Power of the Destiny -33ページ目

第14話 コリアダム(2/3)

話はその二日前に戻る。


険しい山々を越え、アオリとルウはサラウント国とセンカーン国の国境の街コリアダムに近づいていた。
まだ、山に囲まれた山道を歩いていたが、道はならされ、ずっと楽な歩きやすい道へと変わっていた。
はるか眼下には、コリアダムの街が望めるようになってきたのだ。


「見て!やっとコリアダムの街が見えてきたわ。
ああ、…空の力をとても強く感じる。
間違いなくヒュウはあの街のどこかにいるはずだわ!」


もう山の左手に日が沈みかけ、オレンジ色の光に照らされた石造りの街が静かに輝いていた。
アオリの瞳も夕日を受け、キラキラと希望に満ち溢れている。
二人は少しずつ暗くなり始めた道を宿を求めてまた歩き出した。
サラウント国は一年を通じて、ほぼ温暖で過ごしやすい気候ではあるが、今の時期三ヶ月ほどは、太陽が昇っていない時間帯非常に冷え込むのだった。
山の上のほうでは雪が降ることもしばしばある。
日が落ちてからしばらく歩いていると、長旅で疲れた体にはこの冷え込みがとても辛くなってきた。
特に今晩の冷えは、この旅一番の冷え込みだった。
意気揚揚と燃えていたアオリの瞳も、今は少し寒さでうるんで元気を無くしているように見える。
鼻の頭を赤くしながら、アオリはぶるっと身震いした。
隣を歩いていたルウは、自分のマントをはずすとアオリの肩にかけた。


「アオリ様、今夜の冷えは格別です。どうぞ、お使いください。」

そう言うと、できるだけアオリを風から守ろうと、少しアオリの前を歩く。

「だめよ、ルウ。あなたが風邪をひいてしまうわ。」
アオリは、かけてもらったマントを外そうとした。
ルウはアオリのすぐ前に立つと、その両手を強くつかんで胸元に戻した。


「アオリ様をお守りするのが私の役目。
どうか、そのマントを風除けに使ってください。
そうしていただければ、私はうれしいのです。」


アオリの両手をつかんだまま、ルウはアオリを見つめた。
空には月ものぼり、星々がちかちかと瞬いている。
寒さでうるんだルウとアオリの瞳が、しばらく見詰め合った。
アオリの心臓は早鐘を打つように高鳴った。


「ル…、ルウ?痛いわ…。わかったから手を離してちょうだい。」


ルウは瞬間我に返り、アオリの手を離した。
「申し訳ありませんっ!出すぎた真似を!!」

すぐに後ずさり、振り返って先の道を急ごうとした。
そのルウの服の裾をさっとつかんでアオリは言った。
「待って!違うの。ちょっと驚いただけ。
本当はすごく寒かったのよ。ありがとう。」
「いえ、もったいないお言葉…。」
ルウはアオリの顔を見れないで、前を向いたままつぶやいた。


自分がしてしまったことを思い出して、顔から火が出るほど恥じていた。
そして自分の手のひらを見つめ、アオリの腕の細さ、柔らかさが蘇るのを感じた。
急に愛おしさが込み上げてきたが、ルウにはどうすることもできなかった。
二人は宿を探し当てるまで、無言で歩き続けた。



空には満天の星が輝いていたが、その星空を眺める余裕は、二人とも持ち合わせていなかった。さっきまで寒いだけだった澄み渡った空気が、火照った頬を心地よく冷ましてくれる。
しかし、二人の鼓動はたかなったまま、なかなか静まってはくれなかった。