条件
注意![]()
鋼の錬金術師の二次創作短編小説です。
そこはかとなくBL臭ぷんぷんでホモホモしいので、苦手な方はまるっとスルーしてください。
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「鋼の。」
執務室で窓の外を見ていたロイ・マスタング大佐は、エドワードのほうも見ようともせず言った。
外は曇天で今にも雨が降り出しそうだ。
さっきまで、夏の晴天が広がっていたのに。
エドワードは返事もせず、目線だけをロイへ向ける。
視線を感じ取ったのか、ロイは窓の外を見たままエドワードに話し始めた。
「君をセントラルに呼んだのは他でもない。賢者の石についての情報をつかんだからだ。」
エドワードの右の眉毛がピクリと動いた。
それからゆっくりとロイのほうへ体を向ける。
続きは?と言わんばかりに不遜な表情でロイを見つめている。
ロイはやっと窓から目線を外し、執務室のソファで偉そうに座っている少年を見やった。
金の髪に金の瞳、右腕と左足は 機械鎧である。
禁忌の人体錬成をしたために、右腕と左足を代償として失ったのだ。
瞳に強い光を宿した少年にロイは目を細めた。
「今日は弟は一緒じゃないんだな。」
アルフォンスの姿を一瞬探すようなそぶりで、部屋の中を見回す。
エドワードは気が長いほうではない。
続きを話そうとしないロイに苛立ちを覚え、口を開いた。
「それで?」
「まあ、そうかりかりするな、鋼の。」
明らかに苛立っているエドワードをおかしそうに見ながらロイは呆れたような口調で挑発した。
「一秒でも早く、こんな陰気くさいところから開放されたいんでね!」
エドワードはロイを睨むと、つかつかとロイのそばまで歩み寄る。
そして二人は机を挟んで向かい合った。
「情報さえ聞けば、こんなところに用はない。早く教えてもらおうか!」
今にもつかみかかりそうな勢いだ。
ロイはやれやれといった感じで溜息をつくと、伏せた目の奥をきらりと光らせた。
「教えてもいいが…条件がある。」
自然と口角が上がっていく。
エドワードは怪訝な顔をした。
「条件?」
「君には一つ貸しがあっただろう。その貸しを返してくれたら情報を渡そう。」
貸しという言葉にエドワードは瞳を曇らせた。
そうだ。
ついこの間、エドワードは自分の不注意でアルフォンスを危険にさらした。
ロイはそれを救ってくれたのだった。
とは言っても、アルフォンス一人でも切り抜けられる場面だった。
切り抜ける前に、ロイが勝手に手を貸したのだ。
しかし、アルフォンスはとても感謝していた。
エドワードにもお礼を言うようにと、しつこく言われたのを思い出していた。
悔やんでも悔やみきれない。あんなことが貸しになってるなんて。
「あんなことを貸しにするなんて、せこいんだな。大佐ってのは。」
エドワードはどうにもならない状況に舌打ちしながら悪態をついた。
「ふん、なんとでも言いたまえ。使えるものは何でも使うのが軍部のやり方だ。
君だってそうじゃないのか。私を利用して情報をつかもうとしてるだろう。」
エドワードは忌々しげに目の前の男を睨みつけて憎憎しげに言った。
「それで?何すりゃいいんだよ。」
ロイは漏れてくる笑みを何とか抑えていたが、もう無理だった。
満面の笑みを浮かべると、喉の奥からくっくっと笑いがおさまらない。
ひとしきりニヤついた後、机の中から紙袋を取り出しエドワードのほうへ放った。
「開けてみたまえ。」
言われるがままに紙袋を破り開けると、中から衣類のようなものが出てきた。
エドワードは手にとって広げてみる。
白いシャツに、紺色の大きなセラーカラーのついた上着とカラーの下を通してある赤いリボン、
それから紺色のプリーツスカートが出てきた。
「何だこれ?」
エドワードはわけがわからず、出てきた衣類をソファの上に広げた。
「それはなぁ、ある国の勉学を学ぶ生徒たちが着る衣装だそうだ。」
エドワードはますますわけがわからずにロイのほうを見る。
「実はな、先日ある国の習慣を視察したのだよ。
君くらいの年の少年は、それを着て高校というところに通って勉強するらしい。
私は軍に入る前は物を教える職業に就きたいと思っていたのだが、…まあ、このとおりその夢はもう潰えた。
だが、その生徒たちを見て、もう一度その夢が叶えたくなってね。」
ロイはそう言うと、エドワードに笑顔を向けた。
不気味なほど優しい笑顔を。
「エドワード君。私の夢をかなえてくれないか?
…もちろん嫌とは言わないよな。」
エドワードは一瞬悪寒を感じて、一歩後ずさった。
「大佐。あんたがどんな夢を見ようが、俺は一向に興味がない。
むしろ勝手に夢見ててくれって感じだ。
だけど、もしかして、…俺にこれを着ろなんて言わないよな?」
エドはもう一歩後ずさって、退路を確保しようとドアの位置を確かめた。
ロイは全く動じていない。
「鋼の。たまには勘が働くものだな。
そのとおり、君に生徒役を演じてもらって、私のつかの間の夢の手伝いをしてもらいたいんだ。
ああ、断っておくが、嫌なら嫌でいいんだ。強制はしない。
その代わり賢者の石の情報も諦めてくれたまえ。」
ロイは口端を吊り上げると、自分の椅子に深々と腰掛け、鋭い目線を投げかけた。
「君次第だよ。」
エドワードはロイの背中に黒い羽を見た気がした。
「悪魔め…」
そうつぶやいて、嫌々ソファの上の衣類に手を伸ばす。ロイの忍び笑いが聞こえた。
エドワードはロイの視線にさらされながら、着たこともない衣装をたどたどしく身に着けていく。
その国では、本当に男がこんなピラピラしたスカートを身に着けるのだろうか。
妙に短くてスースーする上着とスカートを身に着け、エドワードは頬を染めて決まり悪そうにロイを睨んだ。
「これでいいのかよ。」
ロイはご満悦といった表情で、目を細めエドワードを値踏みするように眺めた。
「ああ、上出来だ。」
そう言って椅子から立ち上がると、ロイはエドワードのほうへと近づく。
エドワードはこれから何が始まるのかと、身を硬くした。
近づいてきたロイは、エドワードの胸元に手を伸ばすと、リボンの形を整える。
「こうしたほうがずっといい。」
ロイは自分より背の低いエドワードの顔に自分の顔を近づけて言った。
かなりの上機嫌だ。
普段近づかないほどの顔の近さに、エドワードは困惑し、黒い瞳に見つめられてなんだか恥ずかしくなって顔を赤らめた。
ロイの顔をまともに見ることができない。
まだ目の前で微笑んでいるロイから目線をはずしたまま、エドワードはわざとぶっきらぼうに言い放った。
「これでもういいんだろ!早く賢者の石の情報を教えてくれよ。」
ロイは背筋を伸ばすと、首を横に振る。
「まだだ。まだ授業というものをやっていない。」
エドワードはがっくりと肩を落とした。ロイから教わることなんて何もない。
ロイは自分も軍服を脱いで、スーツに着替えた。
エドワードは、ロイのスーツ姿は初めて見る。
見慣れて吐き気のする軍服より、今着ている服のほうが何倍もマシだとエドワードは思った。
そして、そう思った自分にはっとして頭をぶんぶんと振った。
「どうした、鋼の。私に見とれていたのか。」
「そんなわけないだろ!」
図星をつかれて、エドワードは耳まで赤くなった。
ちくしょう見とれてたわけじゃない!エドワードはうつむいたままソファに腰を下ろす。
スーツに着替え終えたロイが、エドワードのそばにやってきて、隣に腰を下ろした。
「鋼の。」
急に声のトーンが穏やかになる。エドワードは落ちつかな気にロイを見た。
真面目な顔をして、エドワードの瞳を覗き込むように見つめている。
「な、何だよ。」
エドワードは目をそらせなくなって、見つめ合ったままロイの次の言葉を待った。
ロイの手がエドワードの顔に伸びてきた。
エドワードはビクッと身構えた。
その手はそのまま後ろへ回され、エドワードの三つ編にそっと触れた。
そして、そのまま三つ編を結んでいる紐を外す。
エドワードの髪がハラハラと解け、肩にフワリとかかった。
「髪を下ろすとこんな感じなんだな。」
ロイはエドワードに笑いかける。
「さて、何を学びたい?」
エドワードは困惑していた。ロイの手が首の後ろに回されたままなのだ。
いったいこの状態で何を学べというのか。
「あの、さ。大佐の手が邪魔で…勉強にならないんじゃねぇかな。」
エドワードは遠慮がちに言ってみた。
ロイはエドワードの髪の毛に指を絡ませると、息がかかるくらいの近さまで顔を近づける。
「どうだ、女の口説き方でも教えようか?」
今にも鼻と鼻がくっつきそうで、エドワードはドキドキした。
なんで大佐相手にドキドキすんだよと、内心舌打ち気味ではあったが。
ふと気づくと、もう唇が触れそうなくらいの近さにロイの顔があった。
エドワードは金縛りにあったように動けないでいる。
もしかして、これってキスとかされちゃうのかよ!?
エドワードがぎゅっと目をつぶった瞬間、電話のベルが鳴り響いた。
ロイは弾かれたように立ち上がり、けたたましく呼び立てる電話のほうへと大またで歩いていった。
「なんだ。」
受話器を取ると表情は一変し、軍の犬の顔に戻った。ようにエドワードには見えた。
それにしても…とエドワードは思った。
どうして大佐にキスされるかもしれないなんて思ったのか。
全くバカバカしい。
受話器を置いたロイは、くるりとエドワードのほうに向き直った。
「残念だが、私の夢もここまでらしい。茶番に付き合ってもらって悪かったな。」
殊勝な言葉を聞いて、エドワードは驚いた。
「最後に向こうの国の挨拶をしてもいいか?」
幾分かしおらしく見えるロイに、エドワードはしぶしぶ頷いてみせた。
ロイは悲しげに微笑むと、再びエドワードのそばに来て、エドワードをきつく抱きしめた。
エドワードは面食らったが、心臓が早鐘のように鳴っている。
もしかして、今度こそ…?いや、別に期待してるわけじゃないぞ!
誰に言うでもなく、自分に言い訳してみる。
「エド。」
耳元で囁かれ、エドワードは硬直した。
「エド。」
再び囁いてロイの腕に力がこもる。
「た、大佐。苦しい…」
エドワードは窒息しそうなほど強く抱きすくめられて、息も絶え絶えに言った。
ロイははっと我に返ると、エドワードを呪縛から解き放った。
「手間を取らせた。」
何もなかったかのようにそう言うと、ロイは自分の机の中から封筒を出し、それをエドワードに渡した。
「ほら、弟が来たようだぞ。」
窓の外は雲が晴れ、明るい太陽が顔を出していた。
その中をアルフォンスが向かってくるのが見えた。
「大佐!これでまた借りを作っちまったな。
しょうがないから、また賢者の石の情報と引き換えなら、夢の手伝いしてやってもいいぜ。」
エドワードは急いで着替えると、ロイに手を振って封筒を持って部屋を飛び出していった。
ロイは外に飛び出していったエドワードをまぶしそうに見つめていた。
Fin
ああ、ホモホモしくてすみません…
テレビアニメシリーズ始動を記念(?)して、だいぶ前に書いたものをアップしました![]()