とにかくド派手な花束を
8月生まれが誕生日にもらえる花といえば、十中八九ヒマワリを中心にしたアレンジだ。
うれしいよ。うれしいんだけど、ヒマワリってそんなに好きな花じゃない。夏にもらうならグロリオサとかストレリチアとか、思いっきりトロピカルな花がいいな。
男って季節関係なく赤いバラをくれたがるけど、なんで? どうせバラなら白か黄色が欲しい。カスミソウいらんわ。
そんな風に花の好みが“外角低め”に私から花をもらうリア友たちは戦々恐々だ。一歩間違えば「いやげもの」でしかないもんなぁ。
一度、ピアニストの友達が開いたリサイタルに呼ばれたとき、行きがけに花屋でブーケを調達することになった。彼女はいつもお姫様のようなロングドレスを着る。だったら花束も「ド派手な方がいいだろう」と思った。
店内を見渡して、ロックオンしたのは、もう完全に咲いてしまった薄紅色の芍薬だった。
普通、芍薬って「花が開いていく」のを楽しむものなので、蕾のほうが需要は多いだろう。そう思って、「その咲いちゃってる芍薬、全部買ったら少しオマケしてくれる?」と言ってみた。思っているより本数があったが、24本を20本分で、周囲のグリーンもオマケしてくれるという。
「どれくらいで切りますか?」
「いや、できるだけ切らないで、巨大な花束にしたいんです。舞台上で手渡すから、ド派手にしたいの」
「だったらリボンも大きく、華やかな方がいいですよね?」
というわけで、巨大な(ずっしり重い)、満開芍薬の花束を、酉の市の熊手のようにかついで会場に向かった。
花もち? 渡すときに華やかならそれでいい。後のことなど考えない舞台用の花束なので、思いっきり派手に、リボンはピンクのオーガンジーと金色のレースの二重にしてもらった。
ラッキーなことに、その日の彼女のドレスは上品なピンク。芍薬の色を少しだけ濃くした感じだった。
アンコールも終わって、みんながステージに近づいて花束を手渡す。私の花束は視界に入っていたはずなのだが、なかなか受け取ってもらえない。だってデカいんだもん。横綱の優勝杯みたいな感じだ。最後に彼女が他の花束をスタッフさんに預けて戻ってきた。
「はぁぁ、ぽてちゃ~ん。やってくれたわねぇ。帰りのタクシー代請求するからね」
そういいながらも、ニッコニコだった。
席に戻ったら、隣に座っていたオーボエ奏者の友人(大学の同級生)が言った。
「僕のときはワインにして。花束は禁止だ」
そ~んなこと言っちゃっていいのかな? 楽屋に1本ひっそりと差し入れすると思ったら大間違いなんだけど?
花束もプレゼントも「アレやコレや」と企んでいるときが一番楽しい。
↓うちの芍薬は、もう一息
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