生のころの方が、今よりも豊かだったなと懐かしむことがある。お互い「金がない」と言いつつ、なぜかクルマを持っていたり、読書会の後に必ず飲んでいたりしたものだった。私の場合はつつましく、ワインとコーヒー。週に一度だけドイツワインのQbAを飲んでいた時期が2年ほどはあり、コーヒーはレギュラーに限っていた。今よりも円が安かったから輸入品は高くついたはずなのに。
・大学生協もよくしたもので、レギュラーコーヒーの各銘柄がそこそこ取り揃えてあった。モカ、ブラジル、グアテマラ、マンデリン、キリマンジャロそしてブルーマウンテン。今でも同じように揃えているだろうか。大メーカーは薄利多売でブレンドばかり扱っているようなイメージがあるけれど。そうか。大学生協の品揃えにも昔の豊かさが反映していたのかもしれない。いや、思い出してきた。そう言えば私のまわりの人たちには、それぞれお気に入りのコーヒーがあった。
・私は訳も分からずマンデリンを主に、たまにガテマラに浮気をするくらいで大したポリシーもない。でも、今のように挽いてあるのを買ったのは短い間だけで、あとは手回しのミルでゴリゴリやっていた。濃いのが好きなので細挽きにして、じっくり注ぐタイプである。
・高校時代、数学の全国模試で2位になったのに国語学を専攻したという人は、モカが好きだったと思う。私の舌にはあの酸味は合わなかったけれど、常人には感じ取れない何かを味わっていたのかもしれない。
・現代語から牧師に転向した友人は、「これが一番コーヒーらしいんだよ」と、もっぱらブラジルの濃いのを愛飲していた。一種の趣味人とでもいうのか、はじめて高級ヘッドホンというのを聞かせてくれた人でもある。おそらく、あれがゼンハイザーとの最初の出逢いだったと思うが、オーディオに凝りだしたら金がなくなることだけは知っていたから、聞かなかったことにした。封印である。
・別の友人はキリマンジャロ。今もそうだろうか、ざっくり粗挽きにして手早く淹れ、さらりと飲むのが好みだった。クリスマスになると彼のアパートに押しかけて、フルーツカレーを振る舞ってもらった。バターライスにするのだが、「サフランなしでごめん」とかいう。すごい人だと思った。手土産くらい持参したはずだが、記憶がない。でも、さすがに義理は果たしていたんだと思う。就職祝いに『増補改正/早引節用集』(安永5年刊)を恵まれたくらいだから。しかし、このあたりも何気なく豊かである。
・「これ以外に飲めない」とブルーマウンテンを愛飲する猛者もいた。一度だけ御馳走になったが、実にうまかった。香りが高く、ことに飲んでから鼻腔をかけあがるのが素晴らしい。よく言われるように酸味と苦みのバランスが絶妙で、ほんのり感じる甘みもよく、コクがあるのに後口がさわやかなのも不思議だった。
・ただ、その1杯でコーヒー運を使い切ってしまったらしい。自分でも味わいたくなってブルマンを買ってみるのだが、豆が悪いのか、量をけちるからか、どうにもうまくいかない。岐阜に唯一残ったデパートのコーヒースタンドで注文したこともあった。ネル・ドリップが売りだというから期待していたら、どぼどぼと湯を注ぐ光景に目を疑い、頭をかかえた。私のブルマンに何をする。バイトなんだろうか。こういうところにも昔の豊かさが無くなっているんだろう。
・大学生協もよくしたもので、レギュラーコーヒーの各銘柄がそこそこ取り揃えてあった。モカ、ブラジル、グアテマラ、マンデリン、キリマンジャロそしてブルーマウンテン。今でも同じように揃えているだろうか。大メーカーは薄利多売でブレンドばかり扱っているようなイメージがあるけれど。そうか。大学生協の品揃えにも昔の豊かさが反映していたのかもしれない。いや、思い出してきた。そう言えば私のまわりの人たちには、それぞれお気に入りのコーヒーがあった。
・私は訳も分からずマンデリンを主に、たまにガテマラに浮気をするくらいで大したポリシーもない。でも、今のように挽いてあるのを買ったのは短い間だけで、あとは手回しのミルでゴリゴリやっていた。濃いのが好きなので細挽きにして、じっくり注ぐタイプである。
・高校時代、数学の全国模試で2位になったのに国語学を専攻したという人は、モカが好きだったと思う。私の舌にはあの酸味は合わなかったけれど、常人には感じ取れない何かを味わっていたのかもしれない。
・現代語から牧師に転向した友人は、「これが一番コーヒーらしいんだよ」と、もっぱらブラジルの濃いのを愛飲していた。一種の趣味人とでもいうのか、はじめて高級ヘッドホンというのを聞かせてくれた人でもある。おそらく、あれがゼンハイザーとの最初の出逢いだったと思うが、オーディオに凝りだしたら金がなくなることだけは知っていたから、聞かなかったことにした。封印である。
・別の友人はキリマンジャロ。今もそうだろうか、ざっくり粗挽きにして手早く淹れ、さらりと飲むのが好みだった。クリスマスになると彼のアパートに押しかけて、フルーツカレーを振る舞ってもらった。バターライスにするのだが、「サフランなしでごめん」とかいう。すごい人だと思った。手土産くらい持参したはずだが、記憶がない。でも、さすがに義理は果たしていたんだと思う。就職祝いに『増補改正/早引節用集』(安永5年刊)を恵まれたくらいだから。しかし、このあたりも何気なく豊かである。
・「これ以外に飲めない」とブルーマウンテンを愛飲する猛者もいた。一度だけ御馳走になったが、実にうまかった。香りが高く、ことに飲んでから鼻腔をかけあがるのが素晴らしい。よく言われるように酸味と苦みのバランスが絶妙で、ほんのり感じる甘みもよく、コクがあるのに後口がさわやかなのも不思議だった。
・ただ、その1杯でコーヒー運を使い切ってしまったらしい。自分でも味わいたくなってブルマンを買ってみるのだが、豆が悪いのか、量をけちるからか、どうにもうまくいかない。岐阜に唯一残ったデパートのコーヒースタンドで注文したこともあった。ネル・ドリップが売りだというから期待していたら、どぼどぼと湯を注ぐ光景に目を疑い、頭をかかえた。私のブルマンに何をする。バイトなんだろうか。こういうところにも昔の豊かさが無くなっているんだろう。