北村薫さんが『鷺と雪』で直木賞を受賞された。何度も候補に挙げられていて(←選評がけっこう手厳しい)、もうダメかとも思ったりしましたが(失礼!)、おめでとうございます。
・ただでさえ軽視されがちな「殺人のない推理小説」を、さらりさらりと書かれるので、直木賞はだめかなとも思っておりました。充実した読後感がえられない、と見られる気もしますので。また、「私と円紫師匠」連作や覆面作家連作ほどには、主人公・視点者に感情移入しにくい気がしたし。でも、こってりした書きぶりではないので、夏の読書にいいと思います。最後のエピソードで驚きます(史実(というほど大げさではないが)に基づいてはいるようです)。
・『街の灯』『玻璃の天』『鷺と雪』で連作中編一揃い。ちょっと不満なのは、主人公たちの生活の場が描ききれていないところ。昭和10年前後の上流階級の日常生活がもう一つ彷彿としない。どんな空間で生活しているのかが、ほとんど描写されていない。たとえば家一つとっても、間取り・建築法・和室洋室・調度品等々からかもしだされ、想起される雰囲気ってあるように思うのですが、そうしたものはほとんど描写されないんです。家人一人一人に専属の自家用車と運転手がつくところから連想してください、ってことかな。