12日、各社一斉に日本郵便(事業会社)による非正規社員の雇い止め問題を報道した。朝日、共同通信、毎日などは数千人規模の雇い止めかと報道。
  ところが、読売、産経、時事通信などは、同社幹部からの情報として2千人という具体的な数字をあげている。数千人規模とした前記各社の、具体的な人数を会社は明らかにしなかったとする報道と真っ向から対立している。情報が混乱している。
  どうもその違いは以下の産経新聞の記事にヒントがありそうだ。
非正規社員雇い止め、2000人規模削減 郵便事業会社  2.12 20:11
日本郵政グループの郵便事業会社が、3月末で契約切れとなる非正規社員の契約更新をしない「雇い止め」によって、2千人規模の人員削減を行う見通しであることがわかった。同社には15万人強の非正規社員がいるが、収益が悪化しており、雇い止めで経費削減を目指す。労働時間の短縮などと組み合わせて、人員削減規模の抑制を図る。
  郵便事業会社は昨年12月、政治主導によって非正規社員のうち約6500人を正社員化したばかり。雇い止めは短期雇用者を対象に毎年実施している雇用調整施策で、2月末までに削減人員を確定する。現在、勤務成績評価や面談などを進めており、対象者には勤務日数や労働時間の短縮などを打診している。受け入れられない場合には、3月末で契約を打ち切る方針だ。
「雇い止めは短期雇用者を対象に毎年実施している雇用調整施策で、2月末までに削減人員を確定する。」
  今回の雇い止めリストラ施策は、繁忙期明けに毎年行っている、短期契約者を対象にしたものと。
  ウソだ。
  「
期間雇用社員のリストラ、全容が明らかに」という記事でも暴露したように、会社が示した雇い止めワークフローは、全期間雇用社員を対象としたものになっている。
  この記事は、大量リストラ施策が明らかになり、それが社会的に問題化するのを恐れた会社による意図的なリークではないのか
日本郵便東海支社が機密文書と銘打った指示文書がある。「平成22年度第4四半期及び平成23年度人件費削減に取り組み指示」という題名だ。
  各支店が取り組むべき人件費削減施策計画を具体的に示している。
 まず年度内に速やかに取り組むべき項目として、2段階の取り組みを求めている。
フェーズⅠ
 ・短期契約社員(アルバイト)の雇い止め
 ・超勤抑制
 ・余剰労働力の見極めと本人への声かけ
フェーズⅡ
 ・宅配便統合に絡む余剰人員の雇い止め。
これらは今3月末必達との指示。確かにこれだけを見ると今年度末までの人員削減計画は、短期契約社員を中心とした雇用調整が主たるものという印象を受ける。ただし、「宅配便統合に絡む余剰人員の雇い止め」というものがどれくらいの「範囲」を指すのかは具体的ではない。
  文書はその後に以下のように続く。
3.平成23年度人件費削減に関する支店取組スケジュール等の作成
  人件費計画については、平成23年度に実効をあげるためにも、平成22年度第4四半期を23年度実行計画の準備段階として位置づけ、15ヶ月間のスパンで取り組み計画を策定します。
とある。つまり今3月末までの上記フェーズⅠ及びフェーズⅡはあくまで本番のリストラに向けた準備段階であり、その後本格的なリストラ策を「各支店の削減計画を早急に作成し、できるものから速やかに実行してください」(下線、本文通り)とのこと。その計画書はすでに2月10日開催の郵便関係課長会議に提出されているようだ。
これを見ると、先の会社が記したワークフローとは微妙なスケジュールのズレが見て取れる。
  ワークフローには、今3月末までの全期間雇用社員を対象にした雇い止めフローを具体的に記していたが、東海支社の指示文書は、3月末はフェーズⅠ.Ⅱまでにとどめ、それ以降のリストラ策は年度内までに作成するようにとの指示だ。
  この文書は1月31日に開催された支店長会議以降に出された文書だ。雇い止めワークフローはそれ以前に出された文書。
  もしかしたら会社は、大量雇い止めという事態が社会的問題になるのを恐れてここに来て若干手直しの指示をしてきた可能性もある。先の報道のズレも、それを反映したものかも知れない。
  しかし、この東海支社の文書にもあるように、今後さらなる人件費削減に向けた具体的な計画書を速やかに提出するよう求めている。つまり、数千人規模の雇い止めリストラは、次年度中には確実に実施するという意向を、会社ははっきりと認めているということだ。
問題は、フェーズⅠ.Ⅱにも収まらないリストラの動きが、当の東海支社管内から報告されていることだ。
  ある支店では、道順組み立てさん達全員に対する今期限りでの雇い止め通知がなされている。これに対する郵政ユニオン東海地本よる緊急申し入れ書は「
道順組立の期間雇用社員の雇い止め、全国で!」という記事でも紹介したとおり。
さらに、本来なら今年10月末までの雇用延長としていた65歳以上の社員に対しても、今期限りとする雇い止め通告がなされている支店が報告されている。
  65歳以上の期間雇用社員は全国で現状でも2万人近くが雇用されている。
  これらの雇い止めを加えると、もうすでにそれだけで数千人規模の雇い止めが生じることは明らかだ。
  やはりそういう意味でも先の産経新聞の記事は正確さを欠いているといわざるを得ない。
ただし、会社はすでにこの問題に関して社会問題化するのを恐れている節も伺える。
  先の雇い止めワークフローに沿った、各人に対する勤務時間・日数減等の意向確認の動きが今日時点ではまだ報告が上がってきていない。
  今後の動向は不透明だが、さらに会社を追及し、一方的な雇い止めを許さないキャンペンーを続けることで、支店段階からでも圧力をかけて雇い止めを食い止めることは可能だと私は思っている。
赤字の責任は会社に責任がある。
  ユニオンや郵産労の会社内部留保金の暴露など、その経営実績の分析などを通しても、、今、大量に期間雇用社員の首を切らなければならない状態にはないことは明らかだ。
  何よりも、生活がかかった一人ひとりの労働者の事情を顧みない一方的な整理解雇はまったく不当なものだ。
  赤字の責任を現場労働者に押しつけるな。
  誰が現場を動かしているのか、今春闘で再々度見せつけてやろう。
 
「伝送便」