長編恋愛物語り 水たまりの中の青空 ~第一章~ (百九十三) | toshichanのブログ

toshichanのブログ

【遅れてきた新人】の、内山敏洋 と申します。 蔵の中に溢れかえっている作品や頭の中に湧き出てくる作品を“どんどんと!”と、考えております。

「今、‘坊ちゃん’と呼ばれているそうじゃないか。

いやいや、責めているんじゃない。むしろ褒めてやりたいぐらいだ」
一瞬、源之助に皮肉られていると感じた正三は、すぐさま直立不動の態勢をとった。
「申し訳ありません、叔父さん」


「おいおい、褒めてるんだぞ。

いいか、お前を‘坊ちゃん’と呼ぶということはだ、お前を一段上の人間と考える素地があるということだ。

残念ながら、今のお前はまだ半人前だ。

他の者に認められていないだろう。

今回のプロジェクト入りで、少しは認めさせることができたろうが、今日の体たらくでは……。

 

とに角酒を飲め。

赤坂でも銀座でも、一流の店に行け。

一人じゃないぞ、大勢を連れ歩け。

今は仕方がない、金をどんどん遣え。

軍資金の心配はするな。

お前のお父さんから、たっぷり回ってくる。

 

そうだな、週一回は行け。

いいな、私の贔屓の店を教えてやる。

格の違いを、見せ付けるんだ。

それから、女も抱け。

女将連中には連絡をしておいてやる。

一流の女を抱け。

場末の女はいかんぞ。

間違っても、あの小娘はいかん、いいな!」


語気鋭く、源之助の厳命が下った。反抗を許さぬ、強い言葉だった。
「でも、叔父さん。小夜子さんと誓い合った仲でして……」
モゴモゴと、呻くような声を出した正三だった。
「なにっ! まさか契りを結んだのか?」
気色ばむ源之助は、葉巻を灰皿に押しつぶした。


「い、いえ…その、接吻を、その…」
「ふん。そんなものは、いい。

まあ、契りを交わしていたとしても、そんなもの!

」と、吐き捨てるように言う源之助だった。
「とに角だ、もう会うことはまかりならん。

どうなんだ? 会ったのか、連絡はとったのか」
「いえ…」