長編恋愛物語り 水たまりの中の青空 ~第一章~ (百六十一) | toshichanのブログ

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【遅れてきた新人】の、内山敏洋 と申します。 蔵の中に溢れかえっている作品や頭の中に湧き出てくる作品を“どんどんと!”と、考えております。

「ねえ、社長」
 甘えるような声で、「この間の話、覚えてる?」と、武蔵を覗き込んだ。
「なんだ? どんなことだ。言ってごらん」
「覚えてないの? 梅子姉さんが『お酒の席での話は、間に受けちゃだめ!』って言ってたけど、やっぱりか…」
肩を窄める小夜子に対し、
「うーん、覚えてないが…。言ってごらん。小夜子の頼みは、何でも聞いてやるから」と、身を乗り出した。

「わたし、一人暮らしをしたいの。窮屈なのよ、今のお宅は。色々お小言を聞かされるしさ」
「そうか、お小言をな。それが当たり前だろうな」
「違うの! 女が社会で活躍することは、そんなにいけないことなの?
 家に閉じこもっていろと言うの? そんなの、男の横暴よ」

小夜子の頬は、ほんのりと赤みを差していた。
吐き出した筈の酒に、少し酔ってしまったようだ。
「分かった、分かった。これから女性の社会進出は、当たり前のことになるさ。
その先進グループに入りたいんだな、小夜子は。
しかし一人暮らしは、どうなんだ? ああ、思い出したぞ。
『愛人になれ!』と、口説いたんだ。
だけど小夜子は、即座に『イヤッ!』と言ったんだ」

 「それはそうよ。私には好きな人がいるんだから、愛人はイヤ!」
“奥さんなら、いいかも…”
突然、思いも寄らぬ言葉が浮かんだ。
危うく、口の端に乗せそうになった。
“な、なに、考えるのよ、あたしったら。
でもどうせ、間に受けはしないでしょうけど”
ぽっと、頬を赤らめた小夜子だ。