・ふと思い出した。小学校の高学年のころだろうか。日曜の夜のテレビ『遠山の金さん』で、金さんが吟味の場に姿を現すとき、「遠山左衛門尉様、御出座」と声がかかる。問題は「御出座」。長く長く引き伸ばされるのだが、当時の私にはどうしても「ごしゅつーーーぞーーーあーー
ー」と言ってるとしかと思えなかった。つづめて「ごしゅつぞあ」。なんだ、この日本語は。いまだ見知らぬ大人の世界の隠語か、あるいは江戸時代の専門用語か。子ども心にも不思議だった。
・主演が何度か代わりながらも続いていった人気シリーズ。後の主演者のときの例の掛け声は「ごしゅつーーーざーーー」。そこでやっと「御出座」に結びついた。そして「ごしゅつぞあ」が、伸ばすあまりに単音レベルまで分解し、母音まで挿入した例だと合点がいった。ちょっとや
りすぎだなと思う反面、正しいはずの「ごしゅつーーざーー」が妙に軽々しく、有り難みにかけるように思った。