東京電力と共に脱原発をめざす会/福島原発事故調査委員会発行パンフから

プルサーマル:福島原発は実験台だ!!  

こんなに違うウラン燃料とプルトニウム入り燃料  

東京電力が明らかにしている相違点です。カッコ内は編集者のコメント

プルトニウム入り燃料(MOX)は、ウラン燃料にくらべて
1、放射線も熱量も大きい。( 燃料製造・輸送・装荷時に遮断が必要)
2、熱伝導度が下がる。( 事故時に燃料溶融の危険が高くなる)
3、融点が低くなる。( 事故時に燃料棒内部の圧力が高くなる)
4、気体状の放射能が増える。( 燃料棒内部の圧力が高くなる)
5、中性子が増える。( 炉内壁などが傷みやすくなる)
6、中性子と反応しやすい。( 発熱量が大きくなり炉内出力にムラができる)
7、制御棒のききめが悪くなる。( とっさの際の急ブレーキがにぶくなる)
8、使用済み燃料の発熱量が減りにくい。( 長期間プールで水冷が必要に)
9、国際原子力機関(IAEA)の査察が厳しくなる。( プライバシー侵害)
10、燃料輸送はトラックではなく船で専用港へ。( 漁業操業へ影響)
11、燃料製造費が高くなる。( コスト高または安全性切り捨て)
12、地元への見返りは燃料費の上昇分のみ。( 特に見返りなし)
 以上、とうていウランとほぼ同等に安全に使えるなどとは言えません。今回ようやくマイナス面も公表したことは評価してもいいでしょうが、安易に大丈夫というその安全意識は極めて問題です。本当に安全かどうかやってみなければわからないのです。専門家でも意見が分かれるのですから。


国・東電のウソを解説します。  

プルサーマルの安全性は実証されているのか!?

「海外で豊富な実績がある」(東京電力)
 実際は、→現在プルサーマルを行っている原子炉は世界でわずか20基。特に福島原発と同じ沸騰水型はドイツで2基あるだけです。
「日本でも実証試験が行われており、安全性は実証されている」(東京電力)
実際は、→沸騰水型の場合、実証試験は敦賀原発で行われていますが、たった2体の燃料集合体を装荷しただけです。福島原発で東京電力ではいきなり32体からはじめ5年後には192体にするつもりです。
プルトニウム入り燃料集合体の配置図
          (□ ウラン燃料  ■ウラン・プルトニウム混合燃料)
      たった2本で実績?!       これから190本も増やす実験が・・・・
敦賀で3年前装荷したときの例   5年後の福島第1-3号炉
 これではあまりに条件が違いすぎ、安全性が実証されているとはとても言えません。炉内にこんなにたくさんのプルトニウム燃料を使うのは世界でも例がありません。東京電力は福島をプルサーマルの実験場にしようとしているのです。

プルサーマルでウラン資源の節約ができるか?

核燃料のリサイクルにより、ウラン資源を20%節約できる」(東京電力)
 実際は、→20%節約できるというのは、プルトニウム燃料を装荷した原発は1きについてのこと。
 世界中のすべての原発で、プルサーマルを実施したらという夢のような話でしかありません。国・電力の計画どおり、仮に日本の原発の3分の1に相当する17基で実施できたとしても、世界のウラン資源に対する節約量は0・5%すなわち半年、可採年数が伸びるだけです。

プルサーマルの使用済み燃料の行き場はあるのか!?

リサイクル2回、その為の再処理は2010年ごろ方針決定(東京電力)
実際は、→現在、もっともプルサーマルに熱心なのはフランスです。フランスは先頃、プルサーマルで使用したプルトニウム燃料は再処理しないと決めました。同時にこれ以上プルサーマル実施を拡大しない方針を発表しました。長年実験の結果を踏まえてのことです。そもそも2回程度のリサイクルは、経済的にもエネルギー的にも却って無駄遣いで話になりません。毎年毎年取り替え燃料の35%を占める使用済みのプルトニウム燃料が確実に溜まっていきます。

プルサーマルは経済的か?

「プルトニウム燃料はウラン燃料に比べて加工賃が割高になるが、プルトニウム燃料を使う割合が小さいので電気料金に与える影響は小さい」(東京電力)
 実際は、→再処理経費や輸送などを考慮するとおっと高くなります。海外で再処理した場合で3倍、国内(六ケ所村)で再処理した場合には約10倍も高くなります。

ほんとうのプルサーマルの必要性=プルトニウムの在庫処理

今回提示されている東京電力のプルサ-マル計画では、現在海外に保有するプルトニウムを消費するのが精一杯。

東京電力の在庫処理計画

 2010年までに3~4基で、プルサーマル約9トン(最大三分の1炉心 1基年間400キロ)

海外からの返還量
 約9トン

海外から返ってくるプルトニウム約9トンを消費するために作られた計画です。しかし、それだけで2010年までかかります。(うまく消費できたとしても・・・・・。)
六ケ所再処理工場から抽出れるプルトニウムの消費計画は(国・電力とも)まだ、まったくありません。

2010年までの、プルトニウム発生量(東電のみ)0・6%抽出するとして
(1)海外に保有    約 9トン(使用済燃料約1900トンより)
(2)サイトないに保有 約18トン(使用済燃料約3000トンより)
(3)今後発生予定   約36トン(使用済燃料6000トンより)
   計       約63トン(使用済燃料11万トンより)

 この莫大な量は、高速増殖炉で使うつもりだったのです。
今、その計画は露と消えて、プルトニウムの莫大な余剰があらわれました。
国・電力会社は「プルサーマルは、現時点でもっとも確実なプルトニウムの利用法で」「今後、数十年間は我が国のプルトニウム利用の柱」としています。しかし上記の数字をみるようにそれには現在の6倍、東京電力でもすべての原発ではプルサーマルを実施しなければならない状況です。