長編恋愛物語り 水たまりの中の青空 ~第一章~(百三十一) | toshichanのブログ

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【遅れてきた新人】の、内山敏洋 と申します。 蔵の中に溢れかえっている作品や頭の中に湧き出てくる作品を“どんどんと!”と、考えております。

「社長、おはようございます。

いやあ参りました。二日酔いです、完全に。

社長は大丈夫ですか?」
「おやおや、専務さんはお弱いんですね 」
朝の光に目を細めながら現れた五平に、女将が声をかけた。
「女将、言ってくれるね。弱くはないんだ、わたしだって。

弱くはないんだが、この社長が底なしなんだ」
「ほんとに。ひょっとして、ご酒が血液で、体中を回っていらっしゃるとか? 

ほほほ、失礼しました」
「女将も、いけそうだね。どう、一丁勝負しますか。

そうだな、僕が勝ったら女将の操を貰おう。

万が一僕が負けたら、僕の操を捧げますよ」

 

間の悪い時にと思う武蔵だったが、もう一度粉をかけてみた。
「あらまあ。それじゃ、どちらもおなじことじゃありません?」
「ハハハ、ばれたか。

大抵の女はひっかかるんだがなあ。細かいところまで、聞いてるおられる。

さすがは老舗旅館の、女将だ」
「ありがとうございます。賭は別としまして、社長さまとはゆっくり “さしつさされつ” と、まいりたいものですわ」
 社交辞令か? と、勘ぐる武蔵だが

「よし、決まった。もう一晩お世話になることにしょう。空いてるよね、部屋」

と押してみた。

「はい、もちろんでございますとも。万が一にもふさがっておりましても、何としてでもお泊まりいただきますわ」
と、女将が返してきた。


「聞いたか、五平。泣かせるねえ、女将は。丁々発止とはこのことだぜ」
「社長。盛り下げるようですが、明日は銀行が来ます。酒を抜いておきませんと」
「無粋だぜ、五平。

と言っても、銀行じゃ何ともならんか。名残惜しいけれど、女将。

また、日を改めてと言うことで」
「承知いたしました。首を長くして、お待ち申し上げております。それでは」
と女将が去った後、武蔵の隣に五平が腰を下ろした。