「私は変人」を視覚化しちゃおう
ライターの仕事をしていたとき、飛行機の機内誌とか、クレジットカードのゴールド会員向けの情報誌とか、出版社が出す雑誌とは違う「企業案件」の仕事でも、けっこう書かせてもらっていた。
そういう場合、間に編集さんだけでなく広告代理店の営業担当、制作会社の営業担当、編集担当、そして、私たちライターやスタイリスト、カメラマン、デザイナーといったクリエイティブ・グループまで揃う「顔合わせ」があることが多かった。
出席の顔ぶれを見て、広告代理店の担当者から「明日は専務が出席されるので、ぽてさんは“カタギのコスプレ”で来てください」とかいうメールが入る。この人、以前私に「スーツで来てください」と連絡し、マゼンタピンクのパンツスーツを見て以来、“カタギのコスプレ”とか“就活生なりきりコーデで”とか言うようになった。
逆に「先方はクリエイティブ陣が顔を揃えてユニークなアイデアが出ることを期待していますので“お洒落して”来てください」とかも言う。そういう時は「サラリーマンは絶対に着ない」クセモノ系の身なりが喜ばれる。パッと見て、「ああ、この人がスタイリストか」とか「デザイナーなのね」とかわかるコスプレ。
前置きが長くなっちゃったが、何が言いたいのかというと、初対面の人は「見た目」、特に「着ているもの」で、「中身はだいたいこんな人だろう」と判断するということだ。
だから今、私のクローゼットには、いわゆる「無難」な服はない。だって私は無難どころか「難ばっかり」な人間なのだから、誤解されたら困るもん。毒キノコにだって、それなりの色で「毒があるよ」と伝える“親切心”があるもんだ。
もちろん、キチンとした喪服とかは用意しているが、お見合いに着ていって「良さそうなお嬢さんね」と言われるような服は皆無だ。誤った印象を与えると、後々面倒臭いことになる。
どうせ「見た目」で判断されるのだから、一目で「コイツはクセモノだ」と知ってもらったほうがいい。ヘンに「常識が通じるキチンとした人」とか勘違いされると、あとで「こんな人だとは思わなかった」とか言われて傷つくし。
「ヘンなカッコだから」という理由で、私と関わりたくないと感じる人は、もともとそれ以上仲良くなれない人だからそれでOK。そういうわけで、私はその日の気分で、思う存分「ヘンなBBA」のコスプレを楽しんでいる。
そもそも、この広い東京で、私の服装を気にして目クジラを立てる人なんかほとんどいない。というか、人間、そんなに他人の服装なんか気にしていないものだ。
この冬はけっこうな頻度で猫耳つきのキャスケット帽をかぶっていたが、ほとんど誰も「耳が生えている」なんて気がついていなかったはずだ。「BBAが猫耳つけている」なんてことが、もう想像力のアウトサイドだから、目に入っていても「見えていない」ことになる。そんなもんなのよ。
最近はカタギのコスプレが必要な場面もなくなったし、白髪のアラカンになったことで、どんなカッコでも無敵でできるような気分になっている。
いわゆる「イタイ」と言われるのは、若い子のコーデを完コピしたり、中途半端に「ほんの10歳ほど」若作りしちゃうからなのだ。超越しちゃったイカレた格好には怖いものなどない。
↓最近買った帽子はお気に入り
こんな小顔ではないが。
そうやって「私は変人ですよ」ビームを放っていても、話しかけてくる人はいる。「おもしろい帽子ね。もしかして自分で作ったの?」とか「失礼だけど、日本の方?」とか、「そういうお洋服はどこで買うの? 駅前のダイエーにはないわよね?」とか。
話しかけられれば、別に普通に、にこやかに対応する。それでいいじゃない。
私自身も同じようなことをやっている。相手はゴスロリちゃんだったり、紅ショウガのような赤髪くんだったりする。
総じて、ゴスロリちゃんはとてもマジメでマナーが良くて、誉められるとちゃんと「ありがとう」と言える人が多い。紅ショウガ男子には「ね、ね、その色が出るまで何回ぐらい脱色するの? 普通のサロンでできるの?」とか聞いてみたら、耳まで赤くしながら一生懸命説明してくれた。
ファッションで、その人の本当の人間性はわからない。でも、「こんな人には話しかけてほしくない」という人をブロックする虫よけ程度にはなる。
ちなみに私、宮益坂あたりをウロウロしていても、宗教の勧誘やアンケートおばさんや「あなたの手相見せてください」系に声をかけられたことは皆無なのだよ。
↓私のファッションアイコン、クルエラ様最高!