くうざんさんのところで、泉鏡花「悪獣編」の末尾に、
篇中の妖婆(ようば)の言葉(がぎぐげご)は凡(すべ)て、半濁音にてお読み取り下されたく候
との注があることを知りました。「か゜き゜く゜け゜こ゜」などと書かれることがあるような発音、つまり鼻濁音でお願いします、ということなのでしょう。いや、鼻濁音としてよいかどうかもちょっと気にはなるんですが、まずはそう考えます。
・合唱などで「がぎぐげご」を鼻濁音で発音することを知った方もいるでしょう。伝統的な日本語(東京語)の発音とされるものでもあります。が、何でもかんでもではなく、単語の中や助詞(の一部)に出てきたガギグゲゴにかぎります。うるさくいえば、外来語や漢語の場合はこのかぎりではない、ということにもなりますが、とりあえず。
・でも、ちょっと考えると変。当時の日本語(東京語?)なら、そうした箇所は誰しも鼻濁音で発音していたでしょうから。したがって、妖婆の発話にだけその種の注記があるのは意味がないことになります。結局、伝統的な発音を再現してほしい、という注記ではなさそうだ、ということです。さてどうするか。
・注記には「凡(すべ)て」とあるのだから、語中・助詞にかぎらず、単語の最初のガギグゲゴも鼻濁音で読めということなのだ、と解してもよさそう。全体としてモヤモヤっとした不分明な聞き取りにくい印象の発音を想定したものでしょうか…… ほかにも考えることはありそうですが、とりあえず。