第11話 道(1/2)
プロパリア城を旅立ったアオリとルウは、センカーン国との国境の街「コリアダム」に向かうことにした。
空の力の波動が北側から発せられているからだった。
「空の力を強く感じるわ。ヒュウはそう遠くない場所にいると思うの。」
薄紫色の腰まである長い髪を銀細工の止め具で一つにまとめているアオリがルウを振り返った。
日の光をあびてキラキラ輝く透き通るような髪に一瞬目を奪われながら、ルウはアオリと並んだ。
「アオリ様の強いお気持ちに、きっと空の力は引き寄せられてくるでしょう。
すぐにでもヒュウ様にお会いできますよ。」
ルウの力強い言葉に、アオリはルウの横顔を見上げた。
身長はアオリより頭一つ分くらい大きいが、淡い水色に光る髪を一つの三つ編にしている、女性のように美しい顔立ちの青年だ。
アオリの視線に気づき、優しい瞳で微笑んだ。
アオリは胸がドキドキした。生まれたときからいつも側にいて、アオリを守ってくれているルウ。
アオリには親よりも兄よりも、ずっと近い存在のルウが心の大きな支えになっていた。
いつも強い心を持って決断を下せるのは、優しい瞳で背中を押してくれるルウがいるからだ。
アオリはいつからか、ずっと幼い頃から、ルウに特別な感情をいだいていた。
それを表に出すことは決してしなかったが。
コリアダムへ行くには、航路と陸路の2通りあったが、現在ルトナックからの航路は幽霊船騒ぎのせいで閉鎖されていた。そのため陸路を通るしかなかった。
その陸路は、険しい山脈を越えなければならない厳しいものだったのだ。
その山脈は、比較的温暖な気候のサラウント国の中で、唯一雪が降る場所でもあった。
二人は辛い旅路を強いられることになった。
人々のざわめく声で目が覚めた。
徐々に目を開けてまわりの景色をゆっくりと見回す。
市場か何かだろうか、石畳の道の上にテントを張って、所狭しといろんなお店が軒を連ねていた。
元気な売り子たちの声があちこちから聞こえてくる。
その賑やかなとおりを入ってすぐの石造りの家の壁にもたれて、ヒュウが座っていた。
教室から転送されたままの服装、詰め襟の学制服のままだった。
少しだけけだるそうに頭を振ると、その場に座り込んだまま街の様子を眺めている。
「ここは…どこだ?俺はここで何をしているんだっけ…?」
つぶやいてみても答えは返ってこない。
頭の中にもやがかかっているみたいで、何も考えることができない。
しばらくその場に座っていたが、ゆっくり立ち上がると店があるほうへフラフラと歩き出した。
キョロキョロしながら歩いていると、皆、不信そうな顔でヒュウを振り返る。
着ている物が全く見たことのないデザインだからだ。
ヒュウはそんなことにも全然気づかず、ぼんやりと歩き続けた。
「こらーっ!待てーーー!!泥棒!!!」
突然大きな声が響きわたった。
ヒュウは驚いて足を止め、声がしたほうをなんとなく見やった。
ざわめく人込みの中から、一人の少年が急に飛び出してきた。
両腕にはたくさんの食べ物を抱えている。
少年は後方を気にしており、前にぼんやり立っているヒュウに全く気づかずに思いっきり突っ込んできた。
「うわっ!」
「うわっ!」
二人はお互いに弾け飛んだ。
少年が抱えていた果物や野菜やパンなども道に転がる。
少年はぱっと飛び起きて、食べ物をさっさと拾い集めると、まだ腰をついたままのヒュウの前に立ちはだかった。
「お前っ!よそ見して歩いてんじゃねぇよ!変な服着やがって。
口がきけないのか!?だまってんじゃねーぞ!」
ヒュウは呆然としたまま少年を見上げている。
その時人込みの中から、少年を追いかける声が聞こえてきた。
「こらーっ!小僧!!この、こそ泥めっっ!!」
少年はさっと顔色を変えた。
「やばいっ!おいっ、とっとと起きろ。捕まるぞ!」
「え?え?」
何だかわからないまま、ヒュウは少年に腕を取られると、その場から立ち上がって一緒に走り出した。
その逃げ足の速いこと、速いこと!追いかけてくる声は遠ざかり、すでに聞こえなくなっていた。
辺りを見回すと、静かな住宅街へと着いたようだった。
二人は肩で息をしながら、その場にうずくまった。
少年は顔を上げるとヒュウを見てつぶやいた。
「あれ?なんでお前ここにいんの?」
ヒュウはガックリと肩を落とした。